- 発達障害の人が身近な人や馴染みのない人のにおいを判別するにはどのような脳の領域が使われているのか?
- 発達障害の人がにおいを嗅いだとき、どのように脳の活動状況がそうでない人と異なっているのか?
- 発達障害の人は、人間のにおいと物のにおいを処理する際、どのように脳のネットワークを使っているのか?
発達障害の人たちは、そうではない人と異なる脳の領域を使って、身近な人や馴染みのない人のにおいを判別しています。
そして、発達障害の人たちはにおいを嗅いだときは、そうでない人に比べて、よりたくさんの脳の領域を使っていることもわかりました。
オランダのロッテルダムで開かれている2018年国際自閉症研究大会で発表された研究です。
発達障害の人、そうでない人、どちらも人間のにおいを処理するのと、物からのにおいを処理するのでは、使う脳のネットワークが異なっていることが発見されました。
そして、人間のにおいを処理する脳の領域は、発達障害の人とそうでない人で異なっていることもわかりました。
人間は意識をすることなく、においで人を判別しています。
2017年に発表された研究では、スカイダイバーが空から飛び降りたときにかいた汗から採取した「恐怖のにおい」に対して、発達障害の人とそうでない人で反応が異なっていることを発見しています。
この研究は、発達障害の人の人間のにおいに対する反応が、発達障害でない人と異なることを初めて示したものでした。
人のにおいが発達障害に伴う不安症や社会的な困難に与える影響を明らかにすることに役立つものです。
発達障害の人への療育にも利用することができるかもしれません。
例えば、身近な仲のよい人のにおいがする部屋にすれば、落ち着いて療育が行えるかもしれません。
「発達障害の診断や療育の場面で、この研究でわかったことを具体的に利用することができるでしょう。」
今回の研究を発表したバレンシア・パルマはそう言います。
今回の研究では、平均年齢25歳の発達障害の成人30人とそうでない成人30人が、においの識別テストを行いました。
研究チームは、実験に参加する人の友人や親戚など仲の良い人に12時間シャツを着用することを依頼しました。
そしてそのシャツの脇の下の部分を切り取り、ビンにいれました。
そして、装置を使ってビンからにおいを放ちます。
実験に参加した人たちは、
・無臭
・芳香剤の香り
・芳香剤の香り+仲のよい人のにおい
・芳香剤の香り+知らない人のにおい
を嗅ぎます。
そして、そのときの脳の活動状況をスキャンしました。
発達障害でない人たちがにおいを嗅ぐと、梨状皮質と呼ばれるにおいを感知する脳の一つの領域の活動が活発化しました。
しかし、発達障害の人たちはにおいを嗅いでも、この脳の領域の活動は活発化していませんでした。
むしろ、発達障害の人の約半数は、においがないときのほうが脳が活発化していました。
これは、発達障害の人の場合にはにおいがないときのほうが、においを求めて脳が活発化していることを示唆します。
そして、発達障害の人も、そうでない人も、人間のにおいと芳香剤の香りでは、異なる脳のネットワークを利用していることを発見しました。
しかし、発達障害の人たちの場合には、そのにおいが何のにおいであるのか判別するのは簡単ではないとパルマ研究員は言います。
「発達障害の人もそうでない人も、物のにおいと人間のにおいを、異なる脳のネットワークを使って区別しています。しかし、発達障害の人の場合はより多くの脳のネットワークを使っていました。」
今後、研究チームは身近な人のにおいとそうでない人のにおいが、発達障害の人への療育などにどのていど影響を与えるのか調査したいとしています。
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
うちの子も、時には強烈なにおいを放つクッションを家の中ではずっと手にしています。
その感触だけでなく、においも良いのでしょう。
しかし、さすがにと思った時には洗濯はさせて頂きますからね。
「恐怖のにおい」に恐怖しない発達障害の人
(チャーリー)