- 1. 音楽療法は自閉症スペクトラム障害の子どもたちの脳にどのような影響を与えるのか?
- 2. 音楽療法を受けた子どもたちの社会的コミュニケーションや感覚問題にどのような変化が見られるのか?
- 3. 音楽療法は脳の異なる領域のネットワーク接続にどのような変化をもたらすのか?
発達障害である自閉症スペクトラム障害に対する音楽療法についての研究論文はすでにいくつかあります。
それらのほとんどが、感情に関わるところや社会的コミュニケーションにおいて前向きな変化があったことを示しています。
しかし、今回のカナダのモントリオール大学心理学部の脳と音楽、音声国際研究センターのミーガ・シャルダらによる研究は音楽療法によって脳がどのような影響を受けたのかを示す最初のものと考えられます。
シャルダらによる研究チームは、6歳から12歳の自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもたちに対して音楽療法を行い、音楽療法を行わなかった子どもたちとの比較を行いました。
26人の子どもたちが音楽療法を受け、25人の子どもたちは音楽療法ではない療法を受けました。
どちらのグループも、8週間から12週間にわたり、毎週45分療法を受けました。
療法を受ける前、そして後に社会的コミュニケーション、言葉のコミュニケーション、そして自分と家族のストレス度合いの測定を行い、rsfMRIを用いて脳活動も測定しました。
rsfMRIを用いることで、脳のさまざまな部分の活動レベルを測定することができます。
今回の研究では、異なる脳領域間のネットワーク接続について測定をしました。
その脳のネットワーク接続を測定するのは、ASDにおいては異なることが特徴とされているためです。
いくつかの研究調査では、ASDでは脳領域が過度に接続されていたり、接続が十分にされていないことが示されています。
こうした脳のネットワーク接続の違いが、ASDの人に見られる言葉によるコミュニケーションの困難、社会的なコミュニケーションの困難、そして感覚過敏の原因の一つになっていると考えられています。
今回の研究の結果、音楽療法をうけた子どもたちは、別の療法を受けた子どもたちよりも、コミュニケーション、社会的な反応、そして家族との生活の質の改善が確認できました。
脳の測定結果も良いものでした。
音楽療法を受けた子どもたちは、聴覚を担う脳領域と運動の関係する脳の領域とのネットワーク接続が増加していました。一方で、聴覚を担う脳領域と視覚を担う領域とのネットワーク接続は減少していました。
脳の変化はまさに行動の変化につながっているものでした。
例えば、聴覚領域と運動領域とのネットワーク接続の増加は、社会的なコミュニケーションの改善に大きく影響を与えています。
音楽療法によって、脳の接続の変化が起き、行動も良くなったのです。
この研究から次のことが言えます。
音楽療法は、学齢期の自閉症スペクトラム障害の子どもたちの社会的なコミュニケーションを改善することができます。
科学的にも音楽療法は有望だと支持できます。
そして、音楽療法は脳の異なる領域のネットワーク接続にも変化をもたらしました。
この脳の変化は社会的なコミュニケーションの行動の改善に関連します。
そして脳の聴覚領域と視覚領域のネットワーク接続の減少は、感覚の問題の低下を示すものです。
感覚の問題は、コミュニケーションの妨げになっている可能性があります。
例えば、話そうとしたときに相手が信じられないほど高い声だったり、大声だったりしたときを想像すればわかるはずです。また、部屋の明かりが激しくまぶしいものだったり、外からは絶え間なく大きな騒音が聞こえていたら。
そのような状況下では、相手と話したりすることは簡単ではないはずです。
感覚の問題の低減は、社会的なコミュニケーションの向上につながるはずです。
(出典:米Psychology Today)(画像:Pixabay)
音楽療法はたびたび効果があると研究で発表されていますが、この研究では脳スキャンをした結果からもそれがいえるということでした。
まず、子どもが楽しく受けることができていれば、それだけでまずありがたく思ってしまいますが、音楽療法といってもいろいろありそうです。
費用にみあう、論理的科学的にしっかりとしたカリキュラムがある、安心できるところが求められると思います。
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