- リーダーとしての発達障害の人の可能性はどのように評価されるべきか?
- 企業が発達障害の人を採用するために適切な採用方法は何か?
- 発達障害の人がビジネスリーダーとして成功するためにはどのような支援が必要か?
スタートアップ企業のコミッションクラウド社の共同設立者のライアン・マトックは、3年前にWebの開発者を募集したときにマット・スキリングスに出会いました。
メールでやりとりをし、マットを採用しました。
マットは現在、同社の最高開発責任者となっていて、4人のチームを率いています。
しかし、ライアンもマットのチームのメンバーもマットと会ったことはなく、電話で話したことも一度もありません。
マットは33歳のときにアスペルガーと診断をされています。
ライアンにメールをしたときには、多くの発達障害の人と同じく仕事についてない状況でした。
「マットは優れたWeb開発者で、すばらしい技術ももっています。
しかし、電話で話すことは苦手で会議に出ることもできません。
Skypeメッセージを使ってコミュニケーションをとることにし、マットを採用しました。
マットは素晴らしい仕事をします。
私たちにとって大きな収穫でした。」
マットは自身のブログで、就職することについてこう書いています。
「私は運転手、郵便配達員、牛乳配達など、一人で働ける仕事を求めました。
その中で、私はWeb開発に情熱をもち、仕事に取り組んだんです。」
英国自閉症協会によれば、発達障害の人でフルタイムの仕事に就いているのは16%のみです。
英国自閉症協会の就職訓練コンサルタントのエミリー・スウィアテックはこう言います。
「2009年の統計では15%でした。
とても遅い進捗です。」
しかし、雇用する側の考えは改善してきています。
自らも発達障害であり、起業家のオリバー・ソーントンはこう言います。
「発達障害の人を雇用するのは、社会のためとかそういうことではありません。
すごく仕事ができる人を獲得するということなのです。」
オリバーは、米カリフォルニア州にて2016年にコーディング・オーティズム社を設立して、発達障害の子が技術を学び就職できるように訓練できる場を提供しています。
オリバーは自身と二人の兄弟と同じように発達障害である人たちが就職できる機会が少ないことに不満を抱いていました。
「私は発達障害とともに育ってきました。
アメリカでは、発達障害の人の80%が仕事に就くことができていないと知ったときに、
私は大きなショックを受けました。
自分も仕事に就くことができないと思いました。」
コーディング・オーティズム社では、技術を学ぶ他にカウンセリングも提供しています。
アメリカでは、2020年までに技術者が100万人不足すると予測されています。
オリバーはこう言います。
「この技術分野で求められる、適応と創造は自閉症スペクトラムの人たちがもっているものです。
それは、ネクタイをしめてスーツを着ているような経理の仕事とは全く違うものです。
Tシャツとジーンズで、長い時間クリエイティブなことに取組むものです。
情熱をもった自閉症スペクトラムの人であれば、それはぴったりの仕事です。」
オリバーはSAP社やマイクロソフト社が先駆的に取り組んできた発達障害の人の雇用の取り組みにも影響を受けています。
例えばSAP社では、発達障害の従業員と他のスタッフでペアを組む「サバティシステム」で、発達障害の人へのサポートを行い、他の従業員への意識啓蒙も行っています。
英国自閉症協会の就職訓練コンサルタントのエミリーは、企業がニューロダイバーシティを奨励するのであれば、第一に採用方法を考え直さなければならないと言います。
「仕事についての説明では、明確ではない言葉がいっぱいです。
例えば、『最新のIT技術について絶え間なく常にキャッチし、自ら仕事を作り出す人を募集しています。』
という文言を文字通りに捉えれば混乱してしまいます。
24時間、365日ずっとIT技術を監視していなければならないのかと。」
セキュリティソフトウェア会社、タイタニア社のニコラ・ウィッチングCOOは、発達障害についての経営者会議に参加して以来、求人広告のコピー変更も含め採用方法を変更しました。
「私たちは『チームワークが大事だ』という求める言葉について見直しました。
チームワークは重要ですが、その人に求めるのではなく、まわりの人たちが適応できるものだからです。」
タイタニア社では、採用時には面接だけでない別の評価方法を導入しています。
また面接の質問もストレスや不安を与えないように事前に伝えています。
発達障害の人がリーダー的な立場を務めることは可能でしょうか?
コーディング・オーティズム社を設立したオリバー、そして英国自閉症協会の就職訓練コンサルタントのエミリーも企業の考え方が変われば可能だといいます。
「発達障害の人たちは、ビジネスリーダーになれる可能性をもっています。
しかし、多くが見過ごされているのです。
発達障害の人たちが信じられないほど有能であっても、社内コミュニケーションスキルを持っている人のほうが昇進するのです。
発達障害の人たちはまた、ステレオタイプなビジネスリーダーのイメージとも異なっているからです。」
そうエミリーは言います。
しかし、これからはそれが変わるかもしれません。
コミッションクラウド社の共同設立者のライアンは、リーダーが人がたくさんいるオフィスのなかで指揮をとる時代は終わりを迎えていると言います。今は遠隔で仕事ができるようになったからです。
「マットはネットのコミュニケーションで4人のメンバーを率いています。
発達障害のマットは優れたチームリーダーです。
他のメンバにも期待して取り組んで、熱心に働いてします。
ネットのような技術の進歩によって、マットの人格が光輝くようになったのです。」
(出典:英The Guardian)(画像:Pixabay)
「友だち100人作ろうよ。」
「御社の中では、潤滑油のような存在になりたいと思います。」
もうそういうのはいいです。そういう時代は終わりました。
うわべだけのコミュニケーションは技術の進歩で必要なくなり、いろんなそれぞれの人が持っているものにきちんと光があたり、そしてそれで活躍できる時代に進んでいるのだと思います。
マイクロソフトが自閉症の人を雇用する理由
(チャーリー)