
- 妊娠中の食生活を改善することで、発達障害のリスクを減少させることは可能ですか?
- 西洋型の食事が子どものADHDや自閉症に与える影響は具体的にどのようなものですか?
- 妊娠中の栄養管理において、どのような食材が特に重要ですか?
デンマークで行われた最新の研究によると、妊娠中の母親の食生活が子どもの脳の発達に影響し、ADHD(注意欠如・多動性障害)や自閉症などの発達障害のリスクを高める可能性があることが明らかになりました。
とくに、脂肪や砂糖が多く、新鮮な食材が少ない「西洋型の食事」をとることで、こうしたリスクが高まることが指摘されています。研究者は、妊娠中の食事改善によって発達障害のリスクを減らす可能性があると期待しています。
喫煙や飲酒、不健康な食生活が胎児の発達に悪影響を与えることは以前から知られていますが、今回の研究は、母親の食事が子どものADHDや自閉症にどのように関係するかを詳しく調査しました。
この研究では、デンマークとアメリカで行われた4つの大規模な研究グループのデータを分析しました。
具体的には、食生活に関する記録、血液分析、遺伝情報、臨床診断を組み合わせて、西洋型の食事がADHDや自閉症リスクと関連するかを調べました。
分析された4つの研究グループは以下の通りです。
– COPSAC2010(デンマーク、母子508組):主な研究グループで、子どもが10歳の時点で詳細な神経発達評価を実施。母子の血液を5回採取し、代謝物を分析。
– デンマーク全国出生コホート(DNBC、デンマーク、母子59,725組):食事パターンとADHD診断との関連性を大規模なデータで検証。
– VDAART(アメリカ、母子656組):妊娠中および子どもの血液の代謝物とADHDの関連性を検証。
– COPSAC2000(デンマーク、母子348組):胎児の血液から西洋型の食事パターンの代謝物を特定し、ADHD症状との関連を検証。
研究を主導したデービッド・ホーナー博士は「妊娠中に脂肪分や糖分、加工食品を多く摂り、魚や野菜、果物をあまり食べない西洋型の食生活をしているほど、子どもがADHDや自閉症になるリスクが高まる」と述べています。
分析の結果、少しでも西洋型の食事に近づくと、ADHDのリスクが66%、自閉症のリスクは122%も上昇することがわかりました。
とくに妊娠初期から中期(妊娠1~2期)に西洋型の食事を取ることが最もリスクを高めることが判明しました。
研究では、母親の血液から「メタボロミクス」という方法で43種類の物質(代謝物)を特定しました。
メタボロミクスとは、生物の体内に存在する多数の代謝物(生命活動の中で生成される物質)を一斉に分析することで、体内の状態や健康に関する重要な手がかりを得る手法です。
この方法で特定された代謝物のうち、15種類はとくにADHDとの関係が強いことがわかりました。
これらの代謝物は主に食事に由来し、脳の発達に重要な炎症や酸化ストレスの調整に関わっています。
ただし、この研究は観察研究であるため、西洋型の食事が直接的にADHDや自閉症を引き起こすことを証明するものではありません。
また、食事情報が自己申告であることや、遺伝や生活習慣(BMI、喫煙、抗生物質の使用など)も影響を与える可能性があるため、他の要因を完全には排除できないことも指摘されています。
研究チームは、今回の結果を受けて、妊婦向けの食事ガイドラインを見直し、子どもの健康を守るための新たな方法が開ける可能性があると期待しています。
(出典:デンマーク・コペンハーゲン大学)(画像:たーとるうぃず)
「妊娠中に脂肪分や糖分、加工食品を多く摂り、魚や野菜、果物をあまり食べない西洋型の食生活をしているほど、子どもがADHDや自閉症になるリスクが高まる」
ということですが、
「この研究は観察研究であるため、西洋型の食事が直接的にADHDや自閉症を引き起こすことを証明するものではありません」
であることにご留意ください。
(チャーリー)