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自閉スペクトラム症、性別で異なる遺伝的要因を解明する研究

time 2024/09/09

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

自閉スペクトラム症、性別で異なる遺伝的要因を解明する研究
  • 自閉スペクトラム症の発症に男性と女性でどのような遺伝的な違いがあるのか?
  • 女性はなぜ自閉スペクトラム症に対して遺伝的に保護されているのか?
  • 自閉スペクトラム症の診断率の向上にはどのような要因が関与しているのか?

自閉スペクトラム症(ASD)の発症に関して、遺伝的要因が男性と女性でどのように異なるかについて、重要な発見を示す研究が行われました。
この研究は、香港中文大学のベンジャミン・イプ博士、スウェーデンのカロリンスカ研究所に所属するスヴェン・サンディン博士を中心とする国際研究チームによって実施され、アメリカ、スウェーデン、香港、イギリスなど多国籍の研究者たちが参加しました。

ASDは、神経発達障害の一つであり、主に社会的なコミュニケーションの困難さや、繰り返し行動や興味に特徴づけられます。
米国では子どもの2〜3%がこの障害を持っており、男性の方が女性に比べてその発症率が高いことが知られています。

しかし、なぜ男性の発症率が高いのか、遺伝的な要因がどのように関係しているのかについては、これまで十分に解明されていませんでした。

今回、研究者たちは、ASDに関する性差の背後にある遺伝的要因を探るため、大規模なデータベースを活用して、ASDの遺伝性を性別ごとに解析しました。
研究の対象となったのは、1985年から1998年にスウェーデンで生まれた約100万人の子どもたちです。

このデータベースには、兄弟姉妹やいとこなどの家族関係の情報も含まれており、研究者たちは遺伝的影響を解析するために、家族ベースの統計モデルを用いて調査を進めました。
具体的には、ASDの発症リスクに対する遺伝的要因(親から受け継がれる遺伝的変異)や、共有された環境要因(兄弟姉妹が同じ家庭環境で育つことによる影響)を性別ごとに比較しました。

解析の結果、ASDの遺伝的要因(狭義の遺伝性、すなわち親から受け継がれる加法的遺伝要因)が、男性では87%、女性では75.7%であることが明らかになりました。

これは、ASDの発症に関して男性の方が遺伝的な影響を強く受けていることを示しています。
さらに、この性別間の遺伝性の差は約11%に達しており、これは統計的に有意な違いとされました。

また、研究チームは、共有環境(家族が共通して持つ環境要因)の影響についても検討しましたが、これらの要因はASDの発症にはほとんど影響を与えていないことが分かりました。
ASDの発症は主に遺伝的要因によって説明されるものであり、特に男性においてその遺伝的寄与が顕著であることが確認されました。

この性差の遺伝的違いは、ASDの発症メカニズムが男性と女性で異なる可能性を示唆しています。

研究者たちは、この違いの一因として、男性における「遺伝的変異の大きさ(GVM: Genetic Variability in Males)」を指摘しています。
これは、男性の方が遺伝的により多くの変異を持ちやすいという理論であり、男性のASD発症リスクが高いことを説明する可能性があります。

一方で、女性においては、遺伝的要因以外のリスク要因、たとえば環境要因や新たな遺伝的変異(de novo変異)がASD発症に関与している可能性が考えられます。

de novo変異とは、親から遺伝されずに、受精後に新たに発生する遺伝的変異のことです。
研究者たちは、女性が遺伝的にASDに対して「保護効果」を持っている可能性があり、このため女性では遺伝的リスクが低く、環境要因やde novo変異がより重要な役割を果たしているかもしれないと示唆しています。

さらに、ASDの発症率が近年急速に増加していることにも着目し、出生年や両親の年齢の違いが結果にどのように影響を与えるかも調べました。
研究のデータには、すべての個人が19歳まで追跡され、診断されたASDの症例数が記録されています。

結果として、近年生まれた子どもたちの方がASDの診断率が高くなっていることが確認されました。
これは、診断技術の進歩や社会的認識の向上が一因である可能性があります。

この研究は、ASDに関する理解を深めるだけでなく、性別による遺伝的リスクの違いがASDの発症にどのように影響しているかを解明する上での重要な一歩となりました。
ASDの発症に関与する遺伝的要因が性別によって異なる可能性が示されたことは、将来的なASDの治療法や介入方法を開発する上での新たな視点を提供します。

研究を主導したサンディン博士は、「この発見は、ASDの性差に関するさらなる研究の基盤となり、個別化された治療や支援の開発に貢献する可能性がある」と述べています。
また、イプ博士は、「男性と女性で異なる遺伝的メカニズムが存在する可能性があることを示唆する結果となった。今後の研究では、この遺伝的な違いがどのようにASDの症状や発症に影響を与えるのかをさらに解明することが重要だ」とコメントしています。

この研究は、ASDの遺伝的背景を性別ごとに明確にし、将来的には性別に応じたより効果的な治療法や介入プログラムの開発に寄与することが期待されます。

(出典:JAMA Psychiatry)(画像:たーとるうぃず)

なぜ、自閉症は男性が多いのか?

男性の方が遺伝的により多くの変異を持ちやすい

一方で、女性は、遺伝的にASDに対して「保護効果」を持っている可能性があり、遺伝的リスクが低い。
女性の自閉症は、受精後に新たに発生する遺伝的変異の影響が大きいと考えられる。

そんな研究結果です。

女性は自閉症に関連する遺伝的変異の影響を受けにくい。研究

(チャーリー)


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