- 1. 唇の動きと言葉の一致に注目することが言語能力にどのように影響するのか?
- 2. 発達障害の子どもたちが、他の人が話しているときに話者の唇や目を見ることが難しい理由は何か?
- 3. 言語発達において、感覚と注目の関連性はどのようにあらわれるのか?
発達障害の子どもたちは、唇の動きと一致していない言葉にも注目をするという新しい研究が発表されました。
発達障害でない子どもたちは、唇の動きと一致していない言葉には注目をしません。
発達障害の人の中には、言葉を話し、理解するのが困難な人がいます。話すのに必要な口の動きがほとんど出来なかったり、全く話すことができない人もいます。
今回の新しい研究はこのような問題が、他の人が話しているときに目にする口の動きと声を結びつけることができない、もしくは口の動きにや声に注意することができないためであることを示唆しています。
米ブラウン大学の精神科医で助教授のジュリア・リギはこう言います。
「言葉を話す、理解するための基本的な能力が、どのように身につけられていくのかを理解する必要があります。」
発達障害と診断をされたかに関わらず、唇の動きと声の一致に注目する子どもたちは言語能力のテストで、そうでない子どもたちに比べて高いスコアを示すことがわかりました。
この研究に参加したケネディ・クリゲール研究所の発達障害センターのレベッカ・ランダもこう言います。
「発達障害の子どもたちの言語発達について理解を深めるための研究になります。」
平均年齢が5歳となる発達障害の子45人と平均年齢が3歳の発達障害でない子32人がこの研究に参加し、語彙、文章の構造、手紙を読む能力など早期の言語理解のスキルを測定する言語テストを行いました。
子どもたちの全員はまず、女性が話をしている唇の動きと言葉が一致しているビデオを見ます。
次に、唇の動きよりも、0.3秒、0.6秒、1秒と遅れて言葉が聞こえるビデオを見ました。
ジュリアと研究者たちは、目の動きを追跡する技術を使って、そのビデオを見ている子どもたちの目の動きを追跡します。
発達障害の子どもたちは、唇と言葉が一致しているビデオ、言葉が遅れて聴こえてくるビデオのどちらも同じように見ていました。
一方で、発達障害でない子どもたちは、言葉が遅れて聴こえてくるビデオを見続けていることはありませんでした。
また、発達障害の子どもたちは、そうでない子どもたちに比べて、ビデオを見続けている時間は短いものでした。
これは、発達障害の子どもたちは、そうでない子どもに比べて、感覚を手がかりにして注意を向けることが難しいことを示しています。
そして、発達障害の子は、そうでない子どもに比べると話している人の唇の動きを見る可能性は低く、むしろ見ないようにしていたとブラウン大学のエリーナ・タネンバウム研究員は伝えています。
発達障害でない子どもは、唇の動きに注意を払うことができるため、唇の動きと言葉が一致しているビデオを好むと考えられます。
年齢が高い子どもと、唇の動きと言葉が一致しているビデオを好む子どもは、言語テストのスコアは高くなりました。
また、ビデオに映っている女性の唇や目をよく見ていた子どもは、さらに言語テストのスコアは高いものとなっていました。
つまり、表情と言葉の一致により注目できることが、言語発達に関連することが示唆されています。
「口と目に注意できることが、言語学習を助けているのです。」
そうエリーナ研究員は言います。
しかし、ボストン大学の発達障害研究センター長のヘレン・テイガーフラスバーグはこの研究では明らかにできていない、他の言葉の発達メカニズムもあると考えています。
というのも、視覚障害や聴覚障害のために唇や目を見ることができない、言葉を聴くことができない、それでも言葉を学べている人がたくさんいるためです。
「私たちは、目が見えなくて、話者の唇や目を見ることができない人でも、言葉を話せることを知っています。」
今後の研究では、幼い段階で唇の動きと言葉の一致に注意できる子どもが、そうではなかった子どもに比べて、早く言語スキルを身につけるのかどうか。
そして、急激な心拍数の変化などの生理的現象を捉えて、発達障害の子どもたちが唇を見ない、顔を見ないのは、関心がないのか嫌っているためなのかを調べたいとしています。
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
うちの子も全く話すことができません。
しかし、「パパ、パパ」と言ってくれるときがあります。
とてもうれしいものです。
もう大きくなったので、難しいとは言われますし、そう思ってもいますが、いつの日かお話ができたらいいなと思っています。
(チャーリー)
iPhone/iPad AIアプリ「話すカメラのゲーム」親子でことば学び遊びができます。