- 発達障害の人が仕事を見つけるのは簡単なことか?
- 発達障害の人が適した採用方法を見つけるのは難しいことか?
- ニューロダイバーシティのメリットは何か?
発達障害の人が仕事を見つけることは簡単ではありません。
オーストラリアではそれを変えようと畜産業での取り組みが始まっています。
サンポーク・ファームは、動物を育てることで発達障害の人のキャリアパスを開発することを目指しています。
オーストラリアでは、仕事をしている発達障害の成人は40%にすぎません。
センテイン・カスラースミスは、アスペルガー症候群です。
動物学の学位をもっていますが、フルタイムの仕事に就くことはできませんでした。
「終わりがないつらいできごとでした。」
そうカスラースミスは言います。
「面接に向けても大変でした。面接を受けても、結果が返ってきませんでした。」
自閉症のミハイル・クロスフィールドも同様な経験をしてきました。
ずっと失望に我慢をしてきました。
「私たちはできるんです。
しかし、残念ながら多くの場合には、これまでの経験やできることを『伝える』ことが求められます。
今まで紙に書いても、できることが理解してもらえませんでした。」
この発達障害の人に向けた農業プログラムでは、採用プロセスを変えました。
このプログラムのリーダー、クリスティー・リチャードは、履歴書や従来の面接試験などの採用方法に苦労してきた発達障害の人たちに、適した採用方法を見つけ出すことに取り組みました。
「発達障害の人たちは、自分のできることが伝えられたら、うまくいくのです。
これまでの伝統的な採用方法では、実際に仕事ができる能力を伝えることは難しいのです。
むしろ『伝える』ことを難しくして、仕事に関わる能力ではなく、それに挑戦させていると思えるものです。
私たちは面接試験はなくし、ネットで写真を送って行えるようにしました。
たくさんの素晴らしい申込みがたくさんありました。」
このプログラムは18ヶ月間行われるものです。
現在、発達障害の12人がここに雇用され、仕事をしています。
こうした発達障害の人の雇用はサンポーク・ファームのマネージング・ディレクターのロバート・バーンベルドが始めました。
「数字を扱う仕事やITとは対象的な、動物と共感することができるというようなスキルをもつ発達障害の人のための初めての就労プログラムの一つです。」
そして、このプログラムの取り組みは仕事だけでなく、発達障害の人たちの生活をも変えています。
自閉症のクロスフィールドには仲間と過ごせるようになり、アスペルガー症候群のカスラースミスは家を買うことができました。
カスラースミスの母親のベスの人生も変わりました。
「障害のある子を育てていなければ、自分の子の価値を誰も見てくれないことが、どんなにつらいことかわからないと思います。
子ども本人が、それに気づいたときには、親ももっとつらいものになります。
今、娘は大きく変わりました。
娘ができることを示せる機会をもらえました。娘はたくさんのことができています。」
そう、母親のベスは大きな感謝をしています。
この発達障害の人に向けた農業プログラムがうまくいっている理由の一つは、メンターです。
「メンターには、古くからの養豚をしている農家の人がいます。
発達障害の人への教育や発達障害の人たちがうまくやっているかなどについて、私たちのようには考えたり気にしたりすることがありません。
仕事でも仕事以外でも。
しかしそうした態度が、皮肉なことに発達障害の人たちを良い方向に変えたりしています。」
そうサンポーク・ファームのバーンベルドは言います。
「毎日、私たちは職場における多様性について話をします。
本当のニューロダイバーシティです。
私たちは異なった考え方ができる人をいつも探しています。
私たちは、同じような人を雇用したくありません。
そうすることで、ビジネスのメリットもあります。
慈善活動をしているわけではありません。」
多くのメリットがあったとバーンベルドは言います。
「このメリットを数値化するのは簡単ではありませんが、本当に多くの場面であります。
まだ活かされていない発達障害の人たちの力を利用することで、ビジネスにメリットがもたされます。
私たちサンポーク・ファームは他とは違った強みをもっています。
それは、異なる考え方、異なる問題解決方法を持っている人たちが一緒になっているからです。
問題があっても、12ヶ月前とはまったく違った方法で解決することができました。
そうした私たちの力は、とても農業に役に立つものと思います。」
(出典・画像:豪abc)
ニューロダイバーシティの真価は、ゴールを共有した「違った考え方、見方ができる」人たちが集ったときに現れます。
「違う」人に「違わない」ことを前提に、集ってもらってもニューロダイバーシティのメリットはありません。
「違った考え方、見方ができる」を受け入れないのなら、「違う」人は続けていくことができません。
「ダイバーシティ」を声高にかかげて満足している企業でも「違った考え方、見方ができる」を求めない、むしろ不要とする、法定雇用率や「社会貢献」「社会的責任」を気にしたかたちだけのダイバーシティであれば、マイクロソフトをはじめとした米国IT企業のように強くなることは決してありません。
マイクロソフトが自閉症の人を雇用する理由
(チャーリー)