- 1. 発達障害をもつダンサーにとって、振り付けを理解する際に最も重要なのは何だろう?
- 2. 自閉症を持つ人や他の発達障害をもつ人が安心してダンススタジオを利用できる環境とはどのようなものだろう?
- 3. ダンス教室やスタジオが、異なる学習スタイルや個々のニーズに対応する際に必要な考え方は何だろう?
メイドリーン・ミルナーが若いダンサーだった頃、ある先生は彼女に「質問少女」というニックネームを付けました。
現在、米エイロン大学でダンスと心理学を専攻する1年生のミルナーはこう言います。
「質問が多すぎると言われることもありましたが、先生たちはいつも『質問があれば、どうぞ聞いてください』と言ってくれました。
ダンスの場で、適切な質問と、先生をイライラさせる可能性がある質問の見分けがつくようになりました」
ミルナーは自閉症です。
彼女の学習とコミュニケーションスタイルは、スタジオでの彼女の自閉症の現れ方のいくつかです。
彼女はまた、照明の品質や音楽の音量などの感覚的な刺激に敏感であり、これが時折、彼女の振り付けの理解能力に影響を与えることがあると言います。
しかし、これらの課題にもかかわらず、ミルナーは自閉症を持つことが彼女に世界やダンスに対する独自の視点を提供していると言います。
自閉症は、社会的な相互作用、情報処理、感覚的な知覚の違いと一般的に関連付けられる、終生の発達的な状態であると、英自閉症協会の臨床リーダーである心理学者であるイリーナ・ロンカリア博士は述べています。
これらの違いが、ミルナーが経験する感覚的な敏感さ、会話での比喩やユーモアの理解の難しさ、他人の感情の識別の難しさとして現れているのでしょう。
ロンカリア博士は、自閉症はそれぞれの人ごとに異なる症状で現れる可能性を言います。
「ある自閉症の人に会ったとしても、それは自閉症の人の一人に会っただけです」
現在、スコットランド・バレエのアーティストであるジェームズ・ホブリーは幼い頃に自閉症と診断され、歩行と話すことに苦労しました。
彼の発達目標を達成するのにダンスレッスンが導入され、ホブリーはすぐにこの芸術形式に取り組むことになりました。
「ダンスは私にとって必要なものでした。
私がしていたすべてのことが劇的に向上しました。
そして、ダンスを始めた結果、自信を持つようになりました」
ミルナーは振り付けに自分の才能が活かせることを見つけました。
他の人とは違う視点を持っていると感じています。
「とくに振り付けにおいて、自閉症が活きています。
すべての自閉症の人々を代弁できるわけではありませんが、少なくとも私自身にとって、振り付けは非常に重要なコミュニケーションの形式であり、それは非常に普遍的な言語です。
コミュニケーションの目的をもって、振り付けをしています」
ダンスの特定の側面は、自閉症の人々にとって難しいことがあります。
ミルナーとホブリーの両方が、時折、集中することや振り付けの学習に苦労したと言います。
ホブリーにとっては、とくにダンスを始めた当初にこれが当てはまりました。
「情報が入ってからすぐに頭から抜け出していくことがよくありました」
ダンスステップの学習がまだ難しいと感じることもありますが、努力と練習、振り付けの注釈付けなどでスキルを伸ばすことができました。
ミルナーも課題に立ち向かうための戦略をまとめています。
まわりの環境が圧倒的に感じられるとき、彼女は自分の内側に焦点を当てることで自分を落ち着かせます。
「通常、私は実際に行っている動きと、それが体の内側でどのように感じるかに焦点を当て始めると、最終的には体の内側だけを考えていることが多くなって、それでリラックスすることが多いです」
スタジオの空間を自閉症などの発達障害をもつダンサーに対応するようにするにはどうすればよいでしょうか?
ミルナーの母であり、ダンスとピラティスのインストラクターであるジェニファーは、それぞれの人のニーズに対応する空間を作ることが重要だと言います。
ダンサーが触れられることを望まないと感じるとき、その他のストレスがあるときにでも、単純に求められることです。
またこうした配慮は、異なる学習スタイルに対しても行うべきです。
「異なる学習スタイルを見る能力と、それらが起こるのを許容する能力が求められます。
『みんなは私を見て、みんなこの通りにして』
という、みんなに同じことを求めるアプローチではだめです」
ロンカリア博士は、スケジュールの変更があれば、事前に伝えること、ダンサーが自分自身のペースで、自分自身の方法で、教えたことを処理するのを待つ忍耐が大きな影響を持つと言います。
ホブリーは、自閉症というだけで、他のダンサーとは違うと感じさせないようにすることが重要であると言います。
「私たちはみんな一人ひとり違うのです」
(出典・画像:米DANCE magazine)
機会や環境が合えば、輝きやすくなります。
ちょっとした配慮が、そんな機会や環境の実現につながります。
自閉症など障害のある人たちがホールで。ダンスは誰でも楽しめる
(チャーリー)