- 発達障害の子どもは他人とのやりとりに興味があるのか?
- 発達障害の子どもは他人とのやりとりを嫌いなのか?
- どのような療育方法が発達障害の子どもに適しているのか?
幼児と大人の間の「遊び期」は、長年に渡る疑問「発達障害の子どもはまわりとのやりとりに興味があるのか?」について解明がしやすい時期かもしれません。
米サンディエゴで行われている2016年神経科学学会年次総会にて、研究者による発表がありました。
「どうして発達障害の子どもがまわりとのやりとりに困難を抱えるのかについて、2つの仮説があります。」
南カリフォルニア大学の助教、バーバラ・トンプソンが言います。
ひとつは、発達障害の子どもはまわりとのやりとりに興味がない。
もうひとつは、まわりとのやりとりが嫌い。
典型的な発達をしている子どもであっても、内面の欲求と動機について明らかにすることはできません。
そのため、どちらなのか解明することはとても難しいことです。
発達障害の子どもであれば、なおさらです。コミュニケーションすることから難しいのです。
それを打破するために、研究者たちはお城を作りました。
2メートルほどの高さの灰色の偽の石でできた壁ととんがった塔をもつお城を研究室の中に作りました。
テレビ番組でセットを作っていたセットデザイナーが作りました。
お城の中には、おもちゃでいっぱいになった2つの部屋があります。
色が違うだけの部屋です。緑とオレンジ。
およそ30分間の間、子どもたちは、大人たちに一緒におもちゃで遊ぼうと呼ばれて一つの部屋で遊びます。
「こっちに来て、キングコングが壊したくなるようなタワーをブロックで作ろうよ。」
そして子どもを喜ばせます。
もう片方の部屋では、全く同じようにおもちゃが置いてありますが、誰もいません。
この観察実験のもとになっている考えは、「パブロフの犬」にまでさかのぼる「条件付け」と呼ばれているものです。
そしてこの観察方法は、ねずみの研究を参考にしたものです。
条件付けがされてから、大人たちはいなくなります。
そして研究者たちは、子どもたちがそれぞれの部屋にどれくらいの時間過ごしていたか観察します。
これまで、典型的な発達をしている2歳から5歳までの子どもたちで観察実験を行ってきました。
その子どもたちは、条件付けをされた部屋には、条件づけされる前に比べて、4倍長い時間を過ごしていました。
典型的な発達をしている子どもたちは、まわりとやりとりをすることはとても得をする、好ましいことだと認識しているのを、この結果は示しています。
研究者たちは、この観察実験を発達障害の子どもたちにも行えば、発達障害の子どもたちのまわりとのやりとりへの関心について理解ができるはずと考えました。
条件付け後に、
子どもが誰もいない部屋を選べば、それはその子どもがまわりとのやりとりを「嫌っている」と考えられます。
どちらの部屋でも、同じくらいの時間をすごすのであれば、まわりとのやりとりに「関心がない」と考えられます。
トンプソンと研究者たちは、発達障害の幼児と就学前児童で観察を始めました。結果はまだこれからです。
研究者たちは、長年の疑問について答えるために、このお城での発達障害の子どもたちの振る舞いを分析する予定です。
まわりとのやりとりが嫌いなのか、関心がないのか、どちらなのかわかれば、発達障害の子どもたちへの対応方法を決めるのに役立つガイドになるはずです。
まわりとのやりとりに恐怖や不安を感じ、それに打ち勝とうとしている子どもには、まわりとあわせる必要がある子どもが行っている療育方法とは別の療育方法が求められるはずです。
どちらかがわかれば、それを利用できる場面はたくさんあります。
バーチャル・リアリティを使って、利用していくのがベストだとトンプソンは言います。
結局のところ、誰もがお城のセットを作れるわけではないので。
(出典・画像:SPECTRUM)
まわりとのやりとりを苦手とする発達障害の子は、まわりとのやりとりが嫌い、苦手なのか?
それとも興味がないのか?
深く考えたことはなかったのですが、たしかに受けるべき療育方法に関わりそうです。
ただ、結局のところ、
同じ人であっても、ある相手によっては嫌い、ある相手には関心がないと、相手次第な感じがしますし、
そもそも、発達障害者それぞれも同じ思考をするわけでもありません。
なので興味は惹きますが、「発達障害児は、まわりとのやりとりについて、○○○だ。」
という命題のような、ステレオタイプ的な単純な判断は、あまり役に立たないだろうと思います。
研究論文ではもっと、細かい条件分けとそれに対する傾向が発表されるとは思いますが。
観察実験ではこんなものもありました。
発達障害だから共感しない。それは違う
(チャーリー)