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自閉症と診断される人の増加は女性が見過ごされてきたため

time 2025/02/25

この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

自閉症と診断される人の増加は女性が見過ごされてきたため
  • 自閉症についてどのように正しい情報を得ればよいのか?
  • 自分自身や家族が自閉症の特性を理解するためには何が重要なのか?
  • 診断を受けることで何を期待できるのか?

「自閉症」という言葉を耳にする機会が急激に増えました。
\これは、SNSやポッドキャスト、さまざまなインフルエンサーを通じて情報が発信され、以前よりも多くの人々が自閉症について知り、診断を受けるようになったためです。
実際、最新の調査によれば米国では現在、36人に1人の子供が自閉症の診断を受け、過去10年以上で診断件数は175%も増加しているというデータがあります。
とくに、女性や女児への診断が目立ち、また男性よりも診断される時期が遅れる傾向があることも分かってきました。

自閉症は、神経発達障害の一種であり、主に「コミュニケーション」「学習」「行動」に影響を及ぼします。
すなわち、日常生活における人との関わり方や情報の受け取り方、さらには学習や習慣の面で通常と異なる傾向が見られる障害です。

診断の基準は、精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)という世界共通のガイドラインに基づいています。
1994年のDSM-IVでは、自閉症を複数のタイプに分類していましたが、2013年に発表されたDSM-5では、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」というひとつの総称に統一されました。
この背景には、自閉症が持つ症状や程度が個々人で大きく異なることを踏まえ、診断をより柔軟に行う必要があったためです。

自閉症の診断の核となるのは、社会的相互作用やコミュニケーションの違いです。具体的には、幼児期から現れる行動のパターンや反応、たとえば友達との関わり方や、感覚過敏といった特徴が指摘されます。
アメリカ小児科学会(AAP)は、18か月と24か月の健康診断の際に全ての子どもに対して自閉症のスクリーニングを推奨しており、早期発見・早期介入が強く求められています。

自閉症の原因については、未だに「これが原因」と特定できるものはなく、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
近年の研究では、脳の構造や機能の違い、遺伝子の変異や変化、また出産時の合併症や母体の健康状態など、さまざまな要素がリスクに影響を与える可能性が指摘されています。

とくに遺伝的な要因の影響は大きく、双子研究では、一卵性双生児で両方が自閉症と診断される確率が非常に高い一方、二卵性双生児ではその確率が半分程度に下がることが報告されています。
また、すでに自閉症の子どもがいる場合、次の子どもが自閉症になるリスクが上昇するともされています。
ただし、こうした数字は、家族構成や子どもの数にも影響されるため、一概には言えない面もあります。

また、近年は「遺伝的素因」と「環境要因」が複合的に作用するという考え方も広がっています。
たとえば、遺伝的に自閉症のリスクを持っている子どもが、胎内で有害物質にさらされた場合、症状が顕在化しやすくなるといった仮説が検証されています。
ワクチンとの関連が取りざたされることもありましたが、多くの厳密な疫学的研究により、ワクチンと自閉症の因果関係は否定されています。

自閉症はこれまで、男性に多く見られるとされ、診断基準や評価ツールも主に男児を対象に開発されてきました。
しかし、近年、女性や成人女性の自閉症が注目されるようになったのは、実際には診断技術の進歩と社会意識の変化によるものです。

専門家によれば、診断率の増加は「自閉症の実際の発生件数が急増した」というよりも、これまで見過ごされていた女性や大人の自閉症の症状が、より正確に捉えられるようになった結果です。
従来の診断ツールは、言葉の発達が遅れていたり、明らかな行動の違いを示す男児を基準にしていたため、言語能力が高く、社会的に「マスク」をかぶって適応してきた女児の特徴を十分に評価できていなかったという指摘があります。

たとえば、女児は男児に比べ、より「言葉でのコミュニケーション」を重視する傾向があり、同年代の子どもと同じように見せるために、自分の本来の反応や感覚を隠してしまう「マスキング」という行動を取ることが多いのです。
このため、周囲からは「普通に見える」と判断され、診断が遅れる場合があるといわれています。

また、女性は一般的に心の健康に対して敏感であり、不安やうつといった他の精神的な問題と併発することも多いため、最初にこれらの症状で病院を訪れ、自閉症そのものが見逃されてしまうことも原因の一つと考えられます。
実際、診断を受けた大人の女性の中には、子どもの頃から感じていた「なぜ自分は周囲と違うのか」という疑問が、適切な診断を受けることで初めて理解できたという声も少なくありません。

成人女性が自閉症の診断を受ける場合、その背景には長い間、自分自身の行動や感覚の違いに対する混乱や孤独感、さらには社会的な不安が重なっていることが多いです。
たとえば、些細な予定変更でも大きなストレスを感じ、理由も分からず「イライラ」が募るというケースがあります。
これは、自閉症の方が「日常のルーティン」や「一定のパターン」に依存する傾向が強いためであり、突然の変化が大きな心理的負担となるのです。

また、自閉症の女性は、他人との関係を築く際に多くのエネルギーを費やすことが知られています。
彼女たちは、周囲の人がどのように振る舞っているのかを注意深く観察し、あたかも演技のように振る舞うことで、社会に適応しようとします。
しかし、この「マスキング」は非常に疲弊する行為であり、結果として自己肯定感の低下や、うつ状態、さらには摂食障害や自殺リスクの増加といった深刻な問題につながる可能性があります。

診断が遅れることにより、これまで自分自身の感覚や行動が「性格の一部」として固定化してしまい、自分の本当の姿を理解する機会を逸してしまうケースも多いです。
自閉症の診断を受けた後、初めて「これは自分が持っている特性であり、決して自分が欠陥であるわけではない」と気付く方もおり、それが自己理解や自己肯定へとつながる重要な転機となっています。

自閉症の診断プロセスは、決して一筋縄ではいきません。
現在、診断は精神科医、臨床心理士、または神経心理学の専門家などが行いますが、その評価方法は多岐にわたります。
評価の手法としては、標準化された臨床面接や保護者への聞き取り、さらには観察による評価などが用いられますが、これらのツール自体もかつては主に男児を対象に開発されたため、女性の症状に十分に対応していなかったという歴史があります。

実際、古い診断ツールでは「言葉をあまり使わない」「明らかな行動の違いが見られる」という特徴が重視される傾向にありました。
そのため、言語能力が高く、日常生活では周囲に合わせるための努力をしてきた女児や成人女性が見逃されることがあったのです。
近年、こうした背景を踏まえて、診断ツールの改良や専門家自身の経験の蓄積により、女性の自閉症に対する理解が深まりつつあります。

一方で、SNS上では「#autism」といったハッシュタグが数十億回以上も閲覧されるなど、情報の拡散が急速に進んでいます。
しかし、その中には正確な情報だけでなく、誤解を招く内容も混在しているのが現状です。
診断を受けようと考える人々は、情報の真偽を見極めるために、信頼できる医療機関や専門家に相談することが重要です。

自閉症は決して一律のものではなく、症状の現れ方や程度は個々人で大きく異なります。
診断を受けることは、単に「障害」としてレッテルを貼られるだけではなく、これまで自分が抱えてきた違和感や困難を理解するための大きな一歩となります。
正確な診断を受けることで、自分に合った支援や治療、そして日常生活の中での工夫が見えてくるのです。

たとえば、診断を受けた後は、自分の感覚過敏やストレスの原因が明確になり、無理のないスケジュールを組んだり、環境を整えたりする方法が学べるようになります。
また、同じような経験を持つ仲間と出会うことで、孤独感が和らぎ、精神的な支えを得ることも可能です。
これにより、自己理解が進み、結果として自己肯定感が高まるという効果も期待されます。

さらに、成人になってからの診断は、これまでの人生を振り返るうえで、自分の行動や感情のパターンに納得感をもたらすものです。
長年「なぜ自分はこうなのだろう」と悩んできた方々にとって、診断は自分自身を再評価し、これまでの苦労を肯定的に捉えるための「鍵」となるでしょう。

社会全体としても、性別や年齢を問わず、より多様な自閉症の姿を理解し、受け入れる流れが広がっています。
医療現場だけでなく、教育現場や職場、地域社会においても、自閉症の特性に応じたサポート体制が整いつつあり、これがさらなる診断件数の増加や、診断後の生活の質の向上につながることが期待されています。

自閉症は、神経発達障害としてコミュニケーションや学習、行動にさまざまな影響を及ぼすものであり、その診断基準や評価方法は時代とともに変遷してきました。
これまで男性や男児を中心に診断されがちだった背景には、診断ツールの偏りや社会的な認識の違いがありましたが、現在は女性や大人の自閉症についても正しく理解し、診断できる体制が整いつつあります。

診断が進むことで、自分自身の特性を正確に認識し、適切な支援を受けられるようになるとともに、これまで抱えてきた混乱やストレスが軽減されるという大きなメリットがあります。
専門家によれば、正しい診断は自分自身への理解を深め、また家族や周囲の人々にもその特性を理解してもらうための大きな一歩です。

今後も、医療技術や診断方法の進歩、さらには社会全体の意識の変化によって、自閉症の診断と支援はますます充実していくでしょう。
もし、自分や大切な人が「いつも何か違う」「どうしてこんなに苦しんでいるのか分からない」と感じるなら、まずは信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
正しい診断と理解が、これまでの苦悩を乗り越える大きな力となるはずです。

以上のように、自閉症という障害は一面的なものではなく、個々の特性や経験に基づいた多様な姿を持っています。
診断の進歩と共に、より多くの人々が自分自身を理解し、安心して生きるための環境が整えられることが、今後の大きな課題であり目標となっています。

(出典:米SELF)(画像:たーとるうぃず)

今まで、見過ごされてしまった人たちが、そうでなくなり、必要とされる方には適切に支援がなされるようになる。

ますますそうなってほしいと願います。

自閉スペクトラムの女性が抱えるマスキングと燃え尽き症候群

(チャーリー)


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