- 銀行手続きの際に自閉症の成人が困難を感じる要因は何か?
- 自閉症や発達障害の大人にとって、銀行取引でのアクセシビリティの障壁はどのようなリスクをもたらす可能性があるか?
- 自閉症や発達障害の子供や成人が銀行とのやり取りで困難に直面する理由は何か?
ブルース・ペセリックのような自閉症の大人にとって、経済的な自立が難しいと感じることがあります。
「私は、私の横に誰かがいなければ、銀行を利用することができません。
そのため、妻が私をサポートしています。
投資や銀行口座の詳細、そういったことを決めるには、妻がいないと絶対にできません」
ペセリックがかかえる困難は、銀行における「暗黙のルール」が原因となっています。
どのような情報を知るべきで、断るべきなのか、誤解されていないか知る、保留するか、専門用語を理解する、そうしたことです。
銀行に関わる手続きが簡単だと感じる人は多くはいないでしょう、しかし自閉症の成人にとって、情報の伝達や表示方法に関するアクセシビリティの障壁は、銀行に関わることを避けようとすることにつながり、お金に関わる重大なリスクをかかえてしまうことにつながりかねません。
アスペルガー/自閉症ネットワークのトレーニングディレクターであるベッカ・ロリー・ヘクターはこう言います。
「これは、自閉症や発達障害であることにともなって生じる、計画や構造化のスキルの困難とも関係します。
お金に関わる問題は、私たち自閉症、発達障害の人たちにとっては大きな問題です。
銀行は、私たちのためには作られていません」
アクセシビリティの問題は、放っておくと搾取行為につながる可能性があると指摘する人もいます。
「目が不自由な人に対して、契約書について誰も翻訳や点字を提供しなかったとしたら、そこに何があるのかを知らずに、サインをせざる得ない人がいても不思議ではありません。
そんなことが放置されていたら、多くの人は非難するはずです」
自閉症の人たちの状態はさまざまです。
「自閉症の私たちは皆、それぞれ異なる長所や課題を持っています。
社会的なプロセスについて、理解できないことがあります。
それへのサポートが必要なのです」
発達障害の人たちを支援するトロントの非営利団体「サリープレイス」の心理学者で最高責任者のテリー・ヒューイットは、自閉症がもたらす、社会的コミュニケーションと感覚の問題についてこう言います。
「社会的コミュニケーションの問題は、非言語的な合図を読み取ることや仲間との会話に参加することが困難なことです。
感覚の問題は、大きな音や明るい蛍光灯がつらいことです。
銀行の圧倒的な物理的環境は、自閉症の大人が自分の財政状態について必要な会話をすることを妨げる可能性があります」
発達障害のある子どもたちに支援プログラムを提供している「カイラス・チルドレンセンター」のディレクターであるシャイラ・カーペルはこう言います。
「自閉症の人にとって、銀行という場所は、信じられないほど難しいところです。
感覚過敏をかかえていれば、状況に対応することができなくなるかもしれません」
ヒューイットもこう言います。
「自閉症や発達障害の人は、とにかく会話を終わらせたくて、すぐに同意したり、受け入れたりすることがあります」
銀行取引においてこのようにしてしまうことは、債務の問題を解決したいときなど、とくに大きなリスクになります。
「信用問題に巻き込まれたら、誰かに相談する必要があります。
しかし、その誰かも、あなたについてすぐにすべてを完全に理解できないかもしれません。
銀行のスタッフが、何が問題なのかを理解できるようにするためのトレーニングを受けることは、本当に重要です」
発達障害の大人にとって、アクセシブルな銀行は、柔軟なコミュニケーションから始まります。
「自閉症の人は、華やかな言葉よりも、
『これの金利は何パーセントで、違約金はこうなります』
そうしたシンプルな表現のほうがわかります」
そう、ペセリックは言います。
「インクルージョン・トレーニングによって、銀行の担当者は、私には別の方法で何かを説明する必要があると認識できるようになります。
定型発達の大人に対してもっている『前提』をこわすことが、発達障害の大人にとっては重要なのです」
社会的な課題を軽減するために、自閉症の大人は友人や家族に銀行に関わることを自分ぬきでお願いすることがあるかもしれません。
しかし、必ずしも彼らが依頼どおりに行動しない可能性もあります。
また、このような非公式なサポートは、銀行からは受け入れられないこともあります。
「銀行は本人と一対一を重視する傾向がありますが、自閉症の人と話すときは、友人や同僚、パートナーなど、サポートする人を連れてくるように勧めているはずです」
ターバーは、銀行のインクルーシブデザインやテクニカルサポートの充実を新しいアプローチで補うべきだと考えています。
「明るさ、一貫したフォーマット、文字の大きさなど、ビジュアルは重要です。
それは、視力のためではなく、発達障害の人が問題をかかえることもある短期記憶能力のためにです」
米イェール大学の文化人類学者で、疎外されている人たちの金融について研究しているアニー・ハーパーは、多様なニーズを持つ人たちが銀行をより利用しやすくするための実用的な解決策をまとめた報告書を共同執筆しました。
その報告書には、カスタマイズ可能なモバイルバンキングの通知や、一部の銀行ではすでに対応している自己責任においての引き出し方法について、また、限られたアクセス権を指定された第三者と共有し、その第三者がお金の引き出しの監視や支援を行えるようにする「閲覧専用アクセス口座」などについて提言しています。
ヒューイットはこれまで、自閉症の子を持つ親には共同口座にすることを勧めてきました。
「『もしあなたがお金を受け取るなら、共同口座を作ろう。
そうすれば、あなたがお金を管理するとき、私はあなたを助けることができます』
そう、自閉症の子どもと親で合意するのです」
報告書で提言された閲覧専用口座は、同じような柔軟性を持ちながら、自閉症スペクトラムの成人を支援する際に重要な考慮事項である自律性をより高めるものです。
また、特権的なアクセスから生じる悪用の可能性を軽減することもできます。
カナダのトロント・ドミニオンやバンク・オブ・モントリオールなどの銀行では、障害を公表している顧客とどのように接するのがベストかについてのスタッフ向けトレーニングをすでに実施しています。
「マグナスカード」のようなスマホアプリもあります。
銀行の対応が遅れているアクセシビリティの機能を提供するものです。
開発元のCEOであるナディア・ハミルトンはこう言います。
「私たちは、ビジュアル、グラフィック、音声ですべてを使って、銀行業務の各場面を案内できるようにしました」
しかし、上述のハーパーやヘクターはこう述べています。
「こうした機能を提供するのはアプリではなく、銀行直接が行うべき」
「利用者を増やすための当たり前のビジネスとして銀行にはもっと努力して欲しい」
(出典:カナダTHE GLOBE AND MAIL)(画像:Pixabay)
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