- 発達障害や自閉症の人でも安心して楽しめる場所はありますか?
- 障害のある人が参加できる社交活動はどんなものがありますか?
- 障害のある人と障害のない人が一緒に楽しめるイベントはありますか?
もう何十人も中に入ろうと待っていました。
女性も男性もおしゃれをして。
介護する人と一緒にいる人もいます。車椅子に乗っている人もいます。
多くの人は、「クラブ1111」と書かれたTシャツを来ていました。
ここは待ちに待った、障害のある人のためのナイトクラブです。
ダンスフロアでは、DJがみんなを興奮させてくれます。
ボランティアがマニキュアをつけてくれたり、タトゥーのシールなども貼ってくれます。
パニックになってしまいそうなときには、休める場所も設けてあります。
米国メリーランド州にある、この障害のある人向けのナイトクラブは米国中でもここだけです。
何百人もの人たちがここで踊り、友だちを作ります。
恋人ができた人もいます。
ここでは、誰も変な目で見たりすることはありません。障害のない人と変わらない感覚をもてます。
クラブに参加した503人のうちの一人、29歳のステファン・ジョーンズはここが世界で一番すきな場所だといいます。
これまでの30年で、障害のある人の人生に関わる多くのことが変わりました。
障害のある人のための出会い系サイトや、クルージング旅行、そうした社会的なつながりを持てる機会が増えています。
ジョーンズのような障害のある成人にとって、こうした機会が増えることは求められていたものです。
クラブ1111は月に1回行われています。
まだ行政には、このようなニーズが把握されてはいないようです。
車の事故によって体が麻痺し、車椅子の生活を送っている59歳のジャニス・ジャクソンはこう言います。
「見つけたいものは、ここでなんでも見つけることができます。
たくさんの人とのつながりがここに来るとできます。
もちろん、すべてがうまくいくわけでありませんが。
しかし、愛が生まれることもあるんです。
ここではみんなが自由を感じています。」
このナイトクラブに参加する人のほとんどが、発達障害や知的障害をかかえています。
そして、4分の1程度の人が車椅子を利用し、10人に一人は視覚障害ももっています。
参加者が体調を崩したり、精神的にトラブルになった場合など緊急事態が発生すると、看護師や専門家が対応します。また、通り道や出入り口は車椅子でも通行が妨げられないよう、十分広くとられています。
ダンスフロアの照明は、医師のアドバイスを受けて調整されたものとなっています。
飲み物もふたがついて柔らかなストローがさされていて、こぼす心配もありません。
23歳のジェシカ・ザバックは、自分で選んだドレス、そしてアイシャドウにあわせて、まず爪をピンクに塗ってもらいました。それから母親と一緒にダンスフロアに向かいました。
ボン・ジョビのリミックスにあわせながら、みんなとリズムをあわせます。
みんなで手をつないで、歓声をあげます。
母親はジェシカが学校を卒業してからは、人とつながりを持てる機会を見つけることがなかなかできなかったといいます。
「娘がこうして、このダンスフロアで踊っているのを見ると、本当にうれしいです。」
ジェシカはもっと友だちがほしいと思っています。
それは、1年半前にここで友だちができたのが始まりです。
クラブの外では、ネットで友だちとやりとりをしています。
最近では、お気に入りの「マイリトルポニー」の話題でいっぱいです。
「娘は自分自身を表現するようになりました。これは素晴らしくてとても重要なことです。
本当にここは素晴らしい機会となっています。」
発達障害のジョーンズは人生についてよく考えています。
「私は私のことをきちんと扱ってくれる人を探しています。」
重度の自閉症のゴードンは、両親やグループホームの支援員に介護されています。
ゴードンの母親は、息子は外に行く機会は多くありますが、人と関係を築くことはとてもむずかしいといいます。
他の重度の発達障害や知的障害の人と同様に、電話で話したり、人混みに近づくことができません。
21歳になるまで、友だちもいませんでした。
そんなゴードンが、このダンスホールで多くの人たちを見て興奮しているのを見るとうれしくなるといいます。
「私も興奮してしまいます。」
ダウン症のマクダニエルは、メアリー・シャードと一緒に踊っています。
足を内側に、外側に曲げて、左右に歩みます。
知的障害のあるメアリーは、おばといっしょに暮らしています。
メアリーはマクダニエルと一緒に夕食をしたり、映画を観に行ったりもしています。
このナイトクラブの会長であるデビッド・グリーンバーグは、初めて開催したときに障害のある人たちが特別な何かを得たことがわかったといいます。
それからどんどん参加者が増えて、約700人もの人たちが集まるようになりました。
軽食の提供、安全の確保、片付けなど開催するための費用が寄付からでは足りなくなったため、10ドルの参加費をもらうようになりました。
グリーンバーグや他の支援者たちの目標は、障害のある人たちが障害のない人と、完全に同じようになることを目指しています。
もちろん、医学的な面からもそれは難しいことはわかっています。
しかし、このナイトクラブではそれは関係ありません。
「ここは、障害のある人たちのナイトクラブです。
ここでは、障害のある人たちが障害をあることを忘れることができていると思います。」
(出典・画像:米The Washington Post)
障害のある方が障害であることを忘れられる機会、そんな機会がますます増えてほしいと思います。
どんどん増えて、機会ではなくそれが日常になればと願います。
集まる視線で難しかった発達障害の子の家族が外食を楽しめる機会
(チャーリー)