- 多くの発達障害をもつ家族に焦点を当てる研究が不十分であったのはなぜか?
- ポリジェニックリスクとは何か、そしてそれが自閉症の発症にどのように影響する可能性があるのか?
- 言語の遅れと自閉症の遺伝的リスクの関係について、今回の研究からどのような新たな示唆が得られたのか?
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部により、少なくとも2人の自閉症の子どもがいる家族を対象にした過去最大の研究が行われました。
その結果、新たなリスク遺伝子の発見と遺伝が自閉症スペクトラム障害の発症にどのように影響を与えるかについて新たな見解が得られました。
今回の新しい研究は、国立科学アカデミーの学術誌である「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されています。
なお、言語の遅れと機能障害は、自閉症の中心的な要素として再考されるべきであるとする遺伝学的な証拠も見つかりました。
これまでの多くの自閉症の遺伝学的研究は、発達障害の影響を受けた1人の子どもを持つ家族に焦点を当てたものとなっていました。
ときには複数の発達障害の子どもがいる家族は除外されることさえありました。
その結果、自閉症の発症に関係する、まれな遺伝子変異の役割や複数の一般的な遺伝的変異の相互作用についての研究がほとんど行われることがありませんでした。
この研究の主要な執筆者である、UCLAの人間遺伝学、神経学、精神医学のゴードン・アンド・バージニア・マクドナルド名誉教授のダニエル・ゲシュヴィント博士は、次のように述べています。
「研究は、設計がとても重要です。
これまで、発達障害の子どもが複数いる家族に注目した研究が、十分にはありませんでした」
自閉症は遺伝が強く影響すると考えられています。
少なくとも50パーセントは一般的な遺伝的変異によって予測され、さらに15〜20パーセントは突然変異や予測可能な遺伝パターンによるものです。
(残りについては、まだわかっていません)
今回の研究では、少なくとも2人の自閉症の診断を受けた子どもを持つ1004の家族、4551人に対して全遺伝子配列の分析を行いました。
この中には、1836人の自閉症の子どもと、自閉症の診断を受けていない418人の子どもが含まれています。
その結果、自閉症のリスクを増加させると予測される7つの可能性のある遺伝子が見つかりました。
PLEKHA8、PRR25、FBXL13、VPS54、SLFN5、SNCAIP、およびTGM1です。
自閉症の子どもたちに親から伝達された遺伝子変異を見ることで、これらの遺伝子の発見ができました。
今回のような研究方法でなければ、もっとたくさんの参加者が必要となっていたはずです。
研究者たちはまた、ポリジェニックリスクも調査しました。
ポリジェニックリスクとは、よく見られる遺伝的変異でも「組み合わさる」ことで自閉症の発症の可能性を高めるリスクのことです。
発達障害でない親からでも、まれな変異を受け継いだ子どもたちがポリジェニックリスクの影響の結果、自閉症を発症する可能性が高まることを発見しました。
これは、まれな遺伝子変異を持つ親がいても、子どもは自閉症になるとは限らない理由を説明するものともなります。
また重要な発見として、言語の遅れがある子どもたちは、自閉症に関連するポリジェニックリスクが高くなっていました。
言語の遅れがない子どもたちには、そのようなことはありませんでした。
この傾向は、教育達成度、統合失調症、双極性障害などの他の特性では見られませんでした。
つまり、自閉症の遺伝的リスクと言語の遅れには、関係があると考えられます。
現在、精神保健の専門家が障害を診断する際に使用する専門のガイドブックである「DSM-5」の最新版では、言語の遅れは自閉症の中心的な症状とはみなされていません。
自閉症を持つ人たちの言語能力にばらつきがあることを理由としてるためです。
今回の研究結果から、ゲシュヴィント博士は次のように述べています。
「言語の遅れと、ASD(自閉症スペクトラム障害)の一般的なリスクとの関連は、実際には言語がASDの中心的な要素であることを示唆しています。
今回の研究結果について、さらにより大規模な参加者による研究での再確認が求められます」
(出典:米カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部)(画像:Pixabay)
うちの子は大きくなりましたが、全く話すことはありません。
特別支援学校の頃も、話すことができない子は多くいました。
なので、言語能力との関係性が大きくあることは、その通りだろうと思います。
(チャーリー)