- 発達障害の子どもにとって、ソーシャルロボットはどんなメリットがありますか?
- なぜ発達障害の子どもには、人間の顔に似せないロボットが有効なのでしょうか?
- ソーシャルロボットを使った教育の効果はどのように評価されているのですか?
「私の好きなピザはペパロニピザです。」
カスパーは9歳のジョシュア・ウィランに自己紹介します。
「僕が好きなのは、チーズ、オリーブです。」
ジョシュアも、初めて会ったロボットにそう答えています。
「おいしいんだよ。」
カスパーは、発達障害の子どもたちのために特別に開発された動き、話すロボットです。
カスパーは、コミュニケーションに困難をかかえている子どもたちと会話を行います。
この見た目は、子どもたちには気にならないようです。
子どもたちは、カスパーと積極的にやりとりをしています。
カスパーは、英ハートフォードシャー大学で開発されました。
この見た目も、慎重に検討された結果です。
子どもを対象にしているため、大きさも小さくなっています。
発達障害の子どもたちに過度の刺激にならないように、カスパーは最小限の表情しか見せないようになっています。
「子どもたちはカスパーにとても興味を持ちます。」
そう、豪ニューサウスウェールズ大学のスコット・ブラウン准教授は話します。
ブラウン准教授たちによって、オーストラリアでの初めてのカスパーのトライアルが行われています。
カスパーのこの顔は多くの人が好むものとはいえませんが、それは時代を超越し中立的な存在を示すように作られたものです。
「繰り返し何度も同じことを行え、人とやりとりができる能力、それがこのロボットの得意なことです。
それは、発達障害の子にとても役に立つ能力を持っているということです。
カスパーのようなソーシャルロボットは、人と人とのやりとりができるようになるための練習機会を提供します。
現在は、実際にどれほどの効果があるのかを評価しているところです。」
カスパーは、それぞれの子どもにとって困難となる特定の社会的状況、例えば、会話を続ける、初めて出会う、そうしたシーンでのやりとりの練習ができるようになっています。
「発達障害の子の場合には、初めての人に出会うことは、とても恐ろしいことであったりします。
こうして、まずロボットで練習できることは、すばらしいことです。
さまざまな子どもや、社会的なやりとりに困難をかかえる人のために、ソーシャルロボットは新しいツールとなるものです。」
ソーシャルロボットは新しい分野です。
機械であるロボットが、実際に役に立つスキルを人に教えることが出来ているのかを評価するためには長期的な研究が必要です。
このトライアルに協力をしているオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のデイビッド・シルベラタイルはこう言います。
「私たちが期待していることは、ロボットとやりとりができるようなることではありません。
人とやりとりができるように学べることです。
これは単なるおもちゃではありません。
子どもたちが一緒に遊んで、やりとりを学べる支援ツールとなるものです。」
CSIROは、南オーストラリアのマレイ・ブリッジ高校で、サムとフィルと名付けたソーシャルロボットのNAOの利用の評価も行っています。
この高校での障害のある子どもたちのクラスでは、NAOを2年間に渡って利用し、ヨガやソーシャルスキル、IT、科学を学ぶための授業を行ってきました。
NAOは、子どもたちがストレスを感じている時に話すことや、発達障害の子どもたちに、落ち着くなどの対処方法を教えることができるように作られています。
CSIROのデイビッドは、これまでの結果からソーシャルロボットの利用を奨励していると言います。
「集団になっての活動を躊躇して行えなかった子どもたちの中から、ソーシャルロボットでの活動をみて、突然参加するようになった子もいました。
子どもたちは、みんなワクワクするテクノロジーに触れたかったようです。
ロボットとたくさんの交流をしています。」
障害の子どもたちのクラスを担当しているクリスティーヌ・ロバーツイーツ先生はこう言います。
「ロボットはとても好かれるようにデザインがされていて、そしてとても忍耐強い存在です。
コンピュータで出来ていて、プログラムすることもできます。
生徒たちは、プログラムをすることも大好きです。」
ロボットを使った取り組みで、子どもたちの自尊心が高まり、確実に、自信もついてきたといいます。
16歳の生徒のテイラー・ヒルトンはこう言います。
「最初は、ロボットはただ騒がしいものだと思いました。
しかし、今は何よりもロボットを愛しています。」
(出典・画像:豪abc)
カスパーの顔は何度見ても、私は正直苦手です。NAOはとてもかわいいですが。
まさに不気味の谷を渡る前の崖っぷちにいる存在です。
ですが、人間の顔を見ることが、発達障害の子には大きな負担があることがあります。
そのため、人間の顔らしさをなくした上で、人間の表情を伝えられるぎりぎりのところでこういう顔になったのだろうと理解しています。
ソーシャルロボット、どんどん普及、活躍して頂きたいです。
特別支援教育で活躍するNAOに会いに行く
(チャーリー)