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自閉症の人のやりとりの困難。脳が相手と同期していない。研究

time 2024/10/03

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

自閉症の人のやりとりの困難。脳が相手と同期していない。研究
  • 自閉症スペクトラム障害を持つ人は、社会的な状況でどのように模倣行動を行うのか?
  • 自閉症の人と通常発達者との脳の活動にはどのような違いがあるのか?
  • 二重共感問題を解消するためには、どのようなアプローチが必要か?

カナダとフランスの研究者グループが、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ人々と通常発達者との社会的なやり取りの際の脳の活動に関する新たな研究結果を発表しました。
この研究では、2人1組のペアが手の動きを使った模倣タスクを行い、その際の脳波や行動の違いが観察されました。

今回の研究は、モントリオール大学精神医学部やパリのロベール・ドブレ病院、サルペトリエール病院などの複数の研究機関によって実施され、とくに「ハイパースキャニング」と呼ばれる技術を使用することで、社会的なやり取りの最中における2人の脳の活動の同期(インターブレイン・シンクロニー)を調べることが可能となりました。

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、主に社会的なやり取りやコミュニケーションにおける特異な行動が特徴とされます。
とくに、他者の動作や行動を模倣する能力が低下することがしばしば報告されています。
しかし、この「模倣能力の低下」が具体的にどのようなメカニズムで発生するのかについては、これまで明確な結論が出ていませんでした。
今回の研究では、ASDの人々が模倣を行う際、どのような脳の活動が関与しているのか、また、通常発達者とASDの人がペアを組んだ際に、どのような行動や脳の同期が見られるのかに焦点が当てられました。

研究では、ASDの成人10人と通常発達者30人が参加しました。

参加者は、ASDと通常発達者(TD)が組んだ「混合ペア」(ASD-TDペア)と、通常発達者同士が組んだ「コントロールペア」(TD-TDペア)に分けられ、それぞれが手の動きを使った模倣タスクを行いました。
タスク中に両者の脳波が同時に記録され、模倣行動の際にどのような脳の同期が生じるかを比較しました。

実験の結果、自閉症の参加者は、模倣行動の際に「リーダー」役を取ることを避け、他者の動きを模倣する「フォロワー」役を好む傾向があることが確認されました。
具体的には、自閉症と通常発達者のペアでは、自閉症の参加者がリーダー役を取る時間が少なく、フォロワーとして行動する時間が長いというデータが得られました。

この結果は、自閉症の人々が模倣において基本的な能力に問題はないものの、社会的な状況で主導権を握ることを避ける傾向があることを示唆しています。

また、これまでの研究では、自閉症の人々が社会的な場面で誤解されやすいことが指摘されており、今回の研究でもその傾向が強く示されました。

通常発達者が自閉症の人々の行動の意図を読み取るのが難しいことが、誤解を生じさせる一因と考えられています。
この問題は「二重共感問題」として知られており、互いに理解し合うことが難しい状況が生まれやすいということが強調されました。

ハイパースキャニングによって記録された脳波データを分析したところ、通常発達者同士のペアでは、模倣行動中に低いアルファ波帯域で脳の同期が強く見られた一方で、自閉症と通常発達者のペアではこの同期が低いことが確認されました。

この脳の同期の差異は、単に自閉症の人々が「脳の同期が弱い」というだけでなく、社会的な状況での役割の取り方や行動の違いによって生じる可能性があります。

とくに、通常発達者同士のペアでは、模倣行動中に脳が自然と同期する一方、自閉症の人々が参加するペアでは、互いに相手の意図を読み取りにくく、その結果として、脳の同期が減少するのではないかと考えられています。
これは、脳波の高いアルファ帯域でも見られ、自閉症の人々が通常発達者と相互作用する際、より多くの認知的なリソースを必要とすることを示唆しています。

今回の研究は、これまでの模倣行動に関する研究が単一の参加者に焦点を当てていたのに対し、より実際の社会的相互作用を模倣する形で行われた点が特徴です。
こうした動的で生態学的に妥当な状況下での研究は、自閉症の人々の行動や脳の活動をより正確に理解するために重要です。

研究を率いたカナダのモントリオール大学とフランスのパリ・ロベール・ドブレ病院の研究者たちは、この発見が将来的に自閉症の人々とのコミュニケーション改善や、社会的なスキルを高めるための新しいアプローチにつながる可能性があると期待しています。

また、今後は、自閉症同士のペアでの相互作用や脳の活動に関するさらなる研究が進められる予定です。
これにより、自閉症の人々が持つ独自の社会的戦略やコミュニケーションの仕組みが明らかになることが期待されています。

この研究は、モントリオール大学精神医学部、パリのロベール・ドブレ病院およびサルペトリエール病院など、複数の国際的な研究機関の協力のもと実施されました。

(出典:Social Neuroscience)(画像:たーとるうぃず)

「通常発達者が自閉症の人々の行動の意図を読み取るのが難しいことが、誤解を生じさせる一因」

この点は、広く認識されてほしいと思います。

自閉症の人と神経典型の人との間に生じる「二重共感問題」

(チャーリー)


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