- 自閉症の人が早期に死亡リスクが高い原因は何か?
- 社会的な能力や日常生活スキルの向上が自閉症の人の寿命を延ばす可能性はあるか?
- 自閉症の人の健康や生活に影響を与える要因は何が考えられるか?
社会的な関わりから遠ざかっていたり、トイレや食事など日常生活に困難をかかえる自閉症の人は、早期に死亡するリスクが高いことがわかりました。
発達障害である自閉症の人たちは、一般の人たちに比べると早く死亡する可能性が2倍以上あります。
命にかかわる糖尿病やがんなどになるリスクも高いものとなっていました。
新しい研究は、自閉症の人の死亡リスクに影響を与える要因を特定した初めてのものになります。
研究チームは20年間にわたって、米国の自閉症の人たち406名について追跡調査を行いました。
調査中に亡くなった26名は、調査開始時点で社会的な能力や日常生活スキルのスコアが低い傾向にありました。
この調査結果から、自閉症の人の社会的な能力、日常生活のスキルを伸ばすように支援することが、より長く生きることを助ける可能性があると考えられます。
「私たちの研究の目的は、自閉症の人が早期に死亡するリスクが高いことに対して、社会システム、医師、家族ができることを見つけることでした。」
今回の研究を行った、米ウィスコンシン大学のワイズマンセンターのマーシャ・メイリック名誉教授はそう言います。
スウェーデンとデンマークで行われた自閉症の人についての研究でも、自閉症の人たちは早期に亡くなる傾向があることを示しています。
「これは世界的な問題です。国によって違うわけではないのです。」
スウェーデンのカロリンスカ研究所、子どもと女性の健康を担当するタジャ・ヒルビコスキ准教授はそう言います。
しかし、専門家の中には、今回の新しい研究は調査対象とした人たちの数が少ないため、確かな結論を導くことはできないと指摘する人もいます。
また、死亡することと社会的スキル、日常生活スキルとの関係は直接的なものではないかもしれません。
米ポートランド州立大学のソーシャルワークのクリスティーナ・ニコレディス教授はこう言います。
「もっとたくさんのことが早期の死亡に影響を与えていると考えるべきです。」
今回の研究では、研究調査の開始時点で10歳から52歳の自閉症と診断されている人たちを対象としました。
このうちの70パーセントが知的障害とも診断されていました。
健康状態や日常生活のスキルについては親が評価し報告したものです。
死亡された方は、平均39歳で健康の問題で亡くなっていました。
死因には、がん、心臓発作、発作、肺炎、窒息、投薬副作用および偶発的な中毒などでした。
年齢と健康状態は死亡リスクに関わる最も大きな要因です。
しかし、死亡された方はトイレなどの日常的な活動や、家の掃除などにも困難をかかえていました。
また、社会的な相互作用、つまり他者に関心をもちコミュニケーションをとることにも困難をかかえていました。
社会的な孤立や孤独は、誰でも健康を悪化させます。
しかし、こうしたスキルの困難が寿命を短くする原因はわからないと米ユタ大学の予防医学のカイル・ジョーンズ准教授は言います。
「深く注意し、もっと考えなければなりません。」
日常生活のスキル、社会的なスキルの困難と早期の死亡については、直接的ではなく、間接的に関係するのかもしれません。
こうした問題をかかえている自閉症の人は、栄養が偏った食事や座ってばかりいるなどの生活習慣、そうした健康に悪い行動をしている可能性があるからです。
今回の研究調査を行ったニコレディス名誉教授はこう言います。
「社会的スキル、日常生活スキル、それらの困難が寿命を短くしているのが直接的であれ間接的であれ、どちらであっても、それらのスキルの困難に対する支援が有効であると示せることに意義があると考えます。」
ニコレディス名誉教授と研究チームでは、自閉症の人たちの社会的なつながりを良くし、自立して日常生活ができることを助ける方法の開発に取り組んでいます。
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
日常生活のスキル、社会的なスキルの困難を改善するのはもっともなことだと思います。
うちの子はどちらも困難なので、私がいなくなった後のことを考えると心配しかありません。
私も長生きしなければと思うようになりました。
自閉症の人の多くが40歳未満で死亡。みんなに行動してほしい
(チャーリー)