- 自閉症やADHDなどの発達障害を持つ人たちは、なぜ環境に溶け込むために自分を隠さなければならないのか?
- 自閉症の人たちがマスキングやカモフラージュを続けることで、どんなリスクが生じるのか?
- 教育機関や職場が変わり、自閉症や発達障害の人たちが自分らしく活躍できる社会になるためには、具体的に何が必要なのか?
ベス・ラドルスキーは、自分が自閉症であることを知ったのは成人になってからでしたが、この診断がきっかけで学業成績が好転しました。
20代半ばで診断を受けるまで、ラドルスキーにとって学校で学ぶことは常につらいことでした。
大学のコースをいくつも辞めていました。
しかし現在、彼女は豪ラ・トローブ大学社会調査学部の博士課程に在籍し、オルガ・テニソン自閉症研究センターで画期的な雇用プログラムに参加しています。
ラドルスキーはこれまでの挫折の原因を、定型発達の人たちの世界に溶け込むために、習慣的に自閉症的な特徴を覆い隠し、カモフラージュしてきたことにあると述べています。
「職場や教室で、マスキングをするのにとても疲れました。
燃え尽きてしまい、勉強が続けられなくなりました」
自閉症の人の約4分の3は定期的に自分の状態を隠そうとし、しばしば大きな精神的犠牲を払っているとラドルスキーは言います。
「マスキングやカモフラージュは、不安、うつ病、自殺、自己意識の低下、燃え尽き症候群につながり、教育や職業環境での成功をとても難しくします」
そして、自閉症の人のための雇用プログラムの中には、定型発達の人たちの職場に溶け込ませ、適応させようと、マスキングを奨励しているものがあるといいます。
ラドルスキーが参加している雇用プログラムは、自閉症やADHDなどの発達障害の人たちをよりよくサポートするためのスキルを身につけさせることです。
今年10名の学生を受け入れました。
「神経多様性の受容を目指す多くの取り組みでは、社会的スキルを教えれば、職場でうまくいくだろうというアプローチがとられています。
私の研究は、それに疑問を投げかけています。
私は、マスキングやカモフラージュの圧力を減らすために、教育機関や職場をどのように変えることができるのかに、より興味があります」
自閉症の人は統計的に失業する可能性が高く、学校生活も10年以内に終わる可能性が高いというデータが発表されました。
2021年自閉症協同研究センターがオーストラリア政府に提出した資料によると、自閉症の人の32.4パーセントが10年を超えることなく学ぶことを終了し、働いているのも38パーセントに留まっています。
そして、失業率は平均の8倍。
という内容でした。
ラ・トローブ大学のこのニューロダイバーシティ・プレイスメント・プログラムの学生は、100時間の研究と最大300時間の産業実習を行い、実務経験を積み、実習先の職場をより包括的なものにすることを目的としています。
応募者は、自分の勉強やキャリアの目標が、発達障害の人の支援にどのように関係しているかを詳しく説明する必要があります。
今回のプログラム参加者10名は、神経科学、心理学、社会科学などの分野で学んでいます。
その中の一人、心理科学科3年生のエリン・サーモンは、これまでに4つのアルバイトをしています。
そのすべてが、発達障害の人たちのサポートに関わる仕事です。
心理学者を目指すサーモンは、発達障害の学生たちに役立ちたいと考えています。
サーモン自身も、自閉症です。
そうしなければ就職に不利になると考え、何年も自分の自閉症を隠してきました。
「私はファーストフードチェーンで3年間働きましたが、良い環境ではありませんでした。
私は、自閉症と診断されたことをずっと秘密にしていました。
なぜなら、自閉症であることを知られたら、シフトを減らされるかもしれないと感じたからです」
サーモンは、発達障害であることは大きな偏見をもたれることだと言います。
そのため今後の研究で、正しい認識が広まることを望んでいます。
「スキルを持っている人であれば、誰でも雇用される権利があるはずです」
(出典・画像:豪THE AGE)
心身を壊すほど、自分を隠さなければならない。
そんな必要がない、むしろ違うことが喜ばれる、学校、職場、社会。
もう、そういう時代のはずです。
(チャーリー)