- 芸術活動を支援する組織やプログラムは、どのように障害のある人たちの才能や興味に合わせた支援を行っているのか?
- 障害のあるアーティストがプロとして活躍するために直面する困難はどのようなものがあり、それを乗り越えるための支援はどのように提供されているのか?
- 障害のあるアーティストたちがアート活動を通じて収入を得るために、どのようなビジネスモデルやマーケティングが成功しているのか?
キャリエッジワークスは、オーストラリア、シドニーのたくさんの芸術家にとって特別な場所ですが、トム・ロバーツにとってはさらに特別な場所となっています。
ロバーツは列車を擬人化します。
アニメにしたり、ライブパフォーマンスを行ったりもしますが、肖像画をよく描きます。
複数の目、複数の鼻がつけられた顔になっています。
New Australiaian Art of National Australiaの一部としてキャリエッジワークスに展示されます。
「トムはキャリエッジワークスを列車の基地のように思っています。
ここにくればたくさんの列車が見えます。」
スタジオAのCEO、ガブリエル・モーディーはそう言います。
ロバートは知的障害のあるプロアーティストをサポートするスタジオAで活躍するアーティストの一人です。
スタジオAは、障害のある人の芸術活動を支援するスタジオアーツから生まれました。
スタジオアーツは、190人ほどの人たちに芸術を学べる機会を提供しています。
プロの芸術家になろうとする際に直面する困難を乗り越えることを手伝っています。
「障害のある人たちの芸術を見て、どんなに『才能がある』と言っても、
それは、障害のある人たちのレクリエーションに過ぎないと思われています。」
そう、モーディーは言います。
モーディーは自分自身もアーティストです。
障害のある人たちと仕事をするとは考えていませんでした。
しかし10年前にスタジオアーツでボランティア活動をしたときに、それが変わりました。
「私は、何人かの人たちの作品のクオリティの高さ、そして一生懸命さ、集中力に、本当におどろいて感動しました。
クオリティは、流行に敏感なギャラリーに並んでいるものと違いは全くないほどでした。
こんなにクオリティが高い作品がギャラリーに並んでいないことに疑問を持ちました。
そして、どうしてこうした障害のある人たちに、専門的に芸術を学ぶ機会がないのでしょうか。
障害がなければ、美術学校に通えるような人たちです。」
その疑問からスタジオAが生まれました。
スタジオAは、芸術作品から収入を得ようとするものです。
アートの世界で必要となる管理業務をスタジオAが担当しています。
障害のあるアーティストたちの生活に大きな影響を与えました。
それまで犬の首輪を箱に詰める作業をして、1時間3ドル(約330円)で働いていた人が、今では障害のないアーティストと変わらない収入を得ている人もいます。
1時間3ドル。これは障害のある人の雇用プログラムの成功例と考えられていた仕事でした。
こうした成功への鍵は、それぞれの才能と興味にあわせたマーケティングと事業計画を立てることです。
スタジオAはそれを行っています。
モーディーはこう言います。
「私たちは2年間でアートによる売上を3倍にしました。
今年の上半期だけでも、昨年分の売上を超えています。」
(出典・画像:豪Time Out)
知的障害のある方が取り組む姿勢への感動、そして支援。そうしたことを超えて、障害を抜きにしてアーティスト、アートとして福祉ではなく、時には冷徹にもなるだろうビジネスと決めて、進めたことがこうした結果を生んでいるのでしょう。
障害のある方の芸術活動のすべてを、こうしたビジネスにする必要は全くないと思います。
ですが、支援する相手に支援として行う福祉ではなく、パートナーとして自らもっているものを発揮してもらうこうしたビジネスは(成功すれば)、障害のある方が自信を持ち自立することに役立てる、これ以上ないものだと思います。
そう思って取り組んでいます。
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(チャーリー)