- 警察官として働く中で、自分の発達障害が仕事にどのような影響を与えるのか?
- 発達障害を持つ警察官として、法の執行や違反の取り締まりにおける倫理や配慮はどのように考えられるのか?
- 発達障害を持つ警察官が職場で成果を上げるためには、どのようなサポートや環境が必要なのか?
英国警察のアダム・オロフリン巡査部長は車を走らせると、目に入るたくさんのものに困惑します。
「私は全てに目が行くので、この道を走るのは特にきらいです。」
そして、すぐに軽微な交通違反を3回見つけました。
「私は制服を着て、パトカーに乗っています。
それなのに、どうして私の目の前で法律を守れないのでしょうか。」
本来のアダムは、法律を守っているか守っていないか、それを確認するだけだったといいます。
しかし、17年間警察の仕事を行ってきて、もっと広く考えられるようになりました。
「私が最初に警察の仕事をしたときには、ほんの小さな交通違反でもすぐに注意をしていました。
そのため、一緒に乗っていた警察官も驚いているくらいでした。」
そうアダムは笑います。
「今でも気になります。しかし、もう気にしないようにしなければなりません。
私は深呼吸をして気にしないようにします。」
2年前、39歳のときにアダムは発達障害と診断をされました。
今のアダムは自分を理解し、補うことを知っています。
トラックの運転手が運転中に携帯電話を使っているところを発見しました。
しかし、電話を使っていただろうと質問をしても、していないと答えます。
電話会社に確認をしないかぎり、証拠はありません。
そして、運転手は生活のために運転をしています。
「こういう違反が、私にとって本当に悩んでしまうものです。
私の心のなかでは、全く悩むことなくすぐに違反として取り締まりたいと思っています。
しかし、そう単純に考えてはならないことを思い出します。
運転手の否定をくつがえす証拠を、今私はもっていません。
そして、運転手は仕事を失ってしまう可能性があります。
厳密にみれば違反である軽微な違反の全てについて、すぐに取り締まるべきとはいえないのです。」
警察家のアダムは、発達障害であるという診断を受けたこと、それを公表したことは、自分を変える革命的なことだったと言います。
発達障害であることを認識できて、自分を理解できるようになっただけでなく、他の人と同じように振る舞わなければならないというプレッシャーも少なくなりました。
「自分が発達障害であることを人に伝えるのは、これまでの人生の中で最高のことでした。
他の人と同じように行動して、疲れることがなくなりました。
もう誰かの真似をする必要がなくなったのです。
私は自分自身の特徴にあわせて、自分にあった仕事を見つけることができました。
私は長い時間、集中することができるので、コンピュータや情報を扱うのが得意です。
今は、盗難事件が発生する場所についての予測を行っています。」
そして、アダムにとって官僚主義は喜ばしいものです。
たくさんの書類に記入しなければならないことは、アダムにとって苦ではありません。
「法の執行に関わる仕事は、自閉症スペクトラムの人に好まれるものです。
自閉症スペクトラムの人たちは、制服が好きです。
毎日同じものを着れるのです。
そして、明確なルールに従って行動をするのです。」
発達障害の公務員についての公式な統計はありませんが、アダムも入っている警察官自閉症協会には700人以上もの警察官が入っています。(家族が発達障害である人も入っているため、入っている警察官のすべてが発達障害というわけではありません。)
52歳のナイジェル・コストン警部も入っています。
ナイジェルは8年前に発達障害と診断をされました。
それまでにすでに20年以上警察に勤めていました。
それは、自分の10代の息子と自分の経験が似ていたためでした。
「息子が、まわりの人とうまくつきあっていけない、など多くのことが私ととても似ていました。
そのために、息子の療法士に自分も発達障害かもしれないと相談しました。
私は、息子に『お前一人きりではない』と言いたいと思ったんです。」
壁にかけられている時計の音にも我慢をしなければならないような、知覚に関わる問題もナイジェルは抱えています。
そのことを、今はまわりの人たちも知っています。
そのため時計は外されて、ナイジェルのための部屋も与えられて、邪魔されずに仕事ができるようになりました。
ナイジェルはこう言います。
「みんなが感情的になってしまうような問題に臨むことが得意です。
冷静に事実から判断することに自信があります。正しい結果を導きます。
私は他の警察官と同じように、むしろそれ以上にうまく仕事ができています。
それは発達障害だからです。
私ができているのですから、他の発達障害の人もできるはずです。」
(出典・画像:英BBC)
たしかに法律などの「ルール」に従い、こだわりや執着をもって事に当たる。
と考えれば、たしかにすごくマッチしそうな仕事です。
発達障害を一括りに「障害」として捉えるようなことをせず、そして発揮できるように適切な配慮を行えば、今まで気付いていなかった活躍できる機会も広がりそうです。
誕生日にバスと警官がやってきた。
(チャーリー)