
- 代替治療が本当に効果があるのか、どうやって判断すればいいのか?
- 信頼できる医療機関や専門家を見つけるにはどうすればいいのか?
- 未証明の治療法に対するリスクを最小限にするためには、どのような情報を収集すればいいのか?
アメリカ・ミシガン州ロイヤルオークに住むトーマス・クーパー(5歳)は、ADHD(注意欠如・多動症)と睡眠時無呼吸症候群の代替治療を受けている最中に命を落としました。
彼の両親は、デトロイト郊外のトロイにある「オックスフォードセンター」で高気圧酸素療法(HBOT)を受けさせていました。
しかし、1月31日、トーマスが治療を受けていた加圧酸素チャンバーが爆発し、彼は死亡しました。
ミシガン州警察によると、この事故に関与した4人が起訴されています。
この事件は衝撃的であり、まれなものです。
しかし、ADHDや自閉症に対する「代替治療」の拡大という問題に注目させます。
この傾向はアメリカだけでなく、イギリスでも見られます。
ADHDと自閉症は、ともに神経の働きの違い(ニューロダイバージェンス)によるもので、症状が重なることもあります。
イギリスの慈善団体は、ADHDや自閉症の当事者やその家族が、未証明で潜在的に危険な治療法を売り込む業者のターゲットにされていると警告しています。
とくに、イギリスではNHS(国民保健サービス)の診断や支援を受けるまでに何年も待たなければならないことがあります。
そのため、焦りや不安から、別の手段を探してしまう人もいるのです。
ADHD支援団体「ADHD UK」の共同創設者であり代表のヘンリー・シェルフォードはこう指摘します。
「診断までに非常に長い待ち時間があり、さらに薬を使った治療を希望する場合は二次的な待機期間が発生することもあります。
しかも、多くの場合、選択肢はADHD治療薬を服用するか、治療を諦めるかの二択しかないのです。
他に有効な選択肢が提示されないため、人々は別の方法を探し始めるのです」
とくにインターネットやSNSでは、こうした「代替治療」を売り込む業者が後を絶ちません。
シェルフォードによると、ADHD UKのSNSコミュニティにも、このような業者が「魔法のようなサプリメント」を宣伝しようと頻繁に侵入してくるそうです。
実際のところ、ADHDや自閉症に「治療法」は存在しません。
しかし、それでも「効果がある」とされる様々なサプリメントや製品が販売されています。
その例として、特定の栄養補助食品やクコの実(ゴジベリー)、大麻成分のカンナビジオール(CBD)などが挙げられます。
また、「ライオンのたてがみ」と呼ばれるキノコの一種もADHDに効くと宣伝されることがありますが、専門家はその効果を示す十分な証拠がないと警告しています。
「世界中の業者がSNSグループに入り込み、こうした『治療法』を売ろうとしています。
私たちの団体では、こうした詐欺的な広告を防ぐために監視を続けています」
未証明の代替療法には、さまざまなリスクがあります。
たとえば、出所の分からない製品を購入することで、実際に何が含まれているのか分からないという問題があります。
さらに、ADHDの成人は自殺を試みる可能性が高いという研究結果もあります。
「適切な支援を受ける代わりに、何の効果もないものを服用してしまえば、結果的に命に関わる危険もある」
NHSやイギリスの「全国自閉症協会」も、特定の「治療法」が偽物である、または危険であると警告しています。
その例として、以下のようなものがあります。
GcMAF:血液由来の未承認の注射薬
漂白剤(塩素二酸化物)を使った治療
「CEASE療法」(ワクチン接種を避け、大量の栄養補助食品の摂取を推奨する)
NHSはまた、高気圧酸素療法(HBOT)についても、自閉症の治療には推奨されないと明言しています。
今回の事件のように、HBOTがADHDや自閉症の人向けに販売されている例はイギリスでは確認されていません。
しかし、専門家たちは、こうした未承証の「治療」が広がっていることを懸念しています。
ある精神科医は「私たちは、このような傾向がますます強まっていると感じています」と語ります。
「問題は、推奨される治療を実施するためのスタッフが足りないことです。
その結果、ランダム化比較試験(RCT)を経ていない薬物が広告される状況になっています」
こうした「治療」には、違法に輸入された薬だけでなく、植物由来の抽出物や食品サプリメントなど、規制が緩いものも含まれます。たとえば、カフェインもADHDの「治療」として売られることがありますが、過剰摂取すると危険です。
これらの製品はネットだけでなく、一部の電子タバコ店などでも販売されています。
また、一部の民間クリニックでは、NICE(国立医療技術評価機構)のガイドラインに沿っていない治療を提供していることもあるのです。
「こうした製品は、実際に使った人の『体験談』だけを根拠に販売されています。
すべてが完全なデタラメとは言いませんが、多くは『ニセの万能薬』のようなものです」と精神科医は指摘します。
「長期間待機リストに載っていた人が、焦りや絶望から安全性が不明なものを購入し、摂取してしまうリスクは非常に大きいのです」
自閉症支援団体も、Facebookグループなどで「怪しげな治療法」が広告されているのを頻繁に目にしていると話します。
昨年、ロンドン警視庁は、自閉症の子ども向けに幹細胞注射を「治療」として提供していた業者を捜査しました。
ロンドン南東部のグリニッジ区では、「自称医師」が渡英し、危険な実験的治療を子どもに施そうとしているとの情報を受け、地元の学校や保育施設に警告を出しました。
自閉症支援団体「Ambitious about Autism」のCEO、ジョランタ・ラソタは「脆弱な親たちは、危険な偽の治療法を売り込むオンライン詐欺の標的にされています」と警告します。
「自閉症は病気ではないため、『治癒』という考えは存在しません」
(出典:英Telegraph)(画像:たーとるうぃず)
深刻に悩んだ時こそ、正しい医療機関の正しい医療を頼ってください。
(チャーリー)