- 発達障害の人の知覚能力はそうでない人たちと比べてどう違うのか?
- 発達障害の人が処理能力を余らせることでどんな問題が起こる可能性があるのか?
- 発達障害の人が持つ能力をどのように活かしてサポートすればいいのか?
公園で、人がグループになって話をしています。
ひとりだけ離れて、アイスクリームを売っている屋台の車が気になっています。
この離れている人は、発達障害の人です。
壁の中からする電気回路の音も聞こえます。まわりの騒がしさでパニックを起こしてしまうこともあります。
認知科学についての国際的な研究論文誌のCognitionに最近掲載された論文では、自閉症スペクトラムの人は、多くのそうでない人たちよりも、音を良く聴くことができると伝えています。
ここ数年、発達障害の人の感覚体験は異なっているという認識が高まってきました。
明らかになっていることは、違っているということであって、悪いということではありません。
発達障害の人がそうでない人よりも、視覚、聴覚が優れているという報告が多くされています。
例えば、発達障害の人はそうでない人に比べて、非自閉症者と比較して、動画の中から誤りを発見したり、絶対音感をもっている可能性が高いとのことです。
このように報告されるのは、発達障害の人の知覚能力が高いことが背景にあります。
発達障害の人は知覚能力が高いため、一度に多くの情報を処理することができます。
この能力が、状況によって役に立ったり、問題になったりします。
例えば、複雑な絵を模写しようとした場合には、できるだけ効率的に多くの情報を取り込む必要があります。
一方で、誰かと話をしているときのような、たくさんの情報を必要としない場合には、余っている処理能力が部屋に見える他のものごとから情報を得ようとします。
そうして、何かしようとしている時に邪魔されて行えなくなったり、たくさんの感覚でパニックになったりします。
この理論を検証するため、英UCLの研究では、発達障害の人とそうでない人の2つのグループにパソコンを使ったテストを行いました。
最初のテストでは、知覚能力が優れた人が有利になる、聴いたものを探すテストです。
テストの参加者は、曲の演奏中に動物の鳴き声を聞かされます。
犬の鳴き声だったか、ライオンの鳴き声だったかを選びます。
そして、実は鳴き声だけでなく、車の音も混じっています。
テストの半分は鳴き声ではなく、車の音を聞かされていました。
発達障害の人は、そうでない人たちよりも、車の音であることを判別し、鳴き声についても、犬かライオンかを正しく当てました。
2番めのテストでは、パーティ会場での人のおしゃべりを録音したものを聴きます。
その中の女性たちの会話の内容から最後に質問を行うので、集中してほしいというものです。
このテストでは、処理能力が余っていると必要のない情報に気をとられてしまって正しく答えるのが難しくなります。
そして、このテストにも、予期していないおかしなことが追加してあります。
パーティー会場には、私はゴリラです。と繰り返し言いながら歩く男が出現します。
予想されたとおりに、発達障害の人のグループの47%がゴリラ男に気づきました。
そうでない人のグループで、ゴリラ男に気づいたのは12%でした。
これらの2つのテストから、発達障害の人の気づく能力は、あり余っている処理能力に関係があるといえそうです。
無関係な情報を除外することができないということではありません。
この理解は、パニックになりそうな発達障害の人を助ける方法を変えるものになります。
パニックになりそうになっている場合には、発達障害の人の余っている処理能力を、情報で満たす必要があるということです。
例えば、本を読んでいる間には音楽を聞くのが役に立つかもしれません。
これは、発達障害の子が学習する場合には、その学習環境をなるべくシンプルに、余計なものをなくすべきという、これまでの共通認識に異議をとなえるものといえます。
もちろん、受け取る情報が多すぎないように注意は必要です。
この研究は、発達障害の人がかかえる問題を軽視するものではありません。
発達障害の人がもつポジティブな面も確認しようとするものです。
発達障害への理解を深めることによって、多様性を受け入れることをすすめ、発達障害をネガティブに捉えるこれまでの考え方をなくしたいと考えるものです。
(出典:英INDEPENDENT)(画像:Pixabay)
人それぞれ、みんな能力があるのだと思います。
簡単なことではありませんが、そういった能力が花開くように、人の目を向けるこのような研究はどんどん発表されていってほしいと思います。
人類進化において発達障害の人は重要だった
(チャーリー)