- 自閉症の人はなぜ他の人より早く死亡することが多いのですか?
- 発達障害の子供が事故や溺死に遭うリスクをどう減らせますか?
- 自閉症の子が社会的に孤立しないようにするためにはどんなサポートが必要ですか?
エリザベスには「異常に明るく、好奇心があって、繊細で親切で、そして激しく衝動的になってしまうことがある」と説明する発達障害、自閉症の6歳の娘のサラがいます。
サラは5歳のときに高機能自閉症と診断をされました。
そう診断されるずっと前から、母親のエリザベスにとっては苦しいものでした。
「娘が3歳のときに、とても不安に苦しんでいることがわかりました。
特定の状況になると、それはひどいものになりました。
しかし、小学生になった今は、それらはずいぶん改善しています」
専門的な治療と投薬を含めた、早期療育がサラの生活を大きく良いものに変えてくれました。
「学校でいじめられることもなく、友だちもできました。
パニックになりそうな状況から逃れることも教わっています」
しかし、自閉症など発達障害の子の多くがサラのような良い状況になっているわけではありません。
サラのようには多くのことができない知的障害のある子もいます。
2016年に発表されたスウェーデンでの研究では、自閉症の人は早く死亡していることが示されています。
この研究では、自閉症の人たちはそうでない人に比べて平均して16年も早く死亡しています。
自閉症でさらに学習に困難をかかえる人では、平均して30年も早く死亡していました。
イギリスの慈善団体、オーティスティカのCEO、ジョン・スパイレスはこう述べています。
「自閉症の人の多くが、40歳の誕生日を迎えることがありません」
2017年に発表されたアメリカでの研究では、自閉症と診断をされた人たちの平均寿命は36年でした。
オーストラリアの発達障害者支援団体アメイズのCEO、ブライダン・ホーガン医師はオーストラリアでも同様だと言います。
「それは、発達障害の人を支援する人たちの間ではよく知られているデータです」
どうして、自閉症の人たちの多くが40歳の誕生日を迎えることができないのでしょうか?
早く死亡してしまう原因はなんでしょうか?
アメリカの研究で明らかになった死亡原因の一つは、事故です。
自閉症の人たちは、事故による死亡率がそうでない人の3倍にもなると考えられています。
具体的には、溺死が最も多くなっています。
溺死は5歳から7歳の間が最も多くなっています。
この研究を行ったグオフア・リー博士によれば、発達障害の子どもたちはいつも不安をかかえています。
そして、その不安を解消するための一つの方法として放浪し、本能的に水の中に入ろうと水に向かってしまうといいます。
自閉症、発達障害の子どもたちに水への安全を教えることはとても重要です。
そして、”British Journal of Psychiatry”に掲載されたスウェーデンでの研究で明らかにされた、もう一つの自閉症の人の死亡原因は自殺です。
この研究チームは、知的障害のない自閉症の人は、一般の人たちに比べて自殺する可能性が9倍も高いことを発見しました。
高機能自閉症の女性では特に多くなっていました。
自分の状態や困難を認識しているために、こうしたリスクをかかえてしまっていると考えられています。
発達障害の6歳の娘のサラをもつ母親のエリザベスにとって、これらのデータは恐怖を感じさせます。
「娘のサラは、大きくなるにつれて、自分とまわりの人との違いを気にするようになってきました」
そして、エリザベスはこの自殺率の高さには驚いていないといいます。
「娘のサラも、いつも不安をかかえています。
娘は抗うつ剤を飲んで、管理可能なレベルにまで下げているんです。
夜も眠る前にメラトニンを飲んでいます。
娘の生活の質を向上させるために必要な方法をずっと毎日探し続けています。」
いじめや社会的な孤立も、発達障害の人の精神的な問題の原因です。
オーストラリアの発達障害者支援団体アメイズのCEO、ブライダン・ホーガン医師によればオーストラリアの発達障害の人の半分以上は社会的に孤立してると感じています。
サポートをされていると感じているのは4パーセントもいませんでした。
「発達障害の人への理解と支援の欠如から、社会から孤立、隔離されてしまい友だちができない、教育を受けることができない、働くことができない、そういうことにつながっています」
そして、自閉症の人たちの平均寿命が短い第3の理由は病気です。
心臓病のリスクが高くなっています。
自閉症の人たちにおいて、なぜ心臓病がこれほど多いのかはまだわかっていません。
しかし、かかえているストレスの高さがその原因ではないかと考えられています。
感覚の問題があるために、音や光によるストレス、まわりの人との関わり合いにおるストレスなど自閉症の人には絶え間なくずっとストレスがかかっています。
ホーガン医師は、自閉症の人が40歳未満で死亡することが多いこと、そしてこれらの原因は、自閉症の人のために知っておくべき重要なことだといいます。
そして、そのホーガン医師がCEOを務めるオーストラリアの発達障害者支援団体アメイズでは「Do One Thing For Autism」(発達障害の人たちのために一つ何かしよう)キャンペーンを始めました。
「簡単なことでいいのです。
職場でやり方に困っている人がいたら、自分が少しだけ早くして、お手本になってあげてください。
学校に発達障害の子がいたら、パーティーに誘ってあげてください。
そのときには、親から音や光の強さについて聞いておいて、少し調整してあげてください」
「発達障害の人から、ハンドドライヤーの音が怖くて、公衆トイレになかなか行けないと聞きます。
自分より先にトイレに入って出ていっていってください、ハンドドライヤーを使わないでください。
そんなことはもちろん言えません。
発達障害の人たちが抱える感覚の問題への配慮は簡単ではありません」
母親のエリザベスもホーガン医師も、自閉症の人の多くが40歳の誕生日を迎えることができないのを知ってもらうことは、自閉症の人の不安を煽るものではなく、自閉症の人の心身の健康を守りたいからだといいます。
「その事実を知って、多くの人に行動しなければならないと思ってほしいのです。多くの人に知ってもらうことが重要です」
【電話やチャットで気軽に相談できる窓口があります。悩みや不安を感じたら】
厚生労働省 相談先一覧ページ
たくさんの困難やリスクをかかえているので、平均寿命は長くはないだろうと察してはいました。
「自閉症の人への不安を煽るものではなく、自閉症の人の心身の健康を守りたい」という思いで私もお伝えしました。
日本についてはわかりません。
これはスウェーデン、アメリカの研究データとオーストラリアでの取り組みです。
しかし、40歳未満という具体的な数字はショッキングです。
ちょっとした気遣いでいいです。
それがたくさんの人になれば、こうした数字にも、すぐにではなくても良い影響が現れます。
また、うちの子も小さな頃から本当に水が大好きです。水辺には絶対に気をつけてください。私はいつも手を繋いでいます。
(チャーリー)