- 自閉症スペクトラム障害(ASD)は出産時の麻酔使用によって引き起こされるのか?
- 妊娠中の麻酔が子供の自閉症リスクを高めるのか?
- 幼少期に全身麻酔を受けることは自閉症のリスクに影響するのか?
出産時の麻酔が自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスクを高めるという証拠はありませんでした。
“Journal of Autism and Developmental Disorders”に発表された研究結果です。
しかし、妊娠中や幼少期における麻酔とASDの関係をさらに調査する必要があるとされています。
出産時の麻酔使用とASD発達の関係についての情報が一致しないことは、家族や学者にとって混乱の原因となっています。
この安全性に関する懸念に対処するため、研究者たちは系統的なレビューとメタ分析を行い、妊娠、出産、幼少期における麻酔使用とASDとの関連を調査しました。
研究者たちは、2022年までの関連研究を探し、国際疾病分類(ICD)コード、精神障害の診断統計マニュアル(DSM)診断、自閉症診断観察スケジュール(ADOS)-2、自閉症診断インタビュー改訂版(ADI-R)、オンタリオ健康保険計画(OHIP)診断コード、または自己報告によって確認された、ASDに対するものを対象の研究としました。
最終的な分析対象は、16の研究となりました。
研究者たちは、出産時に硬膜外麻酔を使用した場合、子供が自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症するリスクが少し上昇する可能性があることを見つけました。
具体的には、このリスクが約16パーセント上昇するかもしれないとされています。
ですが、このリスクの増加は必ずしも確実なものではありません。
さらに詳しい分析を行った結果、このリスクの上昇は確実ではなく、場合によってはリスクが低下する可能性も示唆されたからです。
とくに、自閉症を持つ子供と持たない子供の兄弟を比較したデータでは、硬膜外麻酔が自閉症リスクを高める証拠はほとんど見られませんでした。
そのため、出産時の麻酔が自閉症リスクにどのような影響を与えるかについては、まだはっきりとしたことは言えない状況です。
この系統的レビューとメタ分析は、「出産時の麻酔とASDの関連は有意ではない」ことを明らかにしました。
妊娠期と幼少期に関する証拠は、これらの期間の研究数が少ないため限られたものとなりました。
妊娠中に麻酔にさらされた場合、子供が自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症するリスクが上昇するかもしれないと示唆する研究が3つありました。
これらの研究を統合してみると、妊娠中の麻酔が子供のASDリスクを約2倍以上にする可能性があるとされています。
しかし、この結果はまだ確定的ではなく、3つの研究だけでの結果なので、さらに多くの調査が必要です。
一方で、幼少期に全身麻酔を受けた場合の自閉症リスクについては、有意な増加は見られませんでした。
これは、幼少期に全身麻酔を受けても、子供が自閉症になるリスクはほとんど変わらないということを意味しています。
ただし、こちらも研究数が限られており、さらなる研究が必要です。
研究者たちはこう結論づけています。
「この系統的レビューとメタ分析は、出産時の麻酔とASDの関連が有意でないこと、妊娠期と幼少期の証拠が限られていることを明らかにしました」
しかし、今回の研究結果には限界があります。
これまでの多くの研究はヨーロッパとアメリカで行われており、その地域特有の状況が結果に影響を与えている可能性があります。
また、これらの研究では、麻酔への曝露を単純に「されたかされていないか」の二択で考えていました。
つまり、どれだけの麻酔が使用されたか、どのくらいの時間麻酔にさらされたかといった、より詳細な情報は考慮されていませんでした。
さらに、異なる種類の麻酔剤が自閉症スペクトラム障害(ASD)に与える影響についても、これまでの研究では詳しく調べられていません。
これらの点は、今後の研究でより詳細に調べられるべき重要な要素です。
(出典:米Psychiatry ADVISOR)(画像:たーとるうぃず)
これまでの16の研究を対象にした、系統的なレビューとメタ分析の今回の研究結果は次でした。
「出産」時の麻酔:自閉症と関連があるとはいえない。
「妊娠」期の麻酔:子供の自閉症リスクを約2倍以上にする可能性。ただし3つの研究しかないのでさらなる研究が必要。
「幼少」期の全身麻酔:自閉症リスクの増加は見られない。
偏見や誤解が生まれないよう、正しい理解を支えるこうした研究は重要です。
(チャーリー)