- MMRワクチンと自閉症の関連性について、信頼できる情報はどこにありますか?
- ワクチン接種を受けることで自閉症のリスクが増加したり減少したりすることはありますか?
- 自閉症の原因として他に考えられる要因は何ですか?
デンマークの疫学研究チームが発表した研究は、MMRワクチン(三種混合ワクチン:麻疹、流行性耳下腺炎、風疹)と自閉症の間に因果関係がないことを示した大規模な人口ベースの調査です。
この研究は、デンマーク全土で実施され、1991年から1998年の間に生まれた子ども53万7303人を対象に行われました。
調査の結果は、世界的に権威のある医学専門誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されています。
MMRワクチンと自閉症の関連性については、1990年代後半から一部で懸念が提起されてきました。
一部のケース報告や小規模な研究では、ワクチン接種後に自閉症の症状が現れる可能性があると主張されていましたが、これらの研究は統計的な力や科学的な厳密性に欠けており、結果の信頼性が疑問視されていました。
さらに、ワクチン接種率の向上と自閉症の診断件数の増加が同時に発生していたことから、一部では因果関係があるのではないかとの推測もされていました。
このため、より科学的に厳密で信頼性の高いデータを用いた調査が求められていました。
今回の研究の目的は、MMRワクチン接種と自閉症および他の自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症リスクの関連性を詳細に検証することでした。
この研究は、過去のデータを用いた後ろ向きコホート研究(retrospective cohort study)として設計されました。
研究チームは、以下のデータベースを使用して、対象者に関する詳細な情報を収集しました。
1. デンマーク市民登録システム
すべての生まれた子どもや新しい住民に個別のID番号を割り当てる国家システムで、住所、家族構成、生死の状況、移住状況などが記録されています。このID番号を用いて、他のデータベースとの情報連携を行いました。
2. デンマーク国立健康委員会
ワクチン接種情報を一般医から収集するデータベース。接種情報の報告は医師の報酬支払いに必要なため、データの正確性が保証されています。
3. デンマーク精神医学中央登録
精神医学的診断が記録されるデータベース。自閉症の診断コードや詳細な病歴情報を取得しました。
4. その他の登録データベース
出生記録、病院利用記録、統計データベースを使用して、潜在的な交絡因子(社会経済的地位、出生体重、妊娠期間、母親の教育水準など)を考慮しました。
この研究では、1991年1月1日から1998年12月31日までに生まれたすべての子どもを対象にし、総計で53万7303人が含まれました。
これらの子どもたちのうち、82%にあたる約44万人がMMRワクチンを接種していました。
研究では、ワクチン接種の有無や時期、接種後の経過時間などが自閉症やASDの発症に与える影響を調査しました。
フォローアップ期間は、子どもが1歳になった日から自閉症またはASDの診断を受けた日、死亡、移住、または1999年12月31日までと定められ、総計で約212万9864人年にわたるデータが収集されました。
研究の結果、MMRワクチンを接種した子どもと接種していない子どもで、自閉症やASDの発症リスクに統計的に有意な差は見られませんでした。
自閉症の発症リスクは「1」を基準とした場合、接種した子どもたちは「0.92」で、ほんの少し低い結果となりましたが、これは偶然の範囲内と考えられる数字です。同様に、ASDについても「0.83」という結果で、接種の有無で大きな差はありませんでした。
– ワクチン接種年齢:15~19か月、20~24か月など、接種時期の違いによるリスク差は確認されませんでした。
– 接種後の経過時間:接種から6か月以内、1年以上経過後など、発症率に有意な変化はありませんでした。
– 診断までの期間:診断年齢が異なる子どもたちでも、ワクチン接種の影響は観察されませんでした。
この研究は、MMRワクチンと自閉症の間に因果関係がないことを示す強力な証拠を提供しています。
研究者らは、「ワクチン接種が自閉症を引き起こすという仮説を支持するデータは一切見つからなかった」と結論付けました。
さらに、この研究の強みとして、以下の点が挙げられます:
- データの信頼性:デンマークの国家システムに基づく正確なデータを使用
- 規模の大きさ:約53万人を対象とした大規模な調査
- 長期間のフォローアップ:約8年間の観察データ
今回の結果は、MMRワクチンに対する安全性への信頼をさらに高め、ワクチン接種率の向上に寄与する可能性があります。
一方で、ワクチンに対する不信感が一部で根強く残る中、正確で科学的な情報を引き続き提供する必要性が強調されています。
この研究を主導したのは、クレステン・メルドガード・マドセン医師(Kreesten Meldgaard Madsen)を中心とするデンマーク疫学科学センターの研究チームで、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のダイアナ・シェンデル(Diana Schendel)博士なども共同研究者として参加しました。
(出典:The New England Journal of Medicine)(画像:たーとるうぃず)
予防接種で自閉症になることはありません。
デマに惑わされずに、子どもの健康を守ってください。
(チャーリー)