- 脳の特定の部位がどのように連携することで、個人の自己感覚や他者との関わり方に影響を与えるのか?
- 自閉症やADHDの脳内の「デフォルトモードネットワーク」が定型発達の人と異なる部分を持つことは、彼らが日常的な経験をどのように異なったものにしているのか?
- 神経多様性の人たちの脳内活動の違いが、彼らの行動や感覚経験にどのような影響を与えるのか?
脳は、自分自身、他人、そして世界とどう関わるか、さらには各人が現実をどう見ているかについて、まだ多くが解明されていません。
脳についての知識は近年大きく進歩しましたが、未だにわからないことがたくさんあります。脳科学は、まだ探求の余地が大きい未知の領域とされています。
私は、脳科学の専門的な訓練をほとんど受けていない心理療法士であるため、これらの概念を完全に理解することの限界を知っています。
しかし、いくつかの重要な発見は、クライアントにとっても、非常に意味があるものです。
これには、脳の中でどの部分がどのようにつながり合っているか、特定の活動をしているときにどの脳の部位がどのように作用するかについての知識も含まれます。
とくに、「デフォルトモードネットワーク」についてです。
「デフォルトモードネットワーク」とは、休息時に脳の領域間で見られる接続や活動のパターンを指します。
私たちが空想したり、休んでいる時に心が自然と向かう場所です。
デフォルトモードネットワークにはいつも現れる脳の領域がありますが、個人によって違いがあります。
このネットワークは、一部、私たちの自己感覚や他人との関わり方に関連するという意見もあります。
自閉症の人たちにおけるモードネットワーク機能接続を調査した10の研究のメタアナリシスでは、定型発達の人たちと比較していくつかの違いが見られました。
小脳、右中側頭回、上後頭回、右縁上回、補足運動野など、いくつかの脳領域で過剰接続が見られました。
一方で、内側前頭前野、楔前部、角回などのいくつかの領域では接続が低下していることが確認されました。
これの意味するところはまだ研究の対象ですが、休息時であっても、情報の統合に違いをもたらしていることを示唆します。
そして、これらの違いは自閉症を見分ける生物学的な指標になる可能性もあります。
この違いにより、自閉症の人は「世界を異なる方法で経験している」のかもしれません。
研究により、自閉症の人たちの脳では報酬や意味を処理する「サリエンスネットワーク」という部分が、定型発達の人と比べて「デフォルトモードネットワーク」により似ていることもわかりました。
これは、脳の特定の部位が、重要な情報を処理する際に、定型発達の人よりも密接に連携していることを意味します。
とくに、自閉症の人は、人との交流に関する反応が低いことと関連します。
この発見はまだ完全には理解されていませんが、自閉症の人が情報を異なる方法で処理しているかもしれないことを示唆しています。
これは、自閉症の人が世界をより強烈に感じることがあるという「強烈な世界理論(intense world theory)」と呼ばれる考え方と合致するものです。
ADHDにおいてもデフォルトモードネットワーク内の違いが確認されています。
ADHDの子どもたちと定型発達の子どもたちが参加したfMRI技術によるネットワーク間接続性の研究では、認知制御に関連する領域と、運動に関連する領域との間の接続性が増加していることが見られました。
この過剰な接続性の強さは、衝動性のタスクでの誤りの増加と相関していました。
これは、多くのADHDの人たちがとくに集中しようとするときに、動きたくなることに通じるものです。
私も神経多様性を持つ一人として、これらの研究はとても価値があると感じます。
「世界を異なる方法で経験している」ことの証しであり、神経多様な人たちやその周りの人たちにとって、肯定的で啓蒙的な情報を提供することができます。
心理療法士としても、これらの発見から学ぶことで、神経多様な経験に対する理解を深めることができます。
これは、神経多様性を受け入れる支援や、神経多様な人たちのための教育実践を考える際のヒントにもなるかもしれません。
(出典:米Psychology Today)(画像:たーとるうぃず)
これまでの研究によれば、休息時に脳の領域間で見られる接続や活動のパターンである「デフォルトモードネットワーク」などが自閉症やADHDの人では、定型発達の人とは異なっていた。
そのためにたしかに、自閉症やADHDの人は「世界を異なる方法で経験している」と考えられる。
異なることでのデメリット、そしてメリット。想像してください。
(チャーリー)