- セルフケアの実践において、自閉症の人はどのような習慣が効果的か?
- 社交性を身につける際、自閉症の人が自身のペースでどのような工夫をするべきか?
- 自分自身を思いやるために、自閉症の人が避けるべき行動は何か?
30代前半まで、私は人生の大半をオーバーヒートしたコンピューターのような気分で過ごしていました。
まわりに合わせようと自分を追い込み、自分が許容できる人間関係の限界を超えた人たちを恨んでいました。
このような社会的ストレスと、常に闘争・逃走モードにある厳しいスケジュールが相まって、私はしばしば怒りを感じるようになりました。
その後、私は自閉症と診断されました。
なぜこのような感情や反応が起こるのか、ようやく理解できるようになりました。
発達障害者のためのサービスを提供する非営利団体で医療ディレクターを務めるボニー・アイヴァースはこう言います。
「自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、一般的に感覚過敏になりやすいのです。
ASDでない人とは神経の発達状態が異なるのです」
このような背景があることで、私は自分自身に猶予を与えることと、自閉症の人としての特定のニーズをサポートするセルフケアを実践することがよりよくできるようになりました。
たとえば、私の感覚は定型発達の人たちよりも敏感です。
なので、以前から思っていたよりも、自分自身を充電する時間が必要だということを学びました。
それはつまり、メールやテキストにすぐに返信しないこと。
また、感情が爆発しそうになったら、今やっていることを止めて、呼吸を整えること。
共感する力がなくなっても、自分を責めないこと。
そういうことです。
長い間、私は定型発達の人と同じように行動しようとしてきましたが、自分の心の健康を管理し、自閉症の人として必要なことを自分に与えることができるようになりました。
しかし、自閉症をサポートするセルフケアの方法を学ぶことは、私にとっては簡単なことではありませんでした。
なぜなら、セルフケアのアドバイスは、しばしば定型発達の人に向けられたものだからです。
自分のコップを満たし、自分を大切にし、神経多様性を受け入れるための最良の方法、そして他の自閉症の人にも効果的なセルフケアを実践する方法を明確にするために、ASDの人々や、そのコミュニティで働く精神衛生の専門家に私は話を聞きました。
自閉症スペクトラムの人がセルフケアを実践するための7つの効果的な方法を紹介します。
1.ストレス解消に役立つ習慣を見つけ、毎日行う。
自閉症には感覚過敏がつきものなので、感覚を落ち着かせ、圧倒されないようにするために、いつでもできる練習法を学ぶとよいかもしれません。
米テキサス州の教師であるビクトリア・ジョーンズは、YouTubeでヨガを学び、今では毎朝リビングルームで15分ほど行っています。
「自閉症であるため、極端に圧倒されると、パニックを起こしたり、閉じこもったりしやすいので、ストレスを管理し、困難に対処するためにヨガを利用しています。
ストレッチをすると体が気持ちよくなり、深呼吸をすると心が静かになります。
自宅で行えば、定型発達の人たちの世界で生きるストレスに対処するのに役立つ、簡単でお金のかからない方法になります」
セラピストのアリエル・ランドラムは、ダンスやヨガのような動きのある練習で、自閉症の人は自分の体を整える時間を確保する習慣を身につけることができると言います。
瞑想、深呼吸、筋弛緩などのマインドフルネスも、ストレスや不安を管理するのに役立つ方法です。
2.緊張する場面では、心を落ち着かせるグッズを持ち歩く
メンタルヘルス・カウンセラーで障害者支援を行っているジェイミー・エヴァン・ビシェルマンは、気難しい同僚と仕事をするために、氷水を常に持ち歩いています。
「その人とのミーティング中には、激しい不安とメルトダウンが近づいてくるのを感じるたびに、氷水を一口飲みます。
ミーティングが終わると、洗面台に行って、冷たい水を顔や首にかけています」
彼はまた、ペンや磁石のおもちゃなど、小さくて気づかれにくく、強く握っても壊れない丈夫な、小さくて静かな「フィジェット」を手元に置いていました。
「両手を拳のように握りしめ、そして開くことに、私には大きな力強さと象徴的な意味があります。
そうしているときは、この人は私に怒りを引き起こす力はないのだと自分に言い聞かせているんです」
3.ソーシャルメディアから離れた時間を過ごす
ソーシャルメディアを避けることは誰にとっても有益ですが、セルフケアの実践を目指す自閉症スペクトラムの人たちにとっては、特に大きな影響を与えます。
SNS上で否定的な言葉や潜在的に能力主義的な言葉に出会うことで、かかえている圧倒された状態を悪化させたり、あるいはそれを誘発してしまうことがあります。
ビシェルマンはこう言います。
「自分を動揺させたり巻き込んだりする言葉を、ソーシャルメディアを目にしないようすると、驚くほど気分が良くなります。
