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自閉症の人の脳はそうでない人に比べシナプスの密度が低い。研究

time 2024/10/25

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人の脳はそうでない人に比べシナプスの密度が低い。研究
  • 自閉症の特性は脳のシナプス密度にどのように関連しているのか?
  • 自閉症の早期診断にはどのような生物学的な指標が役立つのか?
  • 自閉症と脳内のシナプス密度の関係は、治療や支援にどのように影響するのか?

長年にわたり、研究者たちは動物モデルや死後の脳を用いて、自閉症の特徴である社会性やコミュニケーションの違いを解明しようとしてきました。

しかし、最近の研究で、自閉症の人の脳にある分子レベルの違いが発見されました。
これにより、自閉症の主要な特徴と関連する脳内の変化が初めて明らかになったのです。
この研究では、自閉症の人の脳内のシナプス密度が生きた状態で測定されるのも初めてのことです。

研究者たちはポジトロン断層法(PET)を用いて、自閉症の成人の脳には、神経細胞同士や他の細胞と信号をやり取りする重要な接続点であるシナプスが、神経発達が通常の人に比べて少ないことを発見しました。
さらに、シナプスが少ない人ほど、自閉症の特徴が強く現れることも分かりました。この研究結果は『Molecular Psychiatry』に発表されました。

「私たちの発見は一見シンプルに思えますが、これは過去80年間、自閉症研究の分野で解明できなかった大きな謎だったのです」

そう、米イェール大学のチャイルド・スタディ・センターで本研究を主導したジェームズ・マクパートランド博士は語ります。

「これほど複雑で多様性のある自閉症という状態において、脳の違いと行動との間にこれほど強い相関が見られるのは非常に珍しいことです」

自閉症の人々の脳の違いに関する理論は数多く存在し、その中でもシナプスの異常なつながりが注目されてきました。

「シナプスは神経細胞がコミュニケーションを取るための仕組みであり、脳内で情報がやり取りされ、処理される基本的なメカニズムです」

研究に参加したアダム・ネイプルズ博士はそう説明しています。


これまでの研究では、動物モデルや死後の脳を使って間接的にシナプスのつながりを測定してきましたが、「壁に映る影を見て、その物体を推測しようとするようなものだった」とマクパートランド博士は言います。
しかし、今回の研究では新しいPETスキャンの手法を取り入れたことで、生きた人間の脳で直接的にシナプスの密度を測定することができました。

研究の前には、すべての参加者に対して臨床面接が行われました。
自閉症の診断が非常に複雑であるため、研究者たちは自閉症の診断におけるゴールドスタンダードとされる「自閉症診断観察スケジュール(ADOS)」を使用して、各参加者の状態を評価しました。
また、参加者自身にも、社会的な交流の困難さや感覚的な問題など、自閉症との日常生活についての質問票に回答してもらいました。
研究対象からは、他の医療条件や精神障害を持つ可能性のある人々を除外し、最終的に自閉症の成人12人と、神経発達が通常の成人20人が研究に参加しました。

その後、各参加者は磁気共鳴画像法(MRI)とPETスキャンによる脳のスキャンを受けました。
MRIスキャンは脳の構造を詳細に可視化するためのものです。
一方、PETスキャンの前には、ヤールPETセンターで開発された「11C-UCB-J」という新しい放射性トレーサーが注入され、これにより脳内のシナプス密度が測定できるようになりました。

研究者たちは、自閉症の人々の脳全体でシナプス密度が神経発達が通常の人に比べて17%低いことを発見しました。

さらに、シナプス密度が低いほど、社会的なやり取りの困難さや、視線の接触の減少、反復的な行動、社会的な合図を理解する難しさなど、自閉症の特徴が多く現れることが確認されました。

マクパートランド博士によると、現在、自閉症の診断は行動に基づくもので、その基準が広く曖昧であるため、自閉症のメカニズムの理解が進んでいないことが、自閉症の人々へのサポートの難しさにつながっていると言います。

「もし自閉症の生物学的な理解を診断に役立てることができれば、必要なサポートをより的確に提供できるようになるでしょう」

自閉症のメカニズムを解明することで、自閉症をより細かいグループに分けることができる可能性もあります。
以前の診断基準である『精神障害の診断と統計マニュアル 第4版(DSM-IV)』では、自閉症スペクトラム障害をアスペルガー症候群や特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、自閉症障害に分けていましたが、「DSM-5では、これらのカテゴリーが機能していないことを認めざるを得ませんでした」とマクパートランド博士は語ります。
現在、DSM-5では自閉症スペクトラム障害(ASD)という一つの大きなカテゴリーに統一されていますが、今回の研究が、自閉症をより細分化し、理解を深めるための一助になることが期待されています。

ただし、自閉症の人々が生まれつきシナプスが少ないのか、それとも自閉症の影響でシナプスが減少するのかは、まだ明らかになっていません。
しかし、PETスキャンが将来的には、子どもの発達予測を助け、早期に適切な介入を行うための手がかりとなる可能性があります。

「その人やその家族に生物学的な確認を提供できるようになることが、私たちの目指す夢です」

と、研究の筆頭著者であるデイビッド・マトゥスキー医学博士は述べています。
今後の研究では、PETスキャンよりも低コストで放射線を使わない方法を用いて、自閉症の脳を直接調べる方法も検討されています。
また、思春期の脳でシナプスを測定し、年齢による変化を明らかにすることにも関心を寄せています。

さらに、自閉症の人々は、うつ病や不安症といった精神的な問題を抱えやすいことが知られており、今回の発見がこれらの問題とどのように関連しているかについても調査を進めていく予定です。
マクパートランド博士はこう言います。

「最終的な目標は、自閉症の人々の生活の質を最大限に向上させるための情報を得ることです」

(出典:米イェール大学医学部)(画像:たーとるうぃず)

「自閉症の人々の脳全体でシナプス密度が神経発達が通常の人に比べて17%低い」

うちの子も自閉症と正式に診断される前の幼い頃にMRIで脳を診てもらったことがあります。

「MRIで見る限り、とくに変わったところはありません」

そう聞いて、そうだろう、もっとミクロの世界での問題だろうと思ったものです。

早期診断、早期療育、支援を必要とされる方の把握につながることを願います。

自閉症の子どもに確認された脳の神経細胞密度の違い。研究

(チャーリー)


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