- 自閉症の診断を受けた子どもをどうサポートすれば良いのか?
- 異なる文化の視点から自閉症を理解する方法はあるのか?
- 家族中心のアプローチを導入することで、今後の自閉症支援がどう変わるか?
私たちカナダで育った人たちにとって、自分の子どもが自閉症であるという診断を受け入れることは、簡単なことではありません。
自閉症の診断は、感情的な苦痛を伴う体験になりがちです。
しかし、異なる文化の背景を持つ親や介護者にとっては、自閉症に関連する概念や用語を理解することがさらに難しい場合があります。
「自閉症」という単語が、多くの言語には存在しないことを知っていますか?
カナダ・マクマスター大学の発達小児科医であり、准教授でもあるモハマド・ズバイリ博士によると、この言葉はほんのわずかな他の言語にしか見つかりません。
文化間で共有される理解が欠如しているため、自閉症について知らない人に説明することは困難です。
自閉症の診断ツールは元々、西洋の文化的背景をもとに開発されており、文化的な差異を考慮していませんでした。
たとえば、ツールには誕生日パーティーや子どもたちが一緒に遊ぶシーンの写真や話が含まれていますが、一部の文化ではカナダの多くの人たちと同じように誕生日を祝わないこともあります。
また、異なる文化の子どもたちは、人形、アクションフィギュア、ブロックで遊ぶ方法も異なることがあります。
ズバイリ博士は、ある双子を自閉症と診断した後、その双子の両親が「ズバイリ博士から私たちの子どもが自閉症だと言われましたが、それが何を意味するのかわかりません」と介護サービス事業者に相談していたことを知りました。
この出来事は、博士に自分の伝え方やアプローチについて考え直す機会を与えました。
それ以降、ズバイリ博士は家族の個々の経験を常に考慮し、「彼らは私が何を意味すると思っているか」と自問するようになりました。
そして、文化が異なれば、言葉の使い方やボディランゲージ、手や目の接触の方法も異なることを理解しました。
特定の文化において「異なる」と見なされることは、偏見や恥につながることがあります。
親は、自分の子どもの自閉症が自分たちのせいだと考えたり、親戚や教師からの反応を心配したり、他の家族の子どもたちと否定的に比較することがあります。
南アジア自閉症啓発センター(SAAAC)のエグゼクティブディレクター、ギータ・ムーティは、介護者が故郷を離れて別の地域や国に移住ている人たちの偏見を考慮し、子どもを隔離して身内にしか伝えないことがあると述べています。
自閉症はしばしば否定的な視点で見られ、子どもの能力や強みを祝うのではなく、問題視されがちです。
優れた診断医は、各家族の視点から自閉症を理解しようと努めます。
ズバイリ博士は、子どもの学校や家など、異なる環境でストーリーテリングを通じて、介護者が自閉症を理解できるように努力しています。
自閉症を障害としてではなく、子どもの行動に焦点を当て、どう支援することでうまくやっていけるかを考えます。
さいわいにも、カナダでは自閉症や関連する神経発達状態に対する認識が高まっています。
「治療」や「修正」という言葉から離れ、「子どもの日常機能を最適化するためのサービスやサポートに焦点を当てる」ことが増えています。
進むべき道はまだ長いですが、最近2つの取り組みが注目されています。
SAAACは、南アジア基盤を超えて拡大し、「カナダのすべての自閉症の人が、もっているすべての可能性を支え、生活の質を向上させる包括的で文化的に応答的で高品質なサービスに平等にアクセスできるように」というビジョンを持っています。
彼らは南アジア、黒人、先住民コミュニティ用にプログラムをカスタマイズしています。
家族がウルドゥ語やタミル語を話す場合、その言語を話すソーシャルワーカーを家族に送ります。
彼らは学校システム内で各子どもを支援し、家族が所得支援やその他の重要な書類を記入するのを手伝います。
SAAACの高く評価されている8週間のプログラムは、親や介護者に新しいスキルを教え、他の人と共有し、自分をケアする方法を学ぶ機会を提供します。
兄弟姉妹のワークショップの開催や、祖父母とのギャップに対処するために高齢者センターにも行きます。
ある母親はこう言いました。
「SAAACから自閉症について学んだ後、私の子どもの祖父は孫をまったく異なる方法で見るようになりました」
カナダ最大の自閉症サービス提供者であるケリーズプレイス自閉症サービスでは、オーラ・マククラスキーのような自閉症コンサルタントが、ジョージナ島のチッペワやアニシナーベ・ネーションなどの社会の主流から取り残さされた先住民たちをサポートしています。
オーラは、ほとんどの先住民言語に「障害」や「自閉症」という言葉がないにも関わらず、多くの先住民コミュニティが私たちの多くの人たちよりも、よく理解していると言います。
「彼らは、子どもの才能はさまざまであることを理解しています。自閉症を欠点とは見なしません」
しかし、社会の主流から取り残さされた文化に暮らす家族は、自閉症のサービスやサポートを特定し、アクセスする際に引き続き困難に直面しています。
とくに遠隔地のコミュニティでは、サポートが不足しています。
児童青年精神医学者であるピーター・シャトマリ博士は、こう述べています。
「現在の自閉症にまつわるシステムは、その人の家族ではなく、サービス提供者向けに設計されているように見えます。
実際には、その人だけでなく家族たちを対象に検討しなければなりません。
家族中心のアプローチを私たちの精神保健ケアシステムの礎にするべきだと考えます」
(出典:米Today’s Parent)(画像:たーとるうぃず)
国や文化によっては、自閉症の診断基準が使えないどころか、そもそも「自閉症」の概念がないために、自閉症を欠点とみなすこともない。
確かにそうした良い点もありますが、自閉症という科学的、医学的な共通概念ができ、診断できるようになったことで、うちの子や私のような家族たち、たくさんの人が助けられてきた、より大きなメリットがあることを見過ごしてはなりません。
(チャーリー)