- 「障害者」と呼ばれる人たちは、どんな存在だと監督は考えられますか?
- 監督はどのような工夫や配慮で感動ポルノを避け、娯楽として楽しめる映画を制作されたのでしょうか?
- 映画『500ページの夢の束』には、発達障害のことがわからない子どもたちにとっても観てほしい点があると言われていますが、具体的にはどういった理由からでしょうか?
オリジナルのスター・トレックの脚本を書き続けているスター・トレックが大好きな発達障害の女性、ウェンディ。ウェンディはスター・トレックの脚本コンテストに届けるために、数百キロも離れているハリウッドのユニバーサル・スタジオへ向かいます。ウェンディのアドベンチャー、そして家族への思いを描いた『500ページの夢の束』がもうすぐ、来月9月7日より公開されます。
試写会で鑑賞しての感想・レビュー、そして監督インタビューをお届けします。
『500ページの夢の束』©2016 PSB Film LLC
2018年9月7日(金)より新宿ピカデリー ほか全国ロードショー
公式サイト:http://500page-yume.com
一足お先に、試写会にご招待頂いて鑑賞させて頂きました。
「発達障害の女性」が主人公の映画です。
しかし、それはこの映画にとって欠かせない要素ですが、
誰が見ても楽しめる、気持ちよい感動がのこる「アドベンチャー、ロードムービー」だと私は思いました。
これを見ろ、考えろ、そう押しつけるだけ押しつけて、ほったらかされる映画や「感動ポルノ」は私は大嫌いなのですが、この映画はまったく真逆です。
ハラハラドキドキすごく楽しめる、面白い娯楽映画です。そしてすがすがしい気分になれる映画です。
子役として高い評価を得ていたダコタ・ファニング。
米国の映画レビューでは大人になってからの演技もやはりすごい、発達障害の女性の当事者から自然でリアル、と評価されているダコタが演ずる「発達障害の女性」のウェンディ。
愛らしくも奇妙な彼女に誰しもが程度は違えど自分を重ねてしまうはずです。
そうしてウェンディの困難も喜びも自分のように思え、そんな勇気を自分も持ちたくなります。
発達障害については、意識することなしに自然に理解が進むはずです。
そうした点では、発達障害のことがまだよくわからない子どもたちにもぜひ観てほしいです。
発達障害の方や家族向けの試写会を実施。上映会も予定
そして!
『500ページの夢の束』のベン・リューイン監督に単独インタビューをさせて頂く機会も頂きました。
ベン・リューイン(Ben Lewin)
オーストラリア・アメリカ合衆国の映画監督、脚本家。
1946年にポーランドで生まれ、子供の頃にオーストラリアのメルボルンに移る。6歳の時に急性灰白髄炎となりその後、松葉杖を手放せない生活をおくっている。大学で法律を学び弁護士となったが、仕事をやめイングランドの国立映画学校で学び、映像業界での仕事を行うようになった。
代表作品:セッションズ The Sessions (2012) 監督・脚本・製作 など
― 私は発達障害の方や家族向けのWebニュースを日本で提供しています。今回はインタビューの機会を頂いてありがとうございます。
リューイン監督:アメリカでも発達障害の方たちから「500ページの夢の束」はとても受け入れられたという実感を持っています。
― 監督は前作の映画「セッションズ」では障害者の性について採り上げられました。今回は発達障害の方を主人公とした映画を撮られました。続けて障害者に関わる映画を撮られているのはなぜですか?
リューイン監督:「セッションズ」の前にも障害者に関わる映像を撮っています。しかし「障害者の映画」を撮っているつもりはありません。自分のような人も含めて多様な人の映画を撮っているんです。
今回の『500ページの夢の束』でも、実は「障害」について言及しているシーンはないのです。
また、映像に関わり始めたころは面白い人=他人に関わるものを撮ることを好んでいましたが、次第に自分の中にあるものを撮りたいというふうにも変わってきたからでしょう。
― 米国の映画レビューを見ると、発達障害の女性の方が「発達障害の女性」について採り上げていることがまずうれしいというレビューをよく拝見しました。
リューイン監督:発達障害、自閉症というと「レインマン」に代表されるようにこれまで多くは男性が採り上げられてきました。
今回は脚本を見て、女性であることが主人公であることからも撮りたいと思ったのです。
また仲のよい妻からの影響もありますが、私は女性を主役にした作品を撮ることが好きなんです(笑)。
― 障害をかかえるウェンディがマーケット通りを越えて歩みだした勇気を目にすると、私だけでなく、障害のあるなしに関わらず多くの人も勇気と元気をもらい、見習おうという気持ちになると思います。「障害者」と呼ばれる人たちは、どんな存在だと監督は考えられますか?
リューイン監督:ウェンディの世界では、恐怖が彼女にとって最大のハンディキャップであり、障害であると考えます。ハンディキャップは何らかの形で我々でシェアするべきで、これが我々が理解している全てだと考えます。
― 日本でも最近は感動ポルノ”emotion porno”という言葉が知られるようになりました。私はもともとそういうものは嫌いなのですが、発達障害の子の親になってますます、私は感動ポルノが嫌いです。
『500ページの夢の束』には全くそのようなところはなく、娯楽として楽しめて、あたたかさや気持ちのよい感動がありました。監督はどのような工夫や配慮でそれを実現されたのでしょうか?
リューイン監督:私は、映画で多くの人の感情を泣かせる為に操作するのは好きではありません。なぜならあまりにもチープだからです。
私が役者と働くときは、彼らも、私がインチキやお涙頂戴ではなく、リアルな感情や真実を残したい事を知っています。
その事が映画を強制的ではなく、ライトタッチにする為には効果的なのだと考えます。
またユーモアが、”emotion porno”なしで観客の気持ちをつかむための重要な要素になるのだと思います。
『500ページの夢の束』
大人も子どもも、発達障害に関心のある方ない方、本当にみんなにおすすめしたい映画です。もうすぐ公開です。
(スター・トレックのファンであるなら、くすっとできるネタがところどころあるので、なおのこと見逃せません。本家をもちろん含めても、グリンゴン語が話されている時間が最も長い映画だろう(笑)とリューイン監督が仰ってました。映画のパンフレットにもスター・トレックねたの解説が載っています!)
(チャーリー)
2018年9月7日(金)より新宿ピカデリー ほか全国ロードショー
『500ページの夢の束』©2016 PSB Film LLC
公式サイト:http://500page-yume.com
【STORY】 『スター・トレック』が大好きで、その知識では誰にも負けないウェンディの趣味は、自分なりの『スター・トレック』の脚本を書くこと。自閉症を抱える彼女は、ワケあって唯一の肉親である姉と離れて暮らしている。ある日、『スター・トレック』脚本コンテストが開催されることを知った彼女は、渾身の作を書き上げるが、もう郵送では締切に間に合わないと気付き、愛犬ピートと一緒にハリウッドま で数百キロの旅に出ることを決意する。500ページの脚本と、胸に秘めた“ある願い”を携えて―
【監督】ベン・リューイン『セッションズ』 【製作】ダニエル・ダビッキ『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』、ララ・アラメディン『マネーモンスター』 【出演】ダコタ・ファニング『I am Sam アイ・アム・サム』、トニ・コレット『リトル・ミス・サンシャイン』、
アリス・イヴ『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
原題:PLEASE STAND BY/2017年/アメリカ/英語/93分/カラー/シネマスコープサイズ/5.1ch/日本語字幕:桜井裕子 レーティング:G ©2016 PSB Film LLC 公式サイト:http://500page-yume.com
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