- 男性と女性では、速く動くものを速く検出できる能力に違いがあるのか?
- 自閉症スペクトラム障害の人とそうではない人で、脳の処理に違いがあるのか?
- 性別による自閉症スペクトラム障害の偏りの原因は何か?
“Current Biology”誌に掲載された研究によると、男性は女性よりも、速く動くものを速く検出ができます。
米ワシントン大学の研究チームはその理由は、目に関わる機能の違いではなく、自閉症スペクトラム障害の人とそうではない人との間で違いが発見されている脳の処理部分が関係していると伝えています。
スコット・マレーが率いる研究チームは、今回の研究となったテスト結果に驚きました。それまでに行っていた認知に関わるテストにおいては、男性と女性に違いは見られなかったからです。
マレーの研究チームは、自閉症スペクトラム障害の人とそうではない人との間にみられる、脳の処理の違いについて研究をしています。
現在、自閉症スペクトラム障害の診断については、男性と女性との間には大きな偏りがあります。
自閉症スペクトラム障害と診断される女の子は、男の子に比べて1/4しかいません。
そうした偏りの原因を探るために、マレーたちは自閉症スペクトラム障害と診断をされていない男性、女性にも研究に参加してもらいました。
今回の研究結果はそのなかで偶然に発見したものです。
画面に映る、白と黒のラインが左右のどちらに動いているのかを伝えてもらうテストを行いました。
自閉症スペクトラム障害と診断をされていない男性、女性に行うと、すぐに違いがあることがわかりました。
男性は、動いている白と黒のラインを1/10秒以下の時間見るだけで、左右のどちらに動いているのかを伝えることができました。
それに比べて女性は、男性よりも25%から75%長い時間見る必要がありました。
白と黒、この高コントラストの視覚情報の動きを男性のほうが速く捉えることができる理由は謎です。
これほどの違いは視覚処理のスピード、より広範囲の視覚系システムや運動機能の違いからも、説明ができないといいます。
可能性の一つとしてあげるとすれば、テレビゲームです。
男性のほうがテレビゲームが好きなため、それがトレーニングとなって女性に比べて速く処理ができるようになったのかもしれません。
しかし、テレビゲームをすることで通常期待されるそのほかの改善ポイントは、今回の研究で確認できませんでした。そのため、テレビゲームをすることを理由にするのには疑問が残ります。
研究を続けると、興味深い結果がでました。
自閉症スペクトラム障害の男性と女性との間でも、同じように動きを捉えるのにかかる時間に違いが認められました。男性のほうが速いのです。
また、男性は女性に比べて、高コントラストの場合にはコントラストに反応する神経メカニズムの働きを少なくすることで、動きに対する反応を速めていることが推測できました。
これまでに自閉症スペクトラム障害の人はこの動きに対する反応が速いことがわかっています。
この推測に従えば、自閉症スペクトラム障害の男性は、よりいっそうコントラストに反応する神経メカニズムの働きを少なくさせていると考えられます。
白と黒のラインのような、高コントラストの視覚情報の検出にみられる男性と女性の違い。
その理由がわかれば、自閉症スペクトラム障害は男性が多いという、性別による偏りの原因の解明にもつながるだろうということです。
(出典:米COSMOS)(画像:Pixabay Youtube)
もともと、自閉症スペクトラム障害の方の脳の処理について研究をしてたところ、自閉症スペクトラム障害のあるなしに関わらず、男性のほうが白黒の線の動きを捉えるのが速いことがわかった。
この男女の違いの原因がわかれば、自閉症スペクトラム障害と診断をされるのは男性が多いという偏りの原因も明らかにできるのではないか。
という研究でした。
支援を必要としている方に、正しい評価が行われなかったために、適切な支援が行われない。
そのようなことがないことを願います。
発達障害の人の多くは全体を見ない。目の錯覚が診断に役立つかも
(チャーリー)