- 自分が自閉スペクトラム症であることを知らずに過ごしてきた場合、どのように自己理解を深めることができるのか?
- 高齢期における自閉症の診断はどのように人生に影響を与え、今後の支援にどのように繋がるのか?
- 自閉症を持つ人々が求める支援は具体的にどのようなもので、どのように提供されるべきなのか?
アンドリュー・デイビスは、生涯を通じて「自分はどこか周囲に馴染めない」「壊れている」「奇妙だ」または「何かが間違っている」と感じてきました。
それが変わったのは、70歳で自分が自閉スペクトラム症(ASD)であると知ったときでした。
「これはただの私自身であり、私の脳の構造なんです……私が世界を経験する方法が他の人とは違うだけだったんです」
研究によると、アンドリューのように、自分が自閉スペクトラム症であることを長年知らずに過ごしてきた人は他にも多くいるとされています。
イングランドでは、50歳以上で診断されていない自閉スペクトラム症の人が25万人から60万人に上る可能性があると、研究が示しています。
これは、50歳以上の自閉スペクトラム症の人の90%以上が診断を受けていないことを意味すると研究者は指摘しています。
「長い間、自閉症は子どもの病気と考えられていましたが、実際には生涯にわたるものです。
人が年を取っても自閉スペクトラム症であることに変わりはありません」
現在72歳のアンドリューは、2019年に長く輝かしいキャリアを経て引退しました。
彼は最初の10年間、ウェールズ政府の閣僚を務め、1999年から2011年まで議員を務めました。
議会から引退した後は、アバタウェ・ブロ・モルガン大学病院委員会の議長を6年間務めました。
しかし、彼は「他人を理解したり接するのにしばしば苦労してきた」と言います。
そのため、この職歴は一見意外に思えるかもしれません。
「グループの中にいると、会話についていくことや何を話せばいいかがわからなくて困ることがよくあります……世間話のルールがわからないんです」
子どもの頃から、彼は集団よりも一人や一対一の友人関係を好んでいました。
しかし、中学校ではそれがさらに難しくなりました。
「本当に全然うまくいかなかったんです。
壊れているとか、奇妙だとか、何かが間違っているとか、そんな風に感じていました」
働き始めると、社会のルールや構造は少し理解しやすくなりましたが、それでも一日が終わる頃には「圧倒されて」や「人付き合いに疲れ果てて」しまうことが多かったと言います。
「おそらく周りの人は『あの人は少しよそよそしい』と思ったかもしれませんが、それは内気さと何を話せばいいかわからないことの組み合わせなんです」
さらにアンドリューは感覚過敏も経験しています。
「ディスコやロックコンサートは楽しめたことがなく、音や光が圧倒的で不快に感じました」
その他の音、例えば妻がガムを噛む音や隣人の犬の吠える声、また特定の匂い(凝固した脂肪や油脂)や蛍光灯の光なども、彼にとってはとても不快でした。
「ただその場から離れるしかありません。
無視しようとしても、それは体が本能的に反応してしまうものです」
仕事で役立ったもう一つの特性として、アンドリューは「強い興味」(ハイパーフィクスエーション)を挙げています。
興味を持った話題にとことんのめり込み、徹底的に調べる傾向があるのです。
「そのテーマを深く知りたいと思うんです。
多くの人は『面白いね』で終わりますが、私はそうはいきません」
自閉症について調べることも「また別の穴に飛び込んでしまったようなもの」と彼は表現します。
このようにして物事に熱中しすぎる傾向が、最初に自分が自閉スペクトラム症である可能性に気づいたきっかけだったそうです。
同僚との会話で、その同僚が最近自閉症と診断されたことを知りました。
その同僚は精神科医から「典型的な自閉症の特徴がすべて当てはまる」と言われたそうです。
その同僚が詳細に研究し、長いメールを書く姿と自分に共通点を見出したアンドリューは、「はっと気づいた」と言います。
自閉症について読み始め、ポッドキャストを聞き、サイモン・バロン=コーエン教授が作成したオンライン診断テストを受けてみました。
「スペクトラムの真ん中くらいにしっかり当てはまりました」
その後正式な診断を受けることを決め、診断を受けることにしました。
診断を受けたことで何が変わったのでしょうか?
「ただ確証が欲しかったんです……壊れているとか奇妙だとか何か間違っているわけじゃなく、これが私であり、私の脳の構造なんだと。
この年齢になると、自分の人生を振り返るようになります。
役割から魂の在り方まで。
それが、自分の人生で起こったことを受け入れる助けになると思います」
アンドリューは10代の頃からうつ病を経験してきました。
全国自閉症協会によると、自閉スペクトラム症の人はそうでない人に比べてうつ病を経験する可能性が高いという研究結果があります。
また彼は、現在では自閉症の燃え尽き症候群と考えられる体調不良を何度か経験してきました。
データによると、50歳以上の人々が自閉症と診断される割合は子どもに比べて非常に低く、子どもの診断率が1/34なのに対し、50歳以上では1/6,000とされています。
「非常に多くの支援が必要な人々が診断を受けられずにいる可能性があります」
そう、英キングス・カレッジ・ロンドンの老年学と自閉症スペクトラム障害の研究フェローであるギャビン・スチュワート博士は言います。
高齢者が診断を受けない理由の一つは、彼らが若い頃(1960年代)には自閉症は非常に珍しいものと考えられていたためだと言います。
「しかし、今日ではその認識が変わり、診断率もそのことを反映しています」
高齢者が診断を受けることは「電球が一瞬で灯るような瞬間」であり、自分の人生経験をより良く理解できるようになるだけでなく、雇用主や介護施設などからの支援を受ける扉を開くことにもなると言います。
「高齢者のサービスに携わる臨床医が、診断されていない自閉症の高齢者をもっと見つけられるようになってほしい。
自閉症の人々は、精神的健康を支えたり幸せな生活を送るために、生涯にわたって追加の支援が必要なことがよくあります。
適切な支援を受けることが、彼らが幸せに年を重ねるための鍵となる可能性が高いと思います。
そして誰もが最高の人生を送る権利を持っているはずです」
(出典:英BBC)(画像:たーとるうぃず)
立派な人生を送られて、今さらもういいでしょう。
人生を振り返ってみたときに、ご本人にとっては、そんな考えではすまなかったのでしょう。
解決されてよかったですね。
(チャーリー)