- 発達障害や自閉症の人が社会性や関心を持っているのか?
- 自閉症の人が示す行動が実際には何を表しているのか?
- 効果的な療育や支援方法にはどのようなアプローチが必要なのか?
新しい研究は、『発達障害、自閉症の人の多くはまわりの人との関わりに興味がない』としてきたこれまでの考え方に大きく異議を唱えるものです。
“Being vs. Appearing Socially Uninterested: Challenging Assumptions about Social Motivation in Autism,”研究論文では、自閉症の人が見せる特徴的な行動は、社会性やまわりの人への関心とは関係がないことだとするこれまでの考え方に疑問を投げかけています。
この研究論文では、むしろ自閉症の人たちが見せているのは社会的なシグナルであって、誤解をしてきたことを示唆しています。
そして、これまでの考え方を変えることで、より効果的な療育などが行えると伝えています。
「この研究が、発達障害、自閉症の人たちに対するより適切な療育や効果的な支援方法の開発につながることを願っています。」
そう米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の心理学のネネラ・アクタール教授は述べています。
この研究は米バージニア大学の心理学のビクラム・ジャスワル助教授と共同で行いました。
この研究では、自閉症の人が見せる行動に注目しました。
自閉症の人が見せる4つの共通する行動、『目を合わせない』『指差しをしない』『反復的常同的な動作』『同じことを繰り返して話すオウム返し』についてです。
「最も効果的な療育方法は、自閉症の人にそうでない人と同じような行動を求めることではありません。
自閉症の人とそうでない人たちがお互いの社会的なシグナルを認識できるように教えることなのです。」
そうジャスワル助教授は言います。
自閉症の人の多くが見せる、自閉症ではない人が社会に無関心だと思ってしまう行動は、むしろ社会とのつながりを強く願っていることを表現しているのだと、アクタール教授とジャスワル助教授はそれぞれについて説明し、伝えています。
『目を合わせない』については、
自閉症であると、何かを見ていると、誰かが何かを話してもそれを聞き取ることが難しいために、目を合わせないようにしていると考えられるのです。
「皮肉なことに、その人に目を合わせないというのは、むしろ、その人にたくさんの注意を払って、話していることを聞き流すまいとしているのです。」
『指差しをしない』については、
自閉症の人が自分の望むように体を動作させることが難しいためだと考えられます。
「他の人と自分が興味を持っていることを分かち合いたい気持ちをもっていても、指差しを行うのに必要な複雑な体の動作を考え、実行することが困難なのです。」
『反復的常同的な動作』については、
自閉症でなくても多くの人が、心配なときなや退屈をしているときには、同じことをしていると指摘しています。
自閉症の人もこうすることで気を紛らわしているだけです。
他の人から奇妙に思われてしまうことが理解できていても、それをやめられないでいるだけなのだと説明しています。
『同じことを繰り返して話すオウム返し』については、
自閉症の人だけでなく、多くの人が映画やテレビで聞いた言葉を使って人に伝えます。オウム返しになぜその言葉を言うのかわからなくても、それは意味がないわけではないと説明しています。
オウム返しは、他の人とつながりたいための深い表現方法なのです。
この研究論文ではこのような例が紹介されています。
友だちを亡くし、悲しんでいる母親に、自閉症の少年はずっとこの言葉を繰り返して言いました。
「チキン・リトルは空が落ちていると思った。けれど空は落ちていない。」
自閉症の人が見せる奇妙な行動から、まわりの人との関わりに興味がない、と考えてきたのは自閉症についての研究や療育に深刻な影響を及ぼし、マイナスの影響があったと述べています。
アクタール教授と、ジャスワル助教授はこう言います。
「今回の研究で、自閉症の人たちから教えられたことは、従来の考え方を大きく揺るがすものです。
真剣に取り組む必要があります。
私たちは、自閉症の人が見せる奇妙な行動の理由を理解し、自閉症の人たちが独特な方法で、まわりの人との関わりを求め、表現しているかもしれないことを理解しなければなりません。」
(出典:米カリフォリニア大学サンタクルーズ校)(画像:Pixabay)
重度の発達障害、自閉症、知的障害であるうちの子は全くお話ができません。
いつも指を動かしています。ゆれ動いています。謎の音声を発しています。
目は少し合わせてくれるようになりましたが、無理はしてくれなくてよいです。
親子であっても、正直、何を考えているのかわかりません。
一見うれしそうでも、実は心の中では嫌がっているのかもしれないのではないか、など疑心暗鬼にもなります。
できるだけ楽しく過ごしてほしく、そうなるようにありたいのですが、
やりとりができないため、どこまで自分と同じような思考しているのかがわからず、ずっとそうした不安があります。
なので、やりとり方法が違うだけで深いところは同じと理解できる今回の研究は、そんな私を安心させてくれます。
発達障害者は人を助けない。その考えは違う
(チャーリー)