- 聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)は発達障害や自閉症の子どもたちの言語能力向上に効果的なのか?
- AMMTを受けた子どもたちの言葉が増加した要因は何か?
- AMMTは新たな言語療法として今後広く活用される可能性はあるのか?
新しい言語療法が言葉を話すことがなかった発達障害、自閉症の子どもたちの言語能力を向上させることができたという研究が発表されました。
聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)と呼ばれるこの新しい言語療法は、高い音、低い音を出せるようにしたドラムを叩いて、単語を繰り返し歌うことを行います。
これを5週間行ったところ、ほとんど話すことができなかった発達障害、自閉症の子どもたちの話す言葉が増加しました。
米ハーバード大学の脳神経学のゴッドフィールド・シュロー准教授はこう言います。
「話すことがない、発達障害の自閉症の子どもたちへの効果的な治療方法はあまりありません。
そのため、今回の新たな言語療法による結果は驚くべきものだと思います。」
自閉症スペクトラム障害の子どもたちの約30%は、ほとんど話すことができません。
これまでの言語療法は、注目することができない、人と関わろうとしない、そうしたことを改善させることにより言語の発達を行おうとしていたものです。
今回の言語療法のような、子どもの発声の運動機能の改善から言語の発達をさせようとするものはほとんどありませんでした。
今回の研究に携わっていない、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の発達・心理学のコニー・カサリ教授もこう言います。
「興味深いアプローチ方法だと思います。
これまで、声を出すような運動機能に焦点をおいたものはほとんどありませんでした。」
今回の研究では3歳〜10歳の27人の子どもたちに、新しい言語療法、聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)が5週間にわたって、療法士によって行われました。
参加した子どもたちは、話せる言葉は20種類未満です。
2音節の言葉は話せます。文章を話すことはできません。
療法士が「ママ」「クッキー」「バイバイ」など簡単な単語を子どもたちに歌って聞かせました。
それぞれの音節ごとに高い声、低い声にして歌います。
同時に、電子ドラムを叩いて、その声の高さにあわせた音を出します。
そして、同じ高さの声を子どもたちにも出してもらうようにうながします。
また、その言葉を表す絵を見せて、子どもたちにその言葉を声にするようにうながします。
この27人とは別の11人の子どもたちには、歌ったり、電子ドラムを叩かないこれまでの言語療法を行いました。
開始から5週間後、子どもたちに30種類の言葉について話すことができるかお願いをしてみました。
15種類の言葉は、この5週間の間に学んだものです。もう15種類はこれまで学んでいないものです。
子どもたちはこれまでに学んでいなかった新たな15種類の言葉についても、真似をして話そうとしました。
絵を見せると声に出そうとしました。
子どもたちに教えていた療法士とは別の研究者たちが、子どもたちの発声を聞き、声の正確さについて評価しました。
聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)を受けた子どもたちは、受ける前よりも18%多い言葉を話しました。
それに対して、これまでの標準的な言語療法を受けた子どもたちの増えた言葉は1%未満でした。
聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)を受けた子どもたちの親も、以前よりも子どもたちは話すようになり、やりとりもするようになったと評価していました。
そして、聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)の効果は、子どもの年齢、性別、言語に関わらない知的指数、いずれにも関係することなく認められました。
そして、重度ではない発達障害の子で人の発声を真似することが得意な子どもに、効果が最も高くなっていました。
この新しい言語療法の効果の高さは驚くべきものではないと、米フィラデルフィアにある、キニー発達障害児教育支援センターのジョセフ・マクレリーは言います。
「効果が高いものとなったのは、声だけでなく音も真似してもらうようにしたためです。
言語療法と音楽療法を同時に行うようなもので、たくさんの刺激になるからです。」
聴覚・運動マッピング訓練(AMMT)は、文章を話せるようになるためには不十分なものです。
しかし、これは文章などにつながる、言葉、発声の種類を増やすことに貢献できるものです。
研究チームでは、参加する子どもを増やしてさらに研究を進める予定です。
うちの子も話すことができません。
パパパパパパパ、とかパパと聞こえるような声などは出してくれます。
音楽も大好きです。
効果はともあれ、声の高さに合わせた音も同時に出して、一緒に言葉の練習をしてみようと思いました。
何より楽しそうですし、電子ドラムがなくても、木琴とかスマホアプリが代わりになりそうです。
(チャーリー)