私の存在そのものを侮辱する扇動的なツイートを見つけることなく、Twitterを使うことはできないので」
ビシェルマンはスマートフォンから、アプリを完全に削除しています。
そこまでしなくても、1日に見る時間を制限することも有効でしょう。
4.朝の目覚め以外のアラームを設定する
自閉症の人の多くは強い情熱や関心を持っているため、時には「過集中」の状態に陥り、食事や睡眠といった重要な基本的な作業を意識しなくなることがあるとランドラムは言います。
過集中とは、「一度に1つの思考パターンに固執し、自分自身の感情を含む他のすべてを排除する激しい精神集中 」と定義されています。
ランドラムはこう言います。
「多くの自閉症の人が、自分を成長させてくれるツールは目覚まし時計だと報告しています。
しかし、それは目覚ましとしての目的だけではありません。
歯を磨く、シャワーを浴びる、昼食を摂るなどのアラームも有効です。
また、タスクを管理するスマホアプリも、毎日のルーチンを守るのが苦手な人におすすめです。
こうしたシンプルなツールを使うことで、ASDの人たちは日常生活に不可欠な活動を見逃さず、過集中に陥ることも減ります」
5.自分のペースで社交性を身につける
自閉症を専門とする心理学者、ダニエル・マーストン博士はこう言います。
「定型発達の人の社会では社交性が重視され、一人で過ごすことを好む人は否定的な気持ちになることがあります。
しかし、自閉症の人は一人でいることを好むことが多くあります。
それでも、一人で過ごすことに慣れるために多くの経験を積むことは簡単ではありませんし、自閉症の人が自分の違いについて強く感じるようにもなります」
セルフケアの実践を目指す自閉症の人たちにとって、完全に孤立することも健全ではありません。
自閉症の人の中には、大勢ではなく1対1の交流であれば好む人もいます。
アクセシビリティ企業のオペレーション・マネージャーであるエミリー・オーウェンは、親しい人と一緒に参加し、イベント後にはリラックスする時間をスケジュールに入れることで、社交の場に参加しやすくなりました。
「私は以前、他の人と自分を比較し、彼らの社交レベルについて行こうとすると、なぜこんなに消耗するのだろうと思ったものです。
私にとってのセルフケアの大部分は、自分の社交性の限界を知り、それを受け入れ、それに逆らわないことです」
ランドラムは、感情的にパニックになってしまうことを避け、社会的な習慣を身につけるためのセルフケアは、常に休憩を入れることだと考えています。
「毎日、自分自身と向き合う時間を意図的に確保すべきです。
予測可能なスケジュールを組むことで、自閉症の人は規則正しい生活を送ることができます。
しかし、予期せぬことが起こる日もあります。
そのため、休憩を取り自己調整する時間を確保することが、日常生活の変化に適応する方法となります」
6.過剰な刺激が避けられない場合の計画を立てる
刺激的な状況から離れることが最も効果的なのですが、いつもそうできるとは限りません。
そのような場合は、マントラやアファメーションで感覚的な入力から気をそらすことが有効だと、マーストン博士は述べています。
「これは、映画でおなじみかもしれませんが、
自分自身に
『大丈夫。私はこれを乗り切ることができる』
そう言うんです。
少し練習が必要ですが、集中することにとても役立ちます」
やむを得ず圧倒される瞬間に対処するもう一つの方法は、自分の感覚に注意を向けることで、今この瞬間に自分を「グラウンディング」させることです。
「マインドフルネスの継続的な実践と組み合わせたグラウンディングの方法は、自分の穏やかな中心を維持するのに役立ちます」
そう、自閉症を専門とする医療ソーシャルワーカーの資格を持つアレクサ・ドネリーは言います。
そして次のことを頭に浮かべることをおすすめしています。
「自分が見ることができる5つのもの、自分が触れることができる4つのもの、自分が聞くことができる3つのもの、自分が嗅ぐことができる2つのもの、そして自分が味わうことができる1つのもの」
7.自分自身を思いやる
特定の環境で難しいと感じたら、自分を責めることを避けます。
世界は定型発達の人たち向けであり、そうでない人向けには設定されていないことを認識することです。
ビシェルマンはこう言います。
「私が最初に培ったのは、家族、親友、学校のカウンセラーは、自分に準備をさせることも、自分を受け入れることも教えることもできなかったという認識を、受容することでした。
しかし、それは自分が失敗作であることを意味するものではありません。
むしろ、不親切で融通が利かず、訓練も教育もされていない、自分のニーズに適応しない世界に適応した自分は並外れた存在なのです。
そう認識してください」
(出典:米WELL+GOOD)(画像:Pixabay)
「自分のニーズに適応しない世界に適応した自分は並外れた存在」
そうです。
本当にそうです。
うちの子を見るたびに、そう思っています。
自閉症の人の困難は社会が作り出している。劣っているのではない
(チャーリー)