- グーグル・グラスを利用したシステムは、発達障害や自閉症スペクトラム障害の人のコミュニケーション能力向上にどのように貢献しているのか?
- グーグル・グラスを利用することで、子どもたちや家族の学習やコミュニケーションがどのように進化しているのか?
- 発達障害や自閉症スペクトラム障害の子どもたちにとって、オーディズム・グラスプロジェクトのシステムが持つ意義は何か?
かつて注目を浴びたグーグル・グラスは発売してから3年後の2015年に販売中止となりました。
しかし現在、発達障害、自閉症スペクトラム障害(ASD)の人の人生を変える装置として賞賛されています。
発達障害の人は、社会的スキルやコミュニケーションに困難をかかえます。
米スタンフォード大学の研究者たちは、発達障害の子に顔の表情を理解できるように親が使えるグーグル・グラスによるシステムを開発し、その結果、発達障害の子たちのコミュニケーション能力を高めることができました。
カタリン・ボスが、オーティズム・グラス・プロジェクトを始めました。
スタンフォード大学医学部の大学院生、ボスが香港で開催された会議で、この拡張現実を利用する療育方法について語りました。
「このプロジェクトの目的は、子どもと家族の学習を支援することです。」
ボスとチームに寄付されたグーグル・グラスを利用して、150人の自閉症スペクトラム障害の子どもたちがこのシステムのテストを行いました。
「多くの子どもたちが、アイコンタクトができるようになり、表情から感情を読み取れるようになりました。
家族のコミュニケーションもよくできるようになりました。」
このテストの一つでは、14の家族が6週間に渡って、週に3回、20分間グーグル・グラスを利用しました。
「わかったことは、感情を理解できるようになっただけでなく、親が子どもにグーグル・グラスを使って教えることで、家庭内でのコミュニケーションも促進されたのです。
このグーグル・グラスで子どもたちは人の顔を見て、どう理解すればよいのかが助けられました。」
この研究はNature Partner JournalのDigital Medicineに掲載される予定です。
とても喜んでいた親たちもいたと言います。
「私たちは、そんな家族をライトスイッチグループと呼んでいます。
照明のスイッチを入れたかのように明るく輝いていたからです。」
オーティズム・グラス・プロジェクトのこのシステムは、グーグル・グラスから取得した、子どもの目に入っている光景をスマートフォンのAIアプリが処理をして、その情報をグーグル・グラスに表示し子どもに伝えます。
社会的に意味のある相手の合図について、リアルタイムに教えます。
幸せ、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪、その他8つの感情を教えてくれます。
「私たちの理論では、これらの感情を理解できれば、十分だと考えています。」
AIアプリは、受け取った画像を分析し、表情から感情を読み取り、絵文字と音声で教えてくれます。
例えば、表情から幸せだとわかれば「ハッピー」と耳にも伝えてくれます。
香港の自閉症児童基金によれば、この地域には自閉症スペクトラム障害の子どもたちは2万5千人ほどいますが、十分なケアがなされていないといいます。また、専門家に療育を依頼すると1回あたり、900香港ドル(約12,000円)かかるため多くの親たちが補助金の申請を行い、1年から2年も待っている状況です。
このような難しい状況は中国全体でも同様です。
中国全体では、発達障害の人の割合は1%程度と推測されています。つまり1300万人を超えるのです。
「私の推測では、中国にも多くの発達障害の人がいます。
子どものころにきちんとした診断をうけ、療育を受けようとしても、受けることができないのです。
療育を受けるのに1年間も待たなければならないのです。
オーティズム・グラスはその間も使える療育ツールの一つになると考えています。」
現在の療育では、フラッシュカードを利用して発達障害の子どもたちに、人の表情から感情を学ぶ練習が行われます。
しかし、こうした方法では現実の状況下で、本物の人から感情を読み取るようになるのは困難だと言います。
「私たちは、子どもがまず最初に社会的な交流を行う親で、表情を読み取る練習をできるようにするものです。」
ボスによれば、このグーグル・グラスによるシステム、オーディズム・グラスは、うまくいけば2年後には販売が開始できる予定です。
グーグル・グラスは米国では1500ドル(約15万円)であり、その費用が問題でした、そこでボスはオーティズム・グラスをレンタルで利用できるようにし、その費用も保険適用がされるのが理想だと言います。
「発達障害と診断をされたら、1、2年ただ待っているのではなく、すぐにこれで自宅で療育を始めるのです。
きちんとした療育を受ける頃までには、かなり進歩できるはずです。」
レインボー・プロジェクト・ラーニングセンターのプロジェクトディレクター、キース・リー教授は、発達障害の子どもは文字を読んだり、話を聞いたりするよりも、目でわかることのほうが得意な場合があるといいます。
しかし、発達障害の子どもは、一人ひとり症状が異なるため、こうした技術が発達障害の子ども、みんなにとって良いということは難しいと言います。もっと、大規模なグループでのテストが必要だと言います。
発達障害、自閉症スペクトラム障害では、特別な支援が必要な重度の子どもから、通常の学校に通う高機能の子どもまでさまざまです。それぞれにあった、適切な療育方法が求められています。
リー教授は、香港だけでなく多くの他の国でも発達障害の子どもがいる家庭では外出をせず、家にとどまり、親は追い詰められてしまうといいます。
「親と子どもとで、家庭で進歩のあることができるようになれば、親も心が休まり、より良い生活もおくれるようになります。」
(出典・画像:中国South China Morning Post)
カードや写真ではなくて、本物の人、そしてそれが親であれば、たしかに練習によさそうです。
診断をされても、長い間待たなければいけないような状況下であれば、こうした家庭で利用できる効果の高い療育ツールはますます必要とされますね。
(チャーリー)