- 大人になってからASDの診断を受けることにはどんな影響があるのか?
- 自閉スペクトラム症の特性を理解することで、どのように自己受容が進むか?
- ASDに対する治療や支援はどのように受けられるのか?
自閉スペクトラム症(ASD)は、米国では18歳以上の約2.2%の人に見られると推定されています。
最近の研究では、大人のASD診断が増加しており、特に26~34歳の年代で診断率が大幅に上昇していることが示されています。ある研究によると、この年代の診断率は2011年から2022年の間に450%も増加しました。
大人になってからのASD診断はどういう意味があるのか?
大人になってから自閉スペクトラム症の診断を受けることは、挑戦と機会の両方をもたらします。診断を受けることで、支援や治療につながる可能性もあります。
自閉スペクトラム症(ASD)とは?
ASDは脳の違いによって引き起こされる神経発達の状態で、人との交流やコミュニケーション、学習、行動に影響を及ぼします。ASDはどの年齢でも診断可能ですが、症状は通常3歳までに現れます。
ASDの人々には、能力や課題の幅広い個人差があります。独立して生活したり仕事をしたりできる高い知能指数を持つ人もいれば、言葉を話さず、支援が必要な人もいます。一人の人の中でも、例えば高い知能指数を持ちながらも社会的な交流に苦労するなど、能力の差が見られることがあります。
ASDの主な症状
ASDの症状は人によって異なりますが、大きく分けて以下の2つの分野で困難があるのが一般的です。
社会的コミュニケーションや交流の困難
- 会話を続けるのが難しい
- 感情を共有するのが難しい
- 他人の考えや感情を理解するのが苦手
- アイコンタクトを取るのが苦手
- ボディランゲージを解釈するのが難しい
- 声のトーンを調整できない(単調すぎたり、大きすぎたりすることがある)
- 友達を作るのが難しい
- 社会的な状況に対応するのが苦手
制限的で反復的な行動
- 反復的な動きや話し方、遊び(例:体を揺らす、手を振る)をする
- 決まった日常のルーチンに強く依存し、小さな変化にもストレスを感じる
- 特定の話題や数字、事実などに対して強い興味を示す
- 光や音、温度などの感覚に過敏である、またはほとんど気にしない
また、ASDの人々には記憶力が良かったり、細部まで学ぶ能力があったり、数学や科学、音楽、美術などの分野で優れた才能を発揮する人もいます。
大人と子どものASD症状の違い
大人の場合、子どもと同様の症状が見られますが、特に「マスキング」と呼ばれる行動を通じて、自身の特性を隠すことを学んでいることが多いです。このマスキングは、ストレスや不安、抑うつなどの原因になることがあります。
多くのASDの大人は、社会的な場面でぎこちなさを感じたり、一人でいることを好んだりします。また、他人の感情や考えを理解するのが難しく、少しの変化でもストレスを感じやすいです。
ASD診断のプロセス
ASDの診断には、医療履歴の確認や質問、評価が行われます。以下のようなステップがあります。
- 子どもの頃の情報
親や兄弟からの情報も含め、幼少期の行動や発達について詳しく聞かれます。 - 現在の状況
現在の仕事、興味、友人関係、交際関係など、社会的・コミュニケーションスキルを評価します。また、不安やうつ、ADHDなど、ASDと同時に見られる症状も調べます。 - 認知テスト
注意力、記憶力、問題解決能力などを評価します。 - ASDの専門的な評価
ADOS-2(自閉症診断観察スケジュール)という評価が一般的で、社会的な行動を観察します。
診断を受ける際の課題
- アイデンティティへの影響
診断を受けることで自分の認識が揺らぐことがあり、適応するのに時間がかかることもあります。
診断を受けるメリット
- 治療へのアクセス
特定の困難を克服するためのセラピーや治療を受けやすくなります。 - 自己理解と受容
これまでの困難がASDによるものだと分かることで、自己受容につながります。 - 法的保護
職場や学校で合理的配慮を受ける権利が得られます。 - コミュニティとのつながり
同じ経験を持つ人々との交流が可能になります。
ASDの診断は困難を伴うこともありますが、自分の可能性を広げるきっかけにもなり得ます。
(出典:米ハーバード大学医学部)(画像:たーとるうぃず)
必要とされる方には、診断を受けて、適切な支援がなされることを願います。
(チャーリー)