- ASDの早期診断はどのように改善されるのか?
- 新しい機械学習モデルは具体的にどのように機能するのか?
- どのような情報がASDのリスク予測に最も影響を与えるのか?
スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者たちが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期発見を大幅に改善する可能性を持つ、新しい機械学習モデルを開発しました。
この研究は、アメリカのサイモンズ財団が運営する「SPARK」データベースを利用し、ASDのリスクを予測するために、わずか28項目の基本的な医療情報や背景情報を使用するモデルを作成しました。
ASDは、コミュニケーションや社会的相互作用に困難を抱える発達障害であり、診断が遅れると、適切な支援や介入が受けられず、発達に大きな影響を及ぼす可能性があります。
現在、ASDの診断は多くの場合、3歳以降に行われており、診断が遅れることが課題となっています。
しかし、今回の研究では、24か月未満の幼児期からASDのリスクを高精度で予測する方法が開発されました。
この研究には、アメリカ国内の31の大学付属研究施設とオンラインで募集されたデータが活用され、合計30,660人のデータが分析されました。
この中には、15,330人のASD患者と15,330人の非ASD者が含まれており、両グループは性別や年齢、人種、民族的な背景といった要因で均等に分けられています。
研究チームは、4つの異なる機械学習アルゴリズム(ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、eXtreme Gradient Boosting(XGBoost))を使用してモデルを開発しました。
その中でも、XGBoostアルゴリズムが最も優れた予測精度を示し、このモデルは「AutMedAI」と名付けられました。
このAutMedAIモデルは、子どもの基本的な健康情報や発達の様子を元に、ASDのリスクを予測します。
このモデルは、
ASDである人を正しくASDと診断できる確率が80.5%
とかなり高い精度でASDの可能性があるかどうかを見分けることができ、他の診断方法と比べても優れた結果を示しています。
さらに、このモデルは、新しいデータや異なるグループの子どもたちにも対応できることがわかっており、さまざまな場面で役立つ可能性があります。
AutMedAIモデルの開発において、研究チームは各項目がASDの予測にどの程度寄与しているかを評価しました。
その結果、幼児期における発達のマイルストーン、特に食事行動や言語発達が重要な予測因子として浮かび上がりました。
たとえば、初めて短いフレーズや文章を使い始めた年齢、排便訓練を始めた年齢、初めて笑った時期などが、ASDの予測において大きな影響を持つことが明らかになりました。
このモデルの臨床応用により、ASDの早期診断が飛躍的に進む可能性があります。
従来のスクリーニングツールは、診断までに多くの時間とリソースを要することがありましたが、AutMedAIモデルは、簡便な情報を基に迅速にリスクを評価できるため、診断過程を大幅に短縮できます。
さらに、このモデルは非侵襲的であるため、子どもや家族にとっても負担が少なく、より多くの人々に利用されることが期待されています。
研究チームは、今後さらにモデルの精度を向上させるために、他のツールやバイオマーカーと組み合わせる可能性も視野に入れています。
たとえば、視線追跡データや脳のバイオマーカーといった客観的な測定データを組み合わせることで、より高精度な診断が可能になると考えられています。
この画期的な研究を主導したのは、カロリンスカ研究所のシャム・スンダル・ラジャゴパラン博士、ヤリ・ジャン氏、アシュラフ・ヤヒア博士、クリスティーナ・タミミース博士らです。
また、この研究にはインドのバイオインフォマティクスと応用バイオテクノロジー研究所も協力しており、国際的なチームによる共同研究が進められました。
今後、この技術が臨床の現場でどのように活用されるか、そしてASDの早期介入がどのように改善されるかが注目されます。
この研究成果が多くの子どもたちやその家族にとって大きな支援となることが期待されます。
(出典:JAMA Network Open)(画像:たーとるうぃず)
「初めて短いフレーズや文章を使い始めた年齢、排便訓練を始めた年齢、初めて笑った時期などが、ASDの予測において大きな影響を持つことが明らかに」
こういう相関を見つけ、予測することに、AIを作る機械学習は貢献します。
実利用ができるように研究開発が進むことを期待しています。
(チャーリー)