- 1. 起業によって人生が変わることはあるのか?
- 2. 発達障害を持つ子どもが独立してビジネスを成功させることは可能なのか?
- 3. 発達障害をもつ人が起業する際、どのような支援が必要なのか?
発達障害のスペンサー・ケリーは起業したことで人生が変わりました。
両親の家で始めたエクスペディション・ソープ社は、これまでの2年間で10万ドル(約1100万円)の売上があります。
2016年6月に盗まれてしまったために代わりの自転車を購入するために父親から借りた300ドル(約33000円)を返すために始めたのがエクスペディション・ソープ社のきっかけです。
「僕は父から借りたお金を返すため、自分ができるビジネスについて考えたんです。
僕も使っています。あなたも使っています。そこを歩いている人も使っています。
大統領だって使っています。使わない人はいません。
だから、石鹸を作ることにしたんです。」
ケリーは天然の成分を入れ、贅沢な石鹸を手作りするようになりました。
地元の専門家とも提携し、家でパッケージにし、ネットや店舗で販売をしています。
ケリーは4歳のときに発達障害、アスペルガー症候群と診断をされています。
ケリーの両親は、どうしてケリーは話さないのか、人と関わろうとしないのかを心配してわかったことです。
母親はこう言います。
「話をすることもありません、何を考えているのかもわかりません。
それは恐ろしいことでした。」
7歳のときにケリーは、米オークランド大学自閉症アウトリーチサービスセンターの社会的レクリエーションプログラムに参加するようになりました。
「そこで、僕はビジネスや仲間づくりに関わるスキルの基礎を学んだと思います。
起業家になるのが一番だと思いました。
僕がアスペルガーと向き合って生きていくのには。
僕の人生を変えてくれました。僕はすごく情熱をもって取り組んでいます。」
ケリーの石鹸の会社には、すでに2000人以上の顧客がいます。
多くの人がリピーターになっています。
「石鹸の販売を始めたばかりのころは、僕はお客さんと話すことも簡単にはできませんでした。
今は、克服できました。」
ケリーを指導した米オークランド大学院のフランク・カーディマン講師はこう言います。
「ケリーはビジネスについて強い興味をもって学んでいました。
とても明るくて、賢くて、エネルギッシュな子でした。
ケリーの石鹸会社の販売戦略はうまくいっています。どんどん成長しています。
ケリーは生徒を超えて、私にとって素晴らしいパートナーだと思っています。
ケリーは、人は成長できるということを示してくれるお手本のような存在です。
ケリーは優しい心、親切な心ももっています。
成功するためのすべての資質をケリーはもっています。」
ケリーは来年ミシガン大学に入学したいと考えています。ビジネススクールで学ぶためです。
ケリーには実現したいと考えているビジネスが6つもあるそうです。
大学に行くことが決まれば、ケリーの弟がケリーの石鹸会社を継ぐ計画になっています。
ケリーの父親のトレイシーはこういいます。
「ケリーはこれまでにたくさんの挑戦をしてきました。
ケリーは毎日、同じ言葉を繰り返し、他の子どもと同じように体を動かすこともできていませんでした。
会話をすることもできませんでした。
そんな息子が、他の子たちと負けないくらいになり、こんなに立派になったのには本当に驚きます。」
ケリーには全米から注目を集めていて、11月に行われる1000人以上が参加する米自閉症アスペルガー世界会議でも講演することになっています。昨年も講演を行いました。
「僕が講演をするのは、発達障害の若者にとって起業がどれほどメリットがあることなのかを、よく知ってほしいからです。」
米オークランド大学自閉症アウトリーチサービスセンターのディレクター、クリスティン・ローベックも、発達障害の人たちが仕事をするのに起業という方法があるといいます。
「発達障害の人の多くが、自ら起業して成功を収めています。
特に彼らの事業の発展を助ける強力な支援するしくみがある場合には、特にそうなっています。
ケリーや家族の石鹸の会社はまさにその例になります。」
ケリーは起業することで学んだことについてこう語ります。
「僕は簡単にできることは何もないと学びました。
一生懸命がんばらなければなりません。
みんなそんなことは知っていると思います。
だったら、何年も就職できることを待っているよりも、自分で始めてしまったほうが簡単にがんばることができますよ。」
ケリーは米オークランド大学自閉症アウトリーチサービスセンターや米自閉症協会など自分を助けてくれたところに石鹸の会社の売上の一部を寄付しています。
ケリーにはどんな状況になっても変わらない目標があります。
発達障害の人たちに元気を与え、発信できない発達障害の人に代わって、人に伝えていくことです。
「僕はこれまで、たくさんのことをあきらめていました。
しかし、自分のビジネスを始めたことで、あきらめないことを学びました。
自分に自信と責任をもち、生きていくことを知ったんです。」
(出典・画像:米Detroit Free Press)
発達障害の人に限る話ではありませんが、就業支援や法定雇用率への取り組みだけでなく、うまくいかなかったときにも守られる制度や支援を設けて、もっと起業が進むようになればと思います。
「違っている」ことがまさに強みとなり、ますます発揮できて、その人にも社会にもいいはずです。
発達障害はシリコンバレーが生まれた時からシリコンバレーの一部
(チャーリー)