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自閉症の人はイントネーションや声のトーンに対応困難。研究

time 2024/09/18

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人はイントネーションや声のトーンに対応困難。研究
  • 自閉症の若者は、プロソディを通じて感情や意図を理解するのが難しいのはどうしてですか?
  • 異なる話し手の声やイントネーションに柔軟に適応できないことは、日常生活にどのような影響を与えますか?
  • プロソディに対する理解を深めるためには、どのような支援やアプローチが効果的ですか?

米ロチェスター大学の車田千種博士を中心とした研究チームは、自閉症スペクトラム障害(ASD)の若者が話し手の感情や意図を声の抑揚やリズム(プロソディ)からどのように読み取るかを詳細に調査しました。

プロソディとは、同じ単語や文章でも、声のトーンやリズムを変えることで異なる意味を伝える能力を指し、質問か主張か、または感情的なニュアンスを表現します。
これを理解することは、日常的な対人コミュニケーションで非常に重要です。

自閉症の子どもや大人が、プロソディを通じたコミュニケーションに苦労していることは知られていましたが、その原因は十分に解明されていませんでした。
これまでの研究では、自閉症の人々がプロソディを用いたコミュニケーションの一部では健常者と同等の能力を示す一方で、他の部分では不十分なことが報告されています。
とくに、異なる話し手の声やイントネーションに対してどのように適応し、意味を解釈するかについては、あまり詳しく調べられていませんでした。

この研究の目的は、自閉症の若者たちが異なる話し手の声の抑揚にどのように適応するかを明らかにすることです。

研究チームは「プロソディの連続体」という概念を用いて、同じ文章(例:「It’s raining.(雨が降っている)」)を質問形や主張形など異なる意味を伝える音声サンプルに変化させ、その変化に対する自閉症の若者たちの反応を調査しました。
この方法により、彼らがどの程度プロソディの変化を認識し、適応できるかを測定しました。

この研究は、自閉症の若者、健常な若者、健常な若年成人の3つのグループを対象に行われ、反応の違いが比較されました。
対象者は、13歳から17歳の自閉症の若者57名、健常な若者53名、18歳から24歳の健常な若年成人53名です。
全員がアメリカ英語を母語とするモノリンガルで、言語的な障害はありませんでした。
自閉症グループは「Simons Foundation Autism Research Initiative(SFARI)」データベースから募集され、親の報告に基づく診断が確認された人々が参加しました。
健常者グループは、地域の学校やロチェスター大学の臨床研究センターを通じて募集されました。

研究では、「プロソディの適応タスク」と「抑揚識別タスク」という2つの異なるタスクが用いられました。

1つ目の「プロソディの適応タスク」では、参加者に「It’s cooking.(料理している)」という文が質問形か主張形かを答えさせます。
文は微妙に異なるイントネーションで44回提示され、その都度、質問か主張かを答えます。
続く訓練フェーズでは30回の試行が行われ、参加者にはフィードバックが与えられました。
正しい答えには「正解です。これは質問です」といったフィードバックがあり、この訓練を通じて、参加者がイントネーションの変化にどの程度適応するかが評価されました。

2つ目の「抑揚識別タスク」では、短い音声サンプルを聴いて、微妙な抑揚の違いを識別する能力が試されました。
これはプロソディをどの程度正確に識別できるかを測定するもので、似たイントネーションの中から異なる抑揚を特定する課題です。

結果として、自閉症の若者たちは、プロソディの識別能力については健常者とほぼ同等であることが確認されました。

とくに「抑揚識別タスク」では、どのグループも80%以上の正答率を示しており、自閉症の若者たちもプロソディの違いを認識する能力を備えていることがわかりました。

一方、プロソディの適応能力に関しては、自閉症の若者に特有の違いが見られました。

健常な若者や若年成人は、訓練後に文の意味を柔軟に解釈するようになり、質問か主張かの区別がより明確になりましたが、自閉症の若者たちは訓練後もその変化が少なく、音声の変化に対する適応が遅いことがわかりました。
これは、自閉症の若者たちが日常のコミュニケーションで異なる話し手のイントネーションや声のトーンに柔軟に対応するのが難しいことを示唆しています。

また、自閉症の若者たちは、特定の音声パターンを一貫して「質問」として解釈する傾向があることも明らかになりました。

この結果は、彼らが音声の変化に対して柔軟に適応できないだけでなく、特定のパターンに固定的な解釈を行うため、日常のコミュニケーションに困難が生じている可能性を示しています。

この研究は、自閉症の若者たちが日常の言語コミュニケーションで直面する課題をより深く理解する新たな知見を提供しています。
プロソディへの適応力の不足は、自閉症の若者が異なる話し手や状況に柔軟に対応できない理由の一つであり、これが社会的なコミュニケーションの困難に繋がっている可能性があります。

今後の研究では、より多くの自閉症の子どもや成人を対象に調査し、どのような音声環境で彼らが効果的にコミュニケーションできるかを明らかにすることが重要です。
また、この研究は言語的な障害がない自閉症の若者に焦点を当てていますが、言語発達に困難を抱える自閉症の人々にも同じ結果が当てはまるかどうかは未解明です。
今後は、より広範な自閉症の特性を持つ人々への応用が期待されています。

(出典:Scientific Reports)(画像:たーとるうぃず)

・自閉症の若者たちが日常のコミュニケーションで異なる話し手のイントネーションや声のトーンに柔軟に対応するのが難しい

・自閉症の若者たちは、特定の音声パターンを一貫して「質問」として解釈する傾向がある

たしかにわかる気がします。

これを知った上で、相手を尊重したコミュニケーションを何卒お願いします。

自閉症の子は声から感情を知るのが苦手、悲しい声はとくに。研究

(チャーリー)


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