![ゲームで自閉症とADHDの特徴を分析。新しい診断方法の研究](https://www.turtlewiz.jp/wp-content/uploads/2025/02/a2-1.jpg)
- 自閉症とADHDの診断をどのように見分けることができるのか?
- CAMIという新しい診断ツールはどのように活用されるのか?
- ASDの診断を早期に行うためには、今後どのような研究が必要なのか?
自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)は、子どもの発達に関する代表的な障害の一つです。
しかし、この二つの違いを正しく診断することは簡単ではありません。
両方の特性を持つ子どもも多く、診断が遅れたり誤診されたりすることもあります。
その結果、適切なサポートを受けられず、本人や家族が困難を抱えることになります。
そんな中、アメリカのケネディ・クリーガー研究所のロミラ・サントラ博士を中心とする研究チームが、新しい診断ツール「CAMI(キャミ)」を開発しました。
このツールは、コンピューターを使った短時間のゲームのようなテストで、子どもの動きを分析することで、自閉症の特性を判断します。
研究の結果、CAMIはASDの診断精度を高める可能性があることが明らかになりました。
ASDは、対人関係やコミュニケーションが苦手で、こだわりの強い行動をとることが特徴です。
一方、ADHDは注意力が散漫になったり、衝動的な行動をとったりすることが特徴です。
どちらも子どもの発達に影響を及ぼしますが、これまでの診断方法では両者の違いを明確にすることが難しく、専門家でも判断に悩むことが多くありました。
また、ADHDの子どもは約50~70%の確率でASDと共存していると言われています。
そのため、ASDの特徴なのかADHDの特徴なのかを見極めるのが難しく、誤った診断が下されることも少なくありません。
この問題を解決するために、研究者たちはASDに特有の特徴を科学的に測定できる方法を模索してきました。
そして、今回開発されたのが「CAMI」という新しい評価ツールです。
CAMI(Computerised Assessment of Motor Imitation)は、簡単に言うと「動きを真似する能力」を測るテストです。
この方法が注目される理由は、ASDの子どもは他の子どもに比べて「動きを模倣することが苦手」だという特徴があるからです。
CAMIは、わずか1分間の短いゲームで、子どもが画面に映るキャラクターの動きをどれだけ正確に真似できるかを測定します。
ゲームはダンスのような動きが含まれており、子どもは楽しみながら参加できます。
動きの正確さはコンピューターによって自動的に解析され、数値化されます。
これまでの診断方法は、医師や専門家が子どもの行動を観察しながら評価するのが一般的でした。
しかし、この方法では観察する人によって評価が変わることがあり、客観的な判断が難しいという問題がありました。
一方、CAMIは人の主観が入らず、コンピューターがデータをもとに客観的に診断を行うため、より正確で安定した結果が得られる可能性があります。
今回の研究では、7歳から13歳の子ども183人を対象に、CAMIを使ったテストを実施しました。
参加した子どもたちは、以下の4つのグループに分けられました。
- ASDのみの子ども(21人)
- ASDとADHDの両方を持つ子ども(63人)
- ADHDのみの子ども(35人)
- 発達が典型的な子ども(65人)
研究の結果、ASDの子どもはADHDの子どもや発達が典型的な子どもに比べて、模倣能力が明らかに低いことがわかりました。
とくに、ADHDのみの子どもと発達が典型的な子どもの間には大きな違いがなかったため、模倣の苦手さはASDに特有のものだと考えられます。
さらに、CAMIのスコアを使ってASDを診断するテストを行ったところ、80%の確率でASDの子どもを正しく判別できました。
また、ADHDの子どもとASDの子どもを比較した場合でも、70%の確率で見分けることができたという結果が出ました。
この結果から、CAMIは従来の診断方法よりも正確で、ASDの診断に役立つ可能性があることが示されました。
CAMIは、従来の方法と比べて短時間で簡単に診断ができる画期的なツールですが、今後の研究が必要な点もあります。
まず、今回の研究では、知的発達に大きな遅れがないASDの子どもが主に対象となっていました。
そのため、知的障害を伴うASDの子どもにも適用できるのかどうか、さらに検証が必要です。
また、ASDの診断はできるだけ早い段階で行うことが重要ですが、現在のCAMIは7歳以上の子どもを対象にしています。
今後、幼児にも対応できるバージョンの開発が求められます。
さらに、今回の研究ではサンプル数が限られていたため、より多くの子どもを対象にした大規模な研究が必要です。
とくに、ASDのみのグループは人数が少なかったため、ADHDの子どもとの違いをより正確に検証するためには、さらなるデータ収集が求められます。
ASDの診断は、早ければ早いほど、その後のサポートや治療の効果が高まることが知られています。
しかし、現在の診断方法では時間がかかり、専門家の判断に依存する部分が大きいため、診断が遅れることも少なくありません。
CAMIのような新しいツールが広まれば、短時間で客観的な診断が可能になり、多くの子どもたちが早い段階で適切な支援を受けられるようになるかもしれません。
これからの研究と技術の進歩によって、ASDの診断がより正確かつ迅速に行われる未来に期待が集まっています。
この画期的なツールが、より多くの子どもたちとその家族にとって、希望となる日も遠くないかもしれません。
(出典:英The British Journal of Psychiatry. )(画像:たーとるうぃず)
「多くの子どもたちが早い段階で適切な支援」
に貢献する研究、そして実現にますます期待しています。
(チャーリー)