- アイコンタクトが得意でなくても働く場所は選べるべきか?
- 発達障害を持つ人に対してアイコンタクトを求めることは適切か?
- 雇用者は、発達障害を持つ人とのコミュニケーションにどのような配慮が必要か?
ある動物園が発達障害の若者を、お客様ともっとアイコンタクトができるようになることを条件に雇いました。
この21歳の若者は仕事の評価をされると、動物園内のレストランでの仕事を続けることはもうできないだろうと感じていました。
アイコンタクトをするのが困難なのは、発達障害でよくあることです。
チェスター動物園から言われた条件について、若者の母親はこう言います。
「動物園の人たちは息子を雇う時に、息子に発達障害があることを知っていました。なのでこんなことを言うなんて、ショックなことでした。」
そして数週間の彼の仕事をみて、続けて働きたいのなら、グループインタビューに参加するように言われました。
しかし彼は子供の頃から、じっとしていることが困難でした。
「もし息子について考えることができたなら、こんなことはすぐに言わなかったはずです。
息子はショックを受けました。初めて仕事を得て、とてもその仕事を愛していました。
もし、息子がアイコンタクトをしないことでお客に迷惑がかかるのなら、動物園側はもっと働かせ方に配慮をしてほしかった。
息子はその時から、働くことができなくなってしまいました。自信が全くなくなってしまいました。」
発達障害研究センターのディレクターである英ケンブリッジ大学のサイモン・バロン・コーヘン教授にこのことについて聞きました。
「発達障害の多くの人にとって、アイコンタクトすることはとても苦痛なことです。」
発達障害の人にとってアイコンタクトを求めるのは、身体障害の人に車いすを降りて、階段に登れと言っているのと同じくらい、無理なことなのです。」
チェスター動物園は昨年の12月に、政府が関わる発達障害者プログラムを行う対象組織となることが決まっています。
広報担当者は、他にも発達障害の人が働いていて、多様性を認めた幅広い採用を行っていると言います。
そして、こう言いました。
「以前ここにいらした、ある期間雇用の方についても、私たちは、彼の役割と環境に配慮して仲良く働いていました。
雇用した方、一人ひとりの細かい記録を公開することはありません。しかし、ここで働いた彼のキャリアが、彼を助けることになるのなら喜んでお手伝いします。
期間雇用の場合には、動物園での仕事の中で希望した役割をどれほどできるようになったのかをインタビューで聞いて評価を行います。しかし、彼の場合にはインタビューに応じなかったため、彼の希望をかなえることができなかったのです。
私たちはいつも働いている人に配慮しています。そして、希望にあって、成功をしてほしいと願っています。
そのために、仕事についてインタビューを行わなければならないのです。
私たちは、他の雇用者と同様にその方と家族に連絡をとっていました。彼らの希望にあわせたいと。
チェスター動物園では、今年のはじめに発達障害者憲章を作りました。
発達障害のお客様に楽しい場所であるように。
私たちのスタッフには自閉症の人もいます。そしてとても多様性のある職場環境だと感じています。」
(出典・画像:英Mirror)
障害のある方には特に求められる個々人それぞれへの幅広い配慮と、それぞれに配慮することには限界が出てくる組織の運営。
今回の件は単純化して考えると、組織側が適材適所に徹することが必要であったのではないかと思います。
適材適所で働くことができるのであれば、アイコンタクトを求めるところで働くこともなく、
今そこにいても次は、アイコンタクトを必要としない、おとなしい動物への餌やりなどで働けたかもしれません。
そう、信じることができればインタビューを受けることもできたかもしれません。
組織に、適材適所に徹する姿勢があれば、インタビューをしなくてもふだんの仕事から、適所がわかったかもしれません。
イスラエル諜報機関の記事にあるように適材適所には、個々人と組織の両方にメリットがあります。
とはいっても、組織によっては適材適所にそこまで徹するメリットを見いだせなかったり、メリットを見つけるまで存続する体力がないかもしれません。
だからこその政府支援のプロジェクトがあり、この動物園は、それに頼れる組織となったわけですから善意だけでなく、もっと考えて取り組む必要があるのではないかと思います。
とはいえ、言うだけは簡単です。
100%の適材もなければ、100%の適所もないのが現実です。いろいろな制約が現実には発生します。
しかし、諦めてしまうのは最も簡単なことです。
一人ひとりをよくみて、個の長所をいかす、適材適所を考える。
それをしない無個性運営の組織は、いずれ全体が無個性でもっと扱いやすいAIやロボットにとって代わられるはずです。
イギリスの動物園ではこうなってしまいましたが、オーストラリアではよいことに。
オーストラリアのレストランでは夢が羽ばたいた
(チャーリー)