- 発達障害を持つ人でもビジネスを成功させることができるのか?
- 発達障害の人が仕事を見つけるためにはどのようなサポートが必要か?
- 親として発達障害を持つ子供のビジネスをどのように支援すればよいか?
発達障害の兄は仕事をさがしているときに、コミックのお店を開こうと思い立ちました。
兄のアダム・メイキーがコミックのお店を開きたいと言うと母親は最初は笑いました。
「ばかげたことだと思ったんです。」
そう母親のアンジェラは言います。
アンジェラは二人の子どもたちが小さなころからコミックに夢中だったことを知っていました。
しかし、お客さん、出版社、その他ビジネスに関わる人たちとやりとりなんて、アスペルガー症候群のアダムには無理だと思ったのです。
しかし一方で、アダムが就職することができるかはわかりません。
哲学の学位をもち、自立することを望んでいましたが就職することはできていませんでした。
アダムの弟の自閉症スペクトラム障害のガイは、約束を守る、時間を守る、細かなところへの注意ができる、それらが得意でしたが、ずっと続けられる仕事を求めていました。
母親のアンジェラは、発達障害の人でフルタイムの仕事につけているのはわずかであることを知りました。
そして、二人の息子たちが得意なことを生かして働くことはもっと困難なことだとわかりました。
「難しい状況であることから逃れることはできないと、わかってはいたんです。」
最初は笑ったものの、兄弟たちのコミックのお店について、母親のアンジェラは真剣に考え出したのです。
そして貯蓄をはたいて、7年前に兄弟のコミックのお店がオープンしました。
発達障害の人たちの多くと同じく、兄弟のアダムとガイはコミックが大好きです。
キャラクターたちも愛しています。
「両親から、自分がアスペルガー症候群だと教えてもらって、他の人と自分は違うんだと思ったことを憶えています。
それから、コミックは私を助けてくれる大事なものとなりました。」
そう兄のアダムは言います。
当時は7歳でした。テレビやコミックのヒーローに夢中になっていました。
今は30歳。
ヒーローたちが人生を支えてくれました。
弟のガイは、逃げることができる空想の世界としても役に立っているといいます。
何か他のことを考えなければならないときには、コミックのことを思い出して、思考の一時停止ができます。
自分たちの人生を助けてきたスーパーヒーローが大好きです。
「ヒーローたちの動機はわかりやすいです。目的や目標がよくわかります。
通りで会う人たちよりも、はるかにわかりやすい。」
アダムは特にスパイダーマンが大好きです。
「大いなる力には大いなる責任が伴う。というテーマがスパイダーマンにはあります。
スパイダーマンも最初はただの人だったんです。
力をもったので、たくさんの人を助けることを始めたんです。」
母親のアンジェラは、兄弟たちがコミックを愛している理由についてこう付け加えます。
「コミックは、自由にとらえることが許されて、年齢に関係なく、誰にでも楽しめるものだからです。」
コミックのファンであれば、キャラクターや巻数、出版社、作家、イラストレーター、キャラのコラボなどに詳しかったりします。もちろん、アダムとガイも大好きで熟知しています。
「ヴァンパイアのコミックはありませんか?」
そう言えば、アダムはすぐにヴァーディゴ(DCコミックス)のアメリカン・バイパイアを紹介してくれます。
「バットマンを描いていたスコット・スナイダーと、有名なホラー作家のスティーブン・キングのコラボレーションから生まれたんです。」
詳しい話は止むことはありません。
兄弟は、コミックの世界のガイドとなって、知らなかったコミックを紹介してくれます。
「自分の店でコミックを手にできるなんて、本当に最高のことです。」
弟の26歳のガイはそう言います。
どんなにたくさんのコミックを置いていても、どこにあるのか頭に入っています。
お客さんをまっすぐに連れて行きます。
今では、キャプテン・アメリカが大好きな40代、50代の人に、ブラック・パンサーのような新しいコミックを紹介したりすることも売上につながっています。
お店を始めたころは、お客さんや出版社とのコミュニケーション、計算、などの問題でお店はすぐにつぶれてしまいそうでした。
「アダムとガイは、とても視覚的なことについては得意です。文学や演劇にも興味があります。
しかし、数字が苦手です。お店を開いたのはとてもリスクがあることでした。
お客さんへのお会計では本当に苦労をしました。
いつも数字が間違っているんです。」
アンジェラはそう言います。
この問題に対処するために、バーコードのシステムやレジに投資をし、数字を入力しなくても会計ができるようにしました。
出版社とのやりとりにも問題をかかえました。
発達障害の人は、文字通りの指示を必要とし、不確実性を嫌うとアンジェラは言います。
そのため、やりとりには電子メールを使うこととし、混乱が起きそうな場合にはアンジェラが「干渉」しメールのやりとりをサポートしました。
最近のアンジェラは、彼女の店内での主な役割を「干渉者」と表現しています。
アンジェラはITの企業で働いていますが、息子たちのビジネスにも多くの時間を捧げてきました。
財務やネット販売の管理、納税、そして店舗での運営サポートを行っています。
売上は大きなものではありませんが、ずっとお店は黒字経営です。
お店には老若男女の常連の客ができています。
「自分が発達障害であることは、多様な人たちを相手にするときに助けとなっているのです。」
そうアダムは言います。
「たぶん、僕は声の調子や手の動きで、相手の考えがわかるんです。」
このお店は、発達障害の人たちへの配慮もしています。壁の模様、音、光に敏感な人もいるからです。
兄弟のこのコミックのお店の名前は「ニッチ」です。
それは、発達障害の人が困難と感じるような感覚から逃げられる場所としての意味も込めています。
他にも、お店では発達障害の人たちへ支援をしています。
学校などから紹介された発達障害の子どもたちをお店に受け入れているのです。
安全な環境で働く練習ができます。
母親のアンジェラはこう言います。
「コミュニケーションに関わる障害や発達障害の人たちの存在が見過ごされています。
こうした人たちは、問題を解決することが得意だったり、本当に信用できる人たちなんです。」
つまり適切なサポートさえあれば、すばらしい仕事を行う人たちになるということです。
「ここで数日働くと、これまでコミュニケーションをしなかった子どもたちも殻を破って出てきて、魅力的になるんです。
そんな変化も見れるのは、本当にうれしいことです。」
お店をオープンしてから7年が経ちます。
母親のアンジェラはリスクを越えて、夢を叶えてきた息子たちをうれしく思っています。
「感動することの連続でした。
正しい決断ができたと思っています。このお店には私たちの夢がつまっています。」
(出典・画像:英BBC)
素晴らしいご家族だと思います。みんながうらやむことを成し遂げられていると思います。
そして、数字が苦手だから、数字を入力しなくても会計できるようにした。
これこそが、技術、ITの素晴らしさだと思います。
みんなが同じことをできる必要はありません。同じでないことがますます重要になっていくと思います。
できないことはAI、ロボット、技術に頼って、人それぞれができることをますます追求して、人それぞれの輝き方で活躍していく時代だと思います。
発達障害の人の助けになっているアニメ、映画、コミック、ラノベ
(チャーリー)