- このケースレポートの結論は本当に信頼できるものなのか?
- どのようにしてこのレポートの方法論の透明性を確保できるのか?
- 自閉症に対する治療法の倫理的な側面はどのように考慮されるべきか?
最近、「自閉症の治療法が見つかった」や「症状が完全に改善された」という見出しが話題になりましたが、これは2024年6月に発表されたケースレポートに基づいています。
しかし、このレポートには疑わしい方法論と深刻な利益相反の可能性があり、その結論には疑問が生じています。
■ケースレポートとは?
まず、ケースレポートが何であり、何ではないのかを理解することが重要です。
ケースレポートは、通常、新しい診断や珍しい症例について報告するものであり、1人の患者に焦点を当てることが一般的です。
複数の患者が報告される場合には、ケースシリーズと呼ばれることもあります。
ケースレポートは特定の患者に関する報告であり、その結果を他の患者に一般化することはできません。それでも、公衆衛生当局に初期警報を発する役割を果たすことがあり(例:COVID-19の最初の患者はケースレポートとして報告されました)、研究の仮説を生成するために利用されることもありますが、研究そのものではなく、方法論的に厳密でもありません。
■今回の報告ケース
2024年に発表されたケースレポートでは、20ヶ月の時点で自閉症と診断された二卵性双生児について述べられています。
このレポートとそれに基づく見出しは、症状の完全な改善を主張していますが、診断自体は特に珍しいものではありません。
しかし、報告された内容が注目されたのは、その後の治療方法に関するものです。
「アロスタティック負荷」
これは、繰り返し受ける慢性的なストレスによって体が蓄積する損傷のことを指し、この概念がこのケースの治療法の基盤となっています。
具体的には、双子は以下の治療を受けました。
- 厳格なグルテンフリーおよびカゼインフリーダイエット
:砂糖を控え、人工着色料や加工食品を排除し、有機で未加工の食品を中心に、できるだけ地元の食材を使って調理された食事が提供されました。 - 多くのサプリメント
:オメガ3脂肪酸、マルチビタミン、ビタミンD、カルニチン、5-メチルテトラヒドロ葉酸、個別に調整されたホメオパシー療法が使用されました。 - ナチュロパシー医(自然療法や代替医療の専門家)による指導
:IntellxxDNAというゲノムツールを使用したDNAに基づく精密医療も取り入れられました。
■主執筆者
このケースレポートの主執筆者は、米メリーランド大学の家族・地域医療および疫学・公衆衛生の助教授であるChris D’Adamo博士です。
しかし、彼は他にも複数の役職を持っています。
例えば、機能性医学研究所や自閉症向けのプロバイオティクスを販売する会社Protrenに所属しています。また、「Epidemic Answers」の研究プログラム「Documenting Hope」の科学ディレクター兼主任研究者でもあります。
このプログラムは、子どもたちの健康問題の原因を探り、その影響を逆転させることを目指しています。
■疑問点
このケースレポートの方法論には多くの疑問が残ります。
例えば、自閉症スペクトラム障害において、まだ十分に解明されていない遺伝学に基づく「精密医療」とは何を意味するのか?
なぜナチュロパシー医が精密医療のために相談されたのか?
なぜホメオパシー療法が使用されたのか?
これらの疑問は、証拠の質を理解するために重要です。
同時に、このレポートの倫理的側面も問われるべきです。
■「著者は利益相反がないと宣言しています」
果たしてこれは本当でしょうか?研究がどのように行われ、どのように資金提供されたかは重要です。
それが偏見や結論に影響を与える可能性があるからです。
利益相反についての声明は、利益相反の可能性があることさえもカバーするべきです。
D’Adamo博士は、メリーランド大学とDocumenting Hopeの両方に所属していると記載しています。
サプリメントやホメオパシー療法はこの治療で使用されましたが、彼はこれらの製品を販売する企業と深く関わっています。
もしこれが製薬会社との関係であったなら、多くの人がその問題を指摘するでしょう。
これは利益相反の可能性が非常に高いと考えられ、このケースレポートからは何の結論も導き出すべきではなく、むしろこの研究がなぜそのまま発表されたのかについて説明されるべきです。
(出典:アメリカ科学健康評議会)(画像:たーとるうぃず)
こうした、問題がある研究論文も新聞などに取り上げられることがあります。
ここでの指摘ポイントの視点は、一見するときちんとした研究に見えても、怪しいと思ったときに使えるはずです。
(チャーリー)