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自閉症の人の急増、その理由と求められる社会の仕組み。米国

time 2024/12/19

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人の急増、その理由と求められる社会の仕組み。米国
  • 自閉スペクトラム症(ASD)の診断率が急増する原因は何ですか?
  • ASDの人々に対する社会的支援はどのように整備されていくべきですか?
  • 自立した生活を送るために、ASDの人々に必要な支援はどのようなものですか?

米国では1966年には、2,500人に1人が自閉症(現在では自閉スペクトラム症、ASDと呼ばれます)と推定されていました。
しかし1987年には1,400人に1人、2000年には150人に1人、2008年には88人に1人という割合に増加しました。

そして2017年には68人に1人にまで上昇し、アメリカ国内の12の医療システムから収集されたデータを用いて、自閉スペクトラム症(ASD)の診断率の変化を2011年から2022年にわたって調査した最新の報告書によると、アメリカの8歳以下の子どもでは33人に1人(約3%)がASDと診断されるとされています。
この60年間で自閉症の診断が急増した理由を解明することは、医療専門家の間で大きな議論の的となっています。

最新の報告書では、アメリカ国内の12地域でASDの診断率を分析しています。
これらの地域は、国立精神衛生研究所や疾病予防管理センター(CDC)から資金提供を受けてデータを収集している「精神衛生研究ネットワーク」の一部です。
このデータによると、2011年から2022年の間に診断率は着実に上昇しています。

この増加には主に2つの仮説があります。
1つ目は、実際にASDの人が昔より増えているというもの。
2つ目は、ASDへの認識が高まり、診断やスクリーニングの基準が変わったために、より多くの人がASDと診断されるようになったというものです。
どちらの仮説にもそれなりの根拠があり、両方が関与している可能性が高いとされています。

ASDの原因はまだ正確には解明されていませんが、研究者たちはその発症に強い遺伝的要因があることを確認しています。
2017年の研究によれば、ASDの83%が遺伝的要因、17%が環境要因によるものだとされています。
また、ASDと関連があるとされるDNA上の約100箇所が特定されています。

さらに、ASDの割合が増加した可能性を示す要因もいくつかあります。
例えば、高齢の親(とくに父親)から生まれた子どもではASDのリスクが高まることが分かっています。また、近年は多くのカップルが子どもを持つ時期を遅らせる傾向があります。
早産児もASDのリスクが高いとされますが、医療の進歩により早産児の生存率が向上していることも影響しているかもしれません。
これらを考慮すると、実際にASDの人が増えている可能性もあります。

一方で、ASDのスクリーニングが普及し、診断基準が広がったことで、診断される人が増えたという考えも有力です。
2006年にアメリカ小児科学会が、18か月と24か月の定期健診で全ての子どもにASDのスクリーニングを推奨したこともその一因と考えられます。
データによると、診断率の増加は特に8歳以下の子どもに集中しています。
この年代ではASDの症状が現れやすく、スクリーニングが行われる可能性が高いからです。
また、ASDの診断率が増加する一方で、知的障害の診断率が減少していることから、過去には誤診が多かったと推測されます。

新たな報告書では、性別や人種・民族の偏見がASDのスクリーニングや診断に影響を与えていたことも指摘されています。
しかし、時間とともにその影響は減少し、診断がより一貫性を持つようになっています。
例えば、2011年には男児4.3人に対して女児1人がASDと診断されていましたが、2022年にはその比率が3.01対1まで縮小しました。これは、女児の診断率が男児よりも急速に増加したためです。

人種に関しては、かつて自閉症は白人に多いと考えられていましたが、最新のデータではその傾向が変化しています。
現在では、ASDの診断率が最も高いのはアメリカ先住民・アラスカ先住民で、次いで黒人、ヒスパニック系の子どもも非ヒスパニック系より診断率が高くなっています。
2011年からの大きな逆転現象です。

最後に、スクリーニングプロセスの変化が診断率の上昇に寄与していることを示すデータもあります。2020年、診断率が一時的に横ばいになりましたが、この年は新型コロナパンデミックの影響で定期健診が中断されたり、多くの子どもが自宅で学習したりした年でした。
2021年には診断率が再び上昇しています。

報告書は診断率が上昇する理由について明確な結論を出していません。
しかし、1つの懸念を提起しています。
それは、ASDと診断される人々が大人になり社会に進出する「津波のような波」が押し寄せているという事実です。

ASDの人々の中には、独立して社会で成功する人もいますが、多くはさまざまな支援を必要とします。現在のところ、大人のASDを支援するためのインフラやサービスは十分に整備されていません。
報告書の著者は、「自閉症の若い大人は、糖尿病、肥満、不安症、うつ病などの病状が高い率で見られるため、特に継続的なケアが重要だ」と指摘しています。

このような社会全体への影響は、過去にも見られました。
20世紀にはアメリカの平均寿命が大きく延びたことで、多くの高齢者を支えるためのインフラが必要となりました。
また、新型コロナに感染した人々の長期的な健康への影響や、薬物依存の健康問題にも対処する必要があります。
そして、これらに加えて新たな課題として、ASDと診断される人口が増加し、幸せで実りある人生を送れるよう支援するための仕組みづくりが求められています。

(出典:米SOUTH SEATTLE EMERALD)(画像:たーとるうぃず)

米国に限らない話で、世界的な傾向です。

求められる対応についても。

自閉症やADHD、神経多様性への理解と共創。企業の未来

(チャーリー)


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