- 人種や民族によって、発達障害の診断が遅れることがあるのか?
- 低所得地域や学歴の低い地域では、発達障害の子どもがどれだけ把握されているのか?
- 発達障害の療育サービスの利用に、人種や家庭の環境がどのように影響するのか?
ヒスパニック系住民が住む大きな地区では、学校や医療機関が正しく子どもたちの状況を把握・記録できていないことが少なくありません。大学を卒業した人が少ない地区でも同じ状況となっています。
つまり、ある人種グループにおいては、適切なサービスを受けることができない、正しい把握がされていないということです。
「発達障害やその他の障害がある子どもの把握とケアを行うシステムには不平等があります。」
と米アラバマ大学のマーシャ・スレイ・ウィンゲート教授が言います。
白人の子に比べて、マイノリティの子は発達障害と診断される人は少なく、そしてそう診断されるのも遅いということが知られています。
「黒人やヒスパニック系の人に比べて、白人の方が発達障害と診断されるのが多いことが、多くのデータからわかっています。」
アトランタにある発達障害者センターの調査員、ミッチェル・モリエが言います。
「どうして、そのことをだれも指摘してこなかったのでしょうか。」
今年のある会議にて発表された研究結果によると、高所得の家庭に比べて、低所得の家庭では発達障害として診断される子どもは81%少ないということです。
低所得の家庭の多くは、黒人やヒズパニック系の人です。
米国疾病予防管理センターの発達障害モニタリングネットワークからのデータをもとにした新しい研究もあります。
2年ごとに、アメリカの様々な地域の学校と医療機関がもつ子どもについての記録を集めました。
臨床医が発達障害についての兆候をその記録から分析し、子どもたちが基準にあわせて診断されたのかを判断しました。
2000年〜2008年のアリゾナ州、メリーランド州、ニュージャージー州、サウスカロライナ州、ユタ州からの約2500のデータを利用しました。
それらの学校や医療機関での「記録上」から、人種と、子どもに発達障害と思われる特徴が認められるか否かについての関係性についてが調べられました。
その結果、明らかになりました。
白人の子どもが住む地区では、発達障害と診断される割合が高くなっていました。
子どもが発達障害と判断されることと人種は、関係がありました。
学校の記録、医療機関の記録、どちらを見てもです。
同様に、母親が大学を卒業している人が多い地区でも、子どもが発達障害と診断される割合が高くなっていました。
母親が白人であったり、大学を卒業している場合、発達障害の子どもの割合は10%にのぼります。
学校、医療機関のどちらの記録を見ても、同じ地区に住む子ども全体に比べて6%も高いのです。
とても奇妙なことです。
2000年の全米のデータでも調べました。
ヒスパニック系住民が多く住む地区ほど、大学を卒業している人が少ない地区ほど、
学校、医療機関のどちらの記録でも、発達障害と思われる子どもが少ないのです。
結局、「所得差」という要因によって、発達障害の子どもの数が変わっていたのです。
この理由は明らかにはなっていません。
ただ、ヒスパニックの大きな地区に住む子どもは、学校や医療機関との接点が限られてしまいます。
それは、親たちも学校や医療機関に連れて行くことが難しいということです。
「発達障害と診断を受けるためには、何度も医者のところに行かなければなりません。」
テキサス医療科学センターで働いていたアイシャ・ディッカーソンが言います。
「時給で働いている人は、それに必要な予約を入れる経済的余裕もありません。」
また、発達障害という診断や特別支援をすぐに提供しないことも原因であると考えられています。
「この研究結果を見て、私は、健康医療システムをすぐに改善しなければならないと認識しています。
マイノリティであるほど、課題が多いシステムとなっているのですから。」
ペンシルバニア大学のジェニファー・ピントマーティン教授は言います。
9月に発表された別の研究では、英語を母国語とする家族に比べて、そうではない家族が発達障害の療育サービスを受けるのが遅くなっているということを伝えています。
発達障害と診断をされれば、毎週、療育を受けることができるのです。
ヒスパニック系の家族の子どもは、他の人種の子どもに比べて療育を受けることが出来ていません。
(出典・画像:米SPECTRUM NEWS)
発達障害とされる子どもの数に、人種による偏りがみえる。
それは生物学的な要因ではなくて、社会学的な要因「所得」によるものだということでした。
人種、民族に対して生じそうな誤りを、見落としそうな視点をもって、正しています。
障害のある方を支援する、そういった社会システムをより有効にしていくためには、正しい把握が不可欠です。
性差によっても偏りがありました。それも正しく把握ができていないことが原因でした
自閉症の女の子と男の子
(チャーリー)