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自閉症の新たな鍵は口腔内細菌?唾液から診断の可能性。研究

time 2024/11/15

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

自閉症の新たな鍵は口腔内細菌?唾液から診断の可能性。研究
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)と口腔内の微生物群との関係はどのように解明されているのか?
  • ASDの子どもたちの口腔マイクロバイオームは、知的発達とどのように関連しているのか?
  • 今後の研究でASDの診断や治療にどのように役立つ新たなアプローチが期待されているのか?

イタリア・トレント大学のニコラ・セガタ博士とFMACH(イタリア農業分子研究センター)のパオロ・マンギ博士を中心とした研究チームが、自閉スペクトラム症(ASD)と口腔内の微生物群(口腔マイクロバイオーム)との関係を解明するために行った大規模な研究が注目を集めています。

研究チームは、アメリカに住む2025家族から提供された7000人以上の唾液サンプルを分析し、自閉症の子どもたちとその兄弟姉妹との間で、口腔内の細菌群にどのような違いがあるかを明らかにしました。

この研究は、ASDの子どもたちの口腔内で特有の微生物群が見つかることを示し、これらがASDの診断や将来の治療法に繋がる可能性があることを示唆しています。

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的なコミュニケーションや行動に障害を伴う神経発達障害であり、その原因は遺伝的要因と環境的要因の複雑な相互作用によると考えられています。
遺伝的な研究では、ASDに関連する遺伝子が複数特定されていますが、それらはASDの発症を完全に説明するわけではなく、環境要因が重要であることが示唆されています。

近年、腸内フローラ(腸内の微生物群)とASDの関係が注目されていますが、口腔内の微生物群とASDとの関連についてはほとんど調査が行われていませんでした。
そこで、研究チームは、ASDと診断された子どもたちの口腔内の微生物群を詳細に調べることにしました。

研究は、アメリカの「SPARK-WGS」という大規模なコホートを対象に実施されました。
このコホートには、ASDが診断された2154人の子どもと、その兄弟姉妹(1646人)および両親(2000人)が参加しています。

研究チームは、これらの家族から集められた唾液サンプルを基に、メタゲノム解析を行い、口腔内の細菌種の種類やその割合を調査しました。
メタゲノム解析は、全ゲノムシーケンシングを使用して非ヒトのDNAを抽出し、口腔内に存在する細菌やその他の微生物を詳細に分類する方法です。

この研究は、口腔マイクロバイオームに関するこれまでの研究を超える規模と深さで行われました。

研究の結果、自閉症の子どもたちの口腔内には、定型発達の兄弟姉妹(NTs)の口腔内とは異なる細菌種が多く存在することが確認されました。

とくに、自閉症の子どもたちの口腔内では、セロトニンやGABA(ガンマアミノ酪酸)など、神経伝達物質を分解する細菌が豊富に存在していることが分かりました。
これらの神経伝達物質は脳の発達や神経機能に深く関与しており、ASDの症状に関連している可能性があります。

また、これらの微生物群の変化は、ASDの子どもたちの知的発達(IQ)とも密接に関連していることが分かりました。

自閉症の子どもたちは、知的障害が軽度であっても、IQが低い子どもほど、親との間で共有される細菌の種類が少ないという結果が得られました。

これは、社会的な相互作用や生活環境、食習慣が微生物群に影響を与える可能性を示唆しています。
また、IQが低い自閉症の子どもたちの方が、口腔内の微生物群が変化しやすいことがわかり、知的発達と口腔マイクロバイオームの関係について新たな知見が得られました。

さらに、ASDの子どもたちは、親との間で微生物群を共有する割合が低いことが確認されました。

これについては、生活環境や社会的な要因(例えば、親子の交流の頻度)が微生物群の伝播に影響を与えている可能性が考えられます。
とくに、IQが低いASDの子どもたちは、親と微生物を共有する割合がさらに低いことがわかりました。
この発見は、ASDの子どもたちの社会的な障害が、微生物の伝播にも影響を与える可能性があることを示しています。

研究チームは、ASDの子どもたちの口腔マイクロバイオームに対する食生活や衛生状態の影響についても調査しました。

食生活や食物の選択的な摂取(とくに制限的な食事)や、口腔衛生状態が微生物群にどのような影響を与えるかを考慮しましたが、これらの要因が口腔内の微生物群に与える影響は限定的であり、ASDの子どもたちと定型発達の子どもたちの間で観察された微生物群の違いは、主に知的発達と関連していることが示されました。

とくに、知的発達を示すIQが、口腔マイクロバイオームの変化と最も強く関連していることが明らかになりました。

さらに、研究では、ASDの子どもたちの口腔内の細菌が、神経伝達物質の代謝経路に関連する特定の機能を持っていることが示されました。
とくに、セロトニン、GABA、ドーパミンといった神経伝達物質の分解経路が、ASDの子どもたちにおいて多く見られました。

これらの経路は、ASDの子どもたちの認知機能や行動に関連する可能性があり、将来的にASDの診断や治療の新たな指標となる可能性があります。
また、これらの経路は、口腔内の微生物がどのようにして脳の発達や行動に影響を与えるかを理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

この研究は、口腔内の微生物群がASDとどのように関連しているかを明らかにするための重要な一歩となりました。
今後は、この発見を基に、ASDの診断や治療法の新しいアプローチを模索することが求められます。

とくに、ASDの子どもたちの口腔内で特定された神経伝達物質の代謝経路が、ASDの症状や治療にどのように関与するのかをさらに詳しく調べる必要があります。
また、より多くのサンプルや異なる人口集団での研究を行うことで、これらの結果が広く一般化できるかどうかを確認することも重要です。
ニコラ・セガタ博士はこう述べています。

「この研究は、ASDの子どもたちの口腔マイクロバイオームに関する最も詳細な調査の一つです。
これによって、ASDの発症や症状に関連する新しいバイオマーカーが発見される可能性があります」

今回の研究成果は、ASDに関する新しい知見を提供すると同時に、口腔マイクロバイオームがどのように脳の発達や神経機能に関わるかを解明するための重要な基盤となるでしょう。
今後の研究で、これらの知見をさらに深掘りし、ASDの診断や治療に役立つ新しい方法が開発されることが期待されています。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

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(チャーリー)


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