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知的障害の人と共に進めるロボット開発。技術研究に関わる意義

time 2025/03/18

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

知的障害の人と共に進めるロボット開発。技術研究に関わる意義
  • 知的障害を持つ人々が技術開発に参加することで、どのようなメリットが得られるのか?
  • 社会ロボットは、障害を持つ人々の日常生活にどのように役立つのか?
  • 障害を持つ人が研究者として認められるために、どのような課題があるのか?

オーストラリアで、社会ロボットを使い、知的障害を持つ人々が技術の開発に積極的に参加する研究が行われています。
この研究の中心となったのが、知的障害を持つ女性、クロエです。
彼女は研究への参加を通して、単なる参加者から、技術の共同設計者、さらには共同研究者へと成長しました。

これまで、障害をもつ人向けの技術開発というと、開発者が一方的に問題を見つけ、それを解決するという方法が主流でした。
しかし最近では、障害を持つ人自身が設計のプロセスに参加し、自分たちが必要としているものを直接伝えながら開発に関わる「インクルーシブ(包括的)な設計」の考え方が広まっています。
このようなアプローチを使うことで、本当に使いやすく、生活をより良くする技術が生まれることが分かってきました。

クロエが参加した研究チームは、オーストラリアのクイーンズランド工科大学(QUT)と、障害者支援団体のエンデバー財団という組織の協力によって作られました。
このチームは、社会ロボット(人と交流できるロボット)やモバイルアプリ、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)など、さまざまな最新技術を、知的障害のある人が使いやすいように改良する研究を続けています。

クロエは2019年に初めて社会ロボット「ペッパー」に出会いました。
当時、彼女が通うエンデバー財団の学習施設に研究チームが訪れ、ペッパーを使った健康や運動に関するワークショップを開いたのが始まりです。
クロエは最初、ロボットとの出会いにとても興奮したと語っています。

「ロボットを実際に見たり触ったりして、とても楽しかった。
あんなロボットは初めてだったから」

以降、彼女はロボットやスマホアプリなど、様々な技術に触れる研究に定期的に参加し、自分の意見を積極的に伝えるようになりました。
クロエがとくに印象に残ったと感じているのは、自分自身が新しいことに挑戦し、自立して生活する目標に向けて前進できたことでした。

「新しいロボットやテクノロジーに触れることで、いろんな可能性を感じました。
ペッパーがあれば、一人暮らしもできるんじゃないかな、と思えたんです」

クロエは、自分だけでなく他の知的障害を持つ人たちが、技術によって自信を持ち、自立した生活ができるようになることを願っています。
実際にクロエは、自分の体験をもとに施設内で手話(オースラン)の講師として活動を始めました。

「私ができることを見て、他の人も『自分もできるかもしれない』と思えるようにしたいんです」

実際に、彼女の影響を受けて新しい活動を始める人も増えています。
クロエは、とくに社会ロボットが障害のある人にとって有効であると考えています。

なぜなら、ロボットは単に物理的な手伝いをするだけでなく、心理的なサポートや励ましも提供してくれるからです。たとえば彼女は、ロボットが健康管理を手伝ってくれる仕組みを提案しています。
ロボットが適切なタイミングで休憩を促したり、健康状態をモニターして、問題が起こったら早めに本人や周囲に知らせたりすることで、障害を持つ人が安心して生活できるようになるのではないか、と考えています。
こう言います。

「お年寄りにもペッパーはとても役立つと思います。
高齢の祖母も興味津々なんですよ。
動くのが難しい人にとっても、ロボットは家の中の手助けや話し相手としてすごく役立つと思います」

ロボットがただ仕事をするだけではなく、人々の心の支えになれることが重要なのだと彼女は強調しています。

研究者側も、クロエのような人々が研究に参加し、その経験を積むことで、自分たちが気づけなかった視点やアイデアが得られることを実感しています。
クロエのように、当事者が直接研究に関わることで、本当に必要なものが見えてくると考えています。

しかし、障害を持つ人が研究者になるには、多くの障壁があります。
たとえば、研究成果の発表に名前が載ることや、研究計画の段階から意見を出すことが難しいケースも少なくありません。
そのため、クロエのような共同研究者が学術的に認められ、正式な研究者として認められる仕組み作りが今後の課題となります。

このような研究のあり方は、技術が単なる便利さを超え、真の意味で「誰もが暮らしやすい社会」を作るための道筋になるでしょう。クロエの経験は、技術開発が「障害をもつ人のため」から、「障害を持つ人とともに進める」ものへと変わっていく大切な一歩です。これからの社会は、こうした考え方を積極的に取り入れ、障害の有無を超えて人々が一緒に未来を作り上げていく姿が求められるのではないでしょうか。

クロエ自身も、「これからもいろんな技術を試して、みんなの役に立つことを考えたい」と話しており、彼女の今後の活躍が期待されます。

(出典:The 26th International ACM SIGACCESS Conference on Computers and Accessibility)(画像:たーとるうぃず)

素晴らしく、うれしい、時代と研究の流れです。

ますますそうなることを期待しています。

自閉症・知的障害の支援にソーシャルロボットの可能性。研究

(チャーリー)


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