- 発達障害の子どもや大人が社会でどのように活躍できるのか?
- 発達障害の人たちに適した職業や仕事環境はどのようなものか?
- 企業や組織は発達障害の人をどのように効率的に採用し、能力を発揮してもらうことができるのか?
大きなサイバー空間での犯罪のニュースが毎週のようにあります。
犯罪者たちは、より賢くプロフェッショナルになってきています。
国を守る上でもサイバー空間は重要になっています。
優れた人たちがサイバー空間での戦いに対応する必要があります。
しかし、優れた人たちを十分に獲得するのは簡単なことではありません。
オーストラリアの軍と民間人によって構成されるオーストラリア防衛組織(ADO)でも、その問題を抱えています。
そこで、ADOは革新的な民間企業の力を借りて、サイバー空間のセキュリティに必要な才能を新しいアプローチ「たんぽほ」プログラムで獲得しようとしています。
これまで社会的なやりとりに対する困難から、雇用されずに失業をしていた発達障害の人たちに活躍してもらおうとするものです。
ADOのパートナーとなった、DXCテクノロジー社がうまく物事を整理すれば発達障害の人たちが活躍できることをオーストラリアで実証しています。
「たんぽぽ」は価値ある植物であるにも関わらず、雑草とみなされてしまうことが少なくありません。
発達障害の人たちは、従来のような仕事の組織にあった人を見つけようとするやり方では、雑草のような目に止まらない存在であったかもしれません。
しかし、異なる採用のしかたをすることで、優秀な存在として発見できるのです。
DXC社は数多くの大学や専門家と協力することで、その「たんぽぽ」になぞらえたプログラムを開発しました。
オーストラリア軍には、それまで軍には適さないと思われていた10代の若者たちを採用して適切な機会や訓練を行うことで、活躍をさせてきた伝統があります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の人たちを採用するのも、この考え方に共通するところがあります。
人それぞれ異なる背景や、才能を効果的に組織でも発揮してもらおうと考えているのです。
発達障害の人たちの採用を始めたことで有名なのはイスラエルの国防省(IDF)です。
IDFの諜報部門であるユニット9900は、発達障害の人たちによって構成され主にスパイ衛星からの画像分析を行っています。
IDFでは、この発達障害の専門家たちは「衛星画像、地図の分析、理解について驚異的な能力を持っている」と伝えています。
つまり、競争が激しい他の人でもできる仕事ではなく、真の専門家の仕事なのです。
サイバーセキュリティに関わる分析についても、発達障害の優秀な人がいます。
発達障害の人たちの採用は、これまで行われていませんでした。
しかし、採用するのは合理的なことです。
自閉症スペクトラム障害の失業状態にある人たちにDXC社はテストを行いました。
いくつかの分野において、ずば抜けていることを発見しました。
しかし、特定の分野ではものすごくても、他の分野ではほとんどゼロに近いこともよくありました。
また、変わっているところもあります。
例えば、砂をポケットに入れて、舗装されているところよりも芝を歩きたい彼女は奇妙に見えるかもしれません。
しかし、彼女の分析についての才能は間違いないものです。
彼女は時間があれば、自宅でもどこでも、データの分類を行い、表を作成し、データの整理もします。
適切な環境が整えば、高度な業務もとても素晴らしく行います。
DXC社が彼女を見つけたときには、コンピュータ・サイエンスの分野で学校を卒業することが難しい状態でした。それは、彼女ができなかったからではありません。彼女には簡単すぎて興味がなくなっていたためでした。
自閉症スペクトラム障害の人たちの多くにとって、従来の「面接」は難しいものとなります。
そのために、「たんぽぽ」プログラムでは評価方法を変更しました。
面接は行いません。
長期間の「ハングアウト」と「トライアウト」で、面接よりも正確に能力を判断する機会を設けています。
ラ・トローブ大学のオルガテニソン自閉症研究センターがDXC社やオーストラリア防衛組織と協力して、サイバーセキュリティに関して必要な評価方法を考えました。
発達障害の人たちは「たんぽぽ」チームとなって、発達障害についての専門医を含むサポートがあるなかで、DXC社の中で仕事を行うための準備となる特別プログラムに取り組みます。
そこでの取り組みについて追跡調査が行われていきます。
まだ始まったばかりですが、これまでのところ成果が出ています。
発達障害の人たちは、サイバーセキュリティに関わる分析分野で優れた仕事をしています。
とても勤勉です。それどころか休憩をとることが困難です。
発達障害の人たちは、他の人たちが見つけることのできなかった、パターンなどを発見することができます。
「変化」を嫌うことが、それができる理由の一つだと考えられています。
そして、仕事を辞めてしまう率もとても低くなっています。
ラ・トローブ大学では、たんぽぽプログラムに参加している発達障害の人たちの生活の質が、大幅によくなっていることも確認しています。
公的な援助を必要としていた人たちが、そのように変わっていくことは国や社会にとっても大きな利益となります。
DXCにより委託されたコンサルティング会社は、限定的な実施となっているこの「たんぽぽ」プログラムでも、国に何億ドルも利益をもたらすと試算しています。
失業状態にあった発達障害の人たちが、このようにオーストラリア防衛組織(ADO)の諜報のデータ分析などの分野で活躍している事実から、「たんぽぽ」プログラムのプロジェクトで行われている、面接を行わない、評価・採用の方法は人の才能を見出すものとして、とても有望だといえるでしょう。
(出典:米Harvard Business Review)(画像:Pixabay)
とんがっている人はさらに求められていくはずです。
とんがっていることがもっともっと、発見され、認められ、ますます活躍の機会が広がっていくことを期待しています。
秘密諜報機関が発達障害者の力に目をつける
(チャーリー)