- 自閉症の人には同性を好むことや性別の不一致を感じることが多いのですか?
- 自閉症の人たちは、性的指向やジェンダーの多様性にどのような悩みを抱えているのでしょうか?
- 自閉症でLGBTQ+の人たちへの支援はどのように行えば良いですか?
多くのメディアで描かれている発達障害の自閉症の人たちはみんな同じです。
異性を好み、身体的な性別と心の性別が一致しています。
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、ジェンダークィア など(LGBTQ+)であることはありません。
しかし最新の研究によれば、自閉症の人たちは、一般的な人たちよりも身体的な性と心の性が一致していないことが多いことが示されています。
この原因はわかっていません。研究していく必要があります。
私たちの研究では、自閉症でLGBTQ+の人たちが、自分が思っている自分の性別を否定されること、自分が思う性別を主張できないなどの困難に直面していることが示唆されました。
医療関係者、家族、教育関係者は、自閉症の人たちの性的指向や心の性別を尊重する必要があります。
予備的な研究になるものの、多くの自閉症の人たちから、性的指向の多様性があることが確認されています。
昨年発表された約9000人を対象にした研究では、自閉症の人たちはそうでない人たちに比べて、同性をパートナーとすることも一般的であることがわかりました。
今年の初めに発表された国際調査の結果では、自閉症の人の70%近くが同性愛者と確認されています。
スウェーデンでの大規模な調査では、自己申告による特徴から自閉症と考えられる人たちにおいては、異性を愛する人だけでなく、同性を愛する人、バイセクシュアルの人も多くいました。
また、1400人以上の子どもと成人が参加した調査結果では、自閉症の子どもの6.5パーセント、自閉症の成人の11.4パーセントが「違う性別になりたい」と考えていました。
自閉症でない人の場合では、そう考える子どもは3パーセント、成人は5パーセントです。
自閉症の人において、性の多様性が多くみられるのはなぜでしょうか?
私たちは約2年間、22人の自閉症の成人の調査を行いました。
その自閉症の人たちのほとんどは、幼児期から性の不一致を感じていました。
しかし偏見やいやがらせを心配して、自分が思っている性別を示すことはありませんでしたが、自分が思う性別に従うことを避けることは難しい状況であったようです。
また、一部の人は社会で考えられている男性、女性の理解ができていませんでした。
そして1/3の人は、心と体の性別の不一致の主張を、自閉症であることを理由に聞いてもらえなかったといいます。
それは性別に関わることではなく、自閉症の人がもっている「こだわり」「執着」によるものとされたりしたためです。つらいことだったといいます。
私は診療の機会に、家族から自閉症の子どもの性的指向や性同一性についての心配を聞くことがあります。
そのような心配の原因は、自閉症の人の特徴である、社会的なコミュニケーションの違いや特定のことへのこだわりであることも確かにありました。
大好きな特定の人を、自閉症の子が真似をしている可能性もあります。
そうした自閉症の人がみせる行動が、性の不一致を疑わせているのです。
そして、自閉症の若者の中には、一般的な若者と同じように性を試してみて結局は、体と心に性の不一致はなかったとする人もいます。
結局のところ、自閉症の子どもは自分でも自分のことがわからず、性の不一致をただ主張しているだけという考えもあります。
しかし、そうではありません。
自閉症の人について性的指向とジェンダーの多様性が高いことには、生物学的、心理的な理由があると考えられます。
自閉症や性的同一性の問題は、初期の発達段階における性ホルモンが関わる共通する原因によるものかもしれません。
性的指向やジェンダーの多様性は、自閉症の人が社会的な慣習を理解し従うのに時間がかかってしまうからかもしれません。
または、礼儀の正しさや正直なところなどから垣間見えるように、自閉症の人の多くがもつ気質が一般的な人が考える性的指向や性別のカテゴリーにはあてはまらないのかもしれません。
原因はなんであれ、発達障害の自閉症でありLGBTQ +でもあることは、人生を簡単なものにはしません。
そのために、精神衛生上のリスクは高くなると考えられます。
ジェンダーや性的志向に問題をかかえる人たちに重要なのは、理解し支援することです。
これは、自閉症である人においてはますます当てはまるはずです。
自閉症スペクトラム障害の人たち向けの支援においては、LGBTQ +コミュニティに関わる情報を含めて、自分の性について理解できるようにすることも必要でしょう。
同時にLGBTQ +のコミュニティでも、積極的に包含して自閉症の人たちを理解してほしいと思います。
自閉症の人たちは多様な性の問題をかかえている現実があるものの、私たちの研究に参加してくれた自閉症の子どもたちは将来を悲観していません。
そんな子どもたちが、大人になったときに支援できるように、より多くの研究が求められています。
小児神経心理学者 ジョン・ストラング
米the Center for Autism Spectrum Disorders with the Children’s National Health System in Washington, D.C. 性と自閉症プログラムディレクター
困難であることを伝えることも困難な人たち、困難が誤解されてその困難がわかってもらえない人たちがいます。
障害のある方が自らを語るのをメディアで見ることが多くなった一方で、伝えられない人、わかってもらえない人にそれは難しいままです。
だからこそ、そうした人たちにも気づいて、置いておかないでほしいと願います。
(チャーリー)