- 自閉症の人がどのようにして自分を表現する手段を見つけることができるのか?
- 自閉症の子供や大人が人混みや予測できない状況でどのような不安を感じるのか?
- 発達障害をもつ人が自分の才能を見つけ、それを仕事にする方法はあるのか?
おしゃべりをしたりして騒がしい人だかりにアーロン・ターニーの不安は強くなります。
人混みに出会ってしまうことよりも、自然の木樹の間で写真を撮っている方が好きです。
アーロンは21歳。自閉症です。まわりとの言葉を使っても使わなくてもコミュニケーションすることが苦手です。反復行動もあります。
見知らぬ人と話をしたりすることはとても困難だと、父親のジム・ターニーが言います。
人や動物の動きや反応は予測することができません。
それはアーロンにとっては不安をもたらすものになります。
写真家としてのアーロンの才能は、発達障害のアーティスト展示会「ユニーク・パースペクティブ」に飾られた写真に発揮されています。
この展示会には、発達障害をもつ人たちの陶器、グラフィックデザイン、水彩画、アクリル絵画などが飾られています。
アーロンの写真には、緑の草の中で育つ黄色いデイジーが写っています。
その花は曇っている夏の日のやわらかな日差しに照らされています。
別の写真では、斑点の付いたきのこが、ぼろぼろになった丸太から飛び出たように写っています。
アメリカ全国の300万人を超える人に発達障害があるといわれています。
米疾病管理予防センターによると、毎年そのように診断される子どもの数は増加しています。
2014年には、68人の子供のうち1人が自閉症スペクトラム障害診断を受けています。
1991年には500人に1人でした。
増加については確かな説明はありませんが、自閉症への診断方法の変化が大きな要因である可能性があります。
見知らぬ人と発達障害と写真への情熱について話すことは、アーロンには不安でいっぱいになることでした。
しかし、アーロンは自らの話をすることで、創造性と発達障害について知ってほしいとインタビューに答えました。
「写真を撮るのは大変ですが、面白いです。」
写真は自分の代わりに人に伝えてくれるものだとアーロンは言います。
そして苦労をしながら、写真への情熱を伝えてくれます。
アーロンの不安が高まって、手をいじったり、たたき始めたりすると父親がやさしく腕をつかんでリラックスさせます。
写真のどこがお気に入りかを質問すると、アーロンは笑顔になりました。そしてそれぞれの写真の構図や光の当たり方について説明をしてくれました。
「黄色い花のこの光の当たり方は、簡単に撮れるものではありません。
たまたま、その時だから撮れました。
曇っている時に、光が差し込んできたのです。」
別のお気に入りの写真は、霧に包まれた場所から撮影したものです。
もう一つは、輝く晴れた日に撮った、色が落ちてきた牧草地の景色です。
どちらも、光の当たり方と正しい構図がわかっていないと撮れないとアーロンが言います。
「みんなは、雪に覆われた山の写真がいいと言います。
僕はこっちの写真の方が好きです。色が綺麗だから。」
アーロンの写真への情熱は、数年前にスマホで写真を撮ることから始まりました。
アーロンは喜んで、家族やペット、家の中、家のまわり、見るもの全てを写真に撮りました。
両親はアーロンの写真を見て、アーロンが情熱をもてるものを見つけたのがわかりました。
アーロンに学校での写真のクラスについて教えると、アーロンは情熱をもってそのクラスに9月に入学しました。
そのクラスは、米ウィスコンシン大学の教育学科に設置されています。
多くの人が写真を撮り、楽しんでいます。
しかし全ての人が、写真家になれる目を持っているわけではありません。
アーロンの写真の先生、スコット・サベージが言います。
スコットはプロの写真家で、ウィスコンシン大学で10年間教えています。
「アーロンは、その目を持っています。
彼は基礎から学んで、構図、ライティング、対象についての理解ができています。
それらが一体となった時、素晴らしい写真が撮れるのです。」
写真は、アーロンが人に自分を伝えるための表現方法です。
そして、それは仕事をする機会にもつながっていると父親が言います。
アーロンは、不動産会社で住宅の写真撮影のパートタイムの仕事も行っています。
「本当にそれは素晴らしいことです。」
どこの親とも同じで、両親はアーロンにフルタイムの仕事について、幸せに過ごしていってほしいと願っています。
たくさんの発達障害の人がいて、このようなアート展示会で発達障害の啓蒙が行われています。
展示会では、発達障害の人がもつ創造性も伝えます。
「自慢の息子です。」
アーロンの父親が言います。
アーロンの写真は静かな自然を撮ったものですが、建築物の写真を撮ることも楽しんでいます。
「建物の細部が好きなんです。」
インタビューを終えると、アーロンは外を歩いて展示会が行われているセンターの隣のビルの外観を写真に撮りました。
アーロンはいろいろなアングルで構図を考えながら、言います。
「きっとうまく撮れるはず。できる。
とても綺麗な歴史的なビル。これを写真に撮りたい。」
(出典・画像:Wausau Daily Herald)
私も外に出ていて、いい空、いい雲、水面に反射する綺麗な日差し、そういうのを目にするとぱっとスマホで写真を撮ります。
本当に便利だと思います。子どもの頃はフィルムでしたし、カメラを手にできる機会もありませんでした。
身近になって、その人の可能性を広げるなんて本当に素晴らしい技術の進歩です。
素晴らしい写真をどんどん撮って見せて頂きたいですね。
こちらの少年も写真家でした。
ナショナル・ジオグラフィックが選んだ男の子
(チャーリー)