- 自分の好みや趣向を理解することは大切なのか?
- 発達障害や知的障害をもつ人が料理を通じてどんなスキルや経験を得られるのか?
- 支援団体や取り組みが発達障害や知的障害をもつ人たちにどんな影響を与える可能性があるか?
ダニエル・シュニッツラーは自分の好みをよく知っています。
ダニエルはバーベキューソースとクラフトパルメザンチーズが大好きです。サワークリームは嫌いです。
冷凍のグリンピース、トウモロコシ、エンドウ豆に、パルメザンチーズを振りかけて、冷たい料理を作り食べています。
そのダニエルの作る料理の味が、レストラン「シンディーズ」の新しいチキンの料理に影響を与えました。
シンディーズのシェフ、クリスチャン・レガーノは、シカゴにいる発達障害の人たちに役立とうと「ドアーズ・オープン・ディッシュズ」の取り組みに協力をしています。
発達障害で知的障害のダニエルは42歳。マドンナの歌やミュージカルが大好き、そして話すことができます。
「ドアーズ・オープン・ディッシュズ」は、知的障害や発達障害のある18歳以上の人を対象に支援をしている「ゲートウェイ・トゥ・ラーニング」の取り組みの一つとして行われています。
「ドアーズ・オープン・ディッシュズ」をはじめた、ダニエルの妹のニコールはこう言います。
「私にとっても本当にエキサイティングな取り組みなんです。参加されている発達障害の方たちにもそうあってほしいと思っています。」
食べ物や旅行についての作家であり、たくさんのシェフと交流があったニコールが、このプロジェクトを考えました。
ニコールは、いつも兄のダニエルが、冷凍の野菜とパルメザンチーズだけで料理を作ることに驚いていました。
また、これまでに会ったシェフたちが素晴らしい料理を思いつけることにも驚いていました。
そして、シェフがいろいろ見て、考えて新しい料理を作り上げているプロセスは、兄のような発達障害の人たちにも役に立つものではないかと考えたのがきっかけです。
当時ニコールは、兄のような発達障害の人たち向けの集団住宅についての州の予算の問題などについて父親と話すことが多くありました。そして、兄も恩恵を受けている支援を行っている「ゲイトウェイ・トゥ・ラーニング」の資金などについてもよく話になりました。
そして現在、料理のこの取り組みは「ゲイトウェイ・トゥ・ラーニング」でも主要なものとなりました。
月曜日から金曜日、午前8:30から午後3:00まで行われています。
料理のしかたを学んだり、近くの協力店や自分たちにお店で販売するパンなどを作ったりします。
こうした活動を通じ、お店で商品を買うこと、お金の管理などのライフスキルも学んでいきます。
ゲイトウェイ・トゥ・ラーニングのディレクターのキャスリン・ラビンはこう言います。
「料理を作ることで学べることはたくさんあります。
計画を立てたり、計量して混ぜたり、それができるようになるためにはいくつものスキルが必要となるのです。
人とやりとりをしたり、人と関係を築くようなスキルも学んでいくのです。」
障害のある大人を支援しているゲイトウェイ・トゥ・ラーニングの責任者のジョン・ラッツェンバーガーは、18歳を過ぎた障害のある人たちには居場所が必要で、そしてそのためには資金調達が重要だといいます。
「ドアーズ・オープン・ディッシュズ」プロジェクトをはじめた、ダニエルの妹のニコールは州の財政が厳しいなか、この取り組みによってゲイトウェイ・トゥ・ラーニングのような支援活動を存続させたいと願っています。
そして、本物のシェフと発達障害の人たちが会話をし、関係ができていることを喜んでいます。
「本物の人と人との交流があるんです。」
このプロジェクトには、シェフのクリスチャンも個人的な思いをもっています。
父親の唯一のきょうだいである、おばは自閉症でダウン症でした。そして、9歳で亡くなっています。
クリスチャンという名前は、そのおばから父がつけたものです。
その父親が、シェフのクリスチャンと発達障害のダニエルが一緒に料理を作っている動画を見ていることがありました。きっと、父親は亡くなったおばのことを重ねているのだろうと思ったそうです。
お店に出す料理について、発達障害のダニエルとシェフのクリスチャンが1時間ほど話をすると、クリスチャンはダニエルから冷凍の野菜とパルメザンチーズの料理のレシピを教えてもらいました。
「食べてみたら、けっこういいんです。悪くありません。」
お店の料理の皿には、ダニエルの冷凍野菜料理をまねた、野菜の添え物がのせられることになりました。
「ダニエルは好きなものを知って、好きなものを食べたいんです。
過度に難しく考えたものよりも、純粋な味になるのです。
私はそれを料理に取り入れたいと思っています。」
そして、ダニエルの味を反映させた料理についてこう言います。
「ダニエルの人柄も表れます。
楽しいんです。遊び心があってカラフルになるんです。
料理が笑顔になります。
お店で正式に出す前にまず発達障害のダニエルに食べてもらって、気に入ってもらえなかったら、またチャレンジするつもりです。」
気にいってもらえたようですね。
(出典・画像:米Chicago Tribune)
とても難しいことだと思いますが、
こんなふうに、発達障害や知的障害でも、一人ひとりが持っている得意なこと、強みを活かした、支援や協力がなされたら本当にすばらしいと思います。
難しいですが、簡単にあきらめたり、わりきったりしないで頂けたならと願います。
発達障害の息子がしたいのは皿洗いではない
(チャーリー